著者
久保庭 真彰
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済体制学会年報 (ISSN:13484060)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.18-29,120, 2003-01-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
11

この10年間におけるロシアの市場経済化プロセスは,周知のように様々な特異な様相を呈している。最近3年間のロシア経済の好調の中で,投資の増加や連邦財政黒字基調や非貨幣取引抑制など顕著な改革の成果をみることができるが,極端な「産業空洞化」と「サービス経済化(商業肥大化)」が依然として見られる。また,グローバリゼーションが進行する中で,ロシアの国際資本市場への統合は,依然として,相対的に僅少な外国直接投資(FDI)流入と膨大なキャピタル・フライトという好ましからぬ2要因によって特徴付けられる。国内市場の特異性と国際市場のそれとをリンクするキイセクターの1つは,ロシアの「サービス経済化」の中核を担う商業部門である。本稿は,最新の産業連関表の付帯表として作成されている商業マージン・マトリックスを基本データとして利用して,ロシアの商業マージンを分析し,国際比較の中にそれを位置づけることによって,ロシア市場経済化の特異性の一側面を浮き彫りにするこれまでの筆者の試みをフォローアップしている。
著者
久保庭 真彰
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.40-48, 1994

混迷の度を深めるロシア経済も,いったんI-O表というレンズを通して眺めてみると意外にその経済の構造と病理の実態がつかめてくる。とくに日本と関連の深い極東ロシアのI-O表は貴重な分析と政策提言のためのベースを提供する。今回は1987年のロシアI-O表(内生111部門)とその極東バージョンの地域I-O表を比較しつつ,現在のロシア支援や極東地域開発のための基本的問題点の所在を,以下に探ってみよう。
著者
久保庭 真彰
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.246-262, 2007-07

本稿は,転換点にあるロシア経済の成長を供給サイドと所得サイドの両面から分析することを主要なテーマとした試論である.まず,ロシア経済成長の油国際市場価格の動向への依存という側面と,独立性という側面をもつことを確認する.次に,伝統的成長会計によって供給サイドの考察を行う.これは,(1) Goldman-Sachs の BRICs レポートの批判的考察,(2) 独自のデータ構築にもとづくマクロ成長会計分析,(3) 再編成された産業連関表と資本ベクトルを利用した多部門成長会計分析から成る.さらに,倉林・クルビス・ステューヴェル・作間による交易条件効果の議論を理論的に整理し,ロシアにおける所得 (GDI) と GDP の成長連関を実証分析する.最後に,供給サイド成長予測からみると,ロシア経済が高成長を持続する潜在力を有していることを示唆する.