著者
石井 幹 並木 昌子 渡辺 文子 久保田 義正 安部 直重 高崎 宏寿 大宮 正博
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.73-80, 1983-03-01

1.1977年における調査乾草補給という条件下の, 乳用種去勢牛48頭の行動を夏の5日間, 屈斜路酪農研修施設の4haの放牧地と0.2haの通路で, 日中14時間観察して次のような結果をえた。1)平均行動時間は採食形が262分(31.2%), 反芻形を含む休息形が486分(57.8%), 移動形が14分(1.7%), そして混合形が78分(9.3%)であった。2)暑い日における採食時間は215分, 涼しい日は294分であったから, 暑い日は涼しい日より採食時間が79分も少なかった。移動時間は15分と13分でほとんど変らなかったが, 休息形は暑い日が505分, 涼しい日が473分で32分の差があった。混合形は105分と60分で, 暑い日が45分も多かった。3)平均休息率は59.8%であったが, 暑い日が63.9%, 涼しい日が57.0%であった。横臥率は平均16.7%で, 暑い日が13.9%, 涼しい日が18.5%であった。4)採食型は2回型と3回型に分れたが, 平均気温との関係は明らかでなかった。5)牛群は日の出後に食草することが多かった。6)採食時間のうち乾草採食時間が57.3%, 食草時間が42.7%であった。暑い日と涼しい日の間にはあまり差がなかった。7)平均採食回数は6.2回で, 採食1回当りの平均時間は44分であった。暑い日は7.0回採食して, 1回当り採食時間は32分であったが, 涼しい日は5.7回, 53分であった。2.1979年における調査酪農研修施設の3.0haの放牧地と通路において, 乳用種去勢牛15頭の行動を夏の4日間, 午前4時から14時間(ただし, 霧雨の1日だけは午前9時から9時間)観察した。平均気温は18.1〜21.5℃にあったので, いづれも涼しい日に該当した。調査結果はおよそ次のとおりであった。1)平均行動時間は食草形が461分(54.9%), 反芻形が243分(28.9%), 休息形が107分(12.7%), そしてその他の行動形が29分(3.5%)であった。2)反芻形と休息形における横臥姿勢の割り合いは, それぞれ75.3%, 72.0%で, 全体として横臥姿勢が多かった(74.3%)。しかし霧雨の日には反芻形を含む休息形105分のうち, 起立姿勢が63.8%を占めた。3)すべて1日3回の食草型であった。4)早朝の食草行動は, すべて日の出前から行われた。3.1977年と1979年における調査結果の比較両年における観察結果から, 次のことが明らかになった。1)良質乾草を十分に補給した場合の採食時間は, 通常の夏季放牧の約57%であった。2)乾草補給下の放牧では, 主要採食形が2回型と3回型に分れたが, 通常の放牧ではすべて3回型であった。3)通常の放牧では牛群は日の出前から食草を始めたが, 乾草補給の放牧では日の出よりかなり遅れる傾向があった。
著者
安部 直重 広岡 博之 高崎 宏寿 久保田 義正
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.515-520, 2002-11-25
参考文献数
22
被引用文献数
3 2

東北, 関東および東海地方における8県, 422戸の酪農家で飼育されている1,535頭の乳用雌牛 (ホルスタイン種) を対象とした搾乳気質についてのアンケート調査結果を解析した. 調査内容は, 対象牛の搾乳気質, 産次, 牛群内での社会的優位度, 繋留時間, 繋留方法, 飼養規模, 種雄牛で, 各項目について酪農家の回答を求めた. 搾乳気質評価は, 1 : 非常におとなしい, 2 : おとなしい, 3 : やや神経質, 4 : 神経質, 5 : 非常に神経質, の5段階として飼育者自身に評価を依頼した. 気質評価1と2にランクされ, 搾乳作業に支障がないと思われたウシは全体の63%であったが, ランク3のやや神経質と評価されたウシは27%, ランク4および5に評価され搾乳作業にやや支障があると思われるウシは9%存在した. 全調査牛の平均搾乳気質評点は2.31であった. 搾乳気質を従属変数とし, その他の項目を独立変数として最小2乗分散分析を行った結果, 産次 (P<0.03), 社会的順位 (P<0.0001), および種雄牛 (P<0.0001) において有意な効果が示されたが, 繋留時間 (P<0.13) および繋留方法 (P<0.22) の効果は有意ではなく比較的小さかった. また酪農家の飼養規模と搾乳気質の間には関連性は認められなかった. 以上の結果より, 本試験における対象牛では, 特定種雄牛を父に持ち, 経産牛でしかも社会的に中庸で繋留時間が短くフリーストール下で飼養されたウシはおとなしく搾乳される傾向のあることが示唆された.
著者
安部 直重 高崎 宏寿 久保田 義正
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.143-150, 2001-02-07
被引用文献数
5

哺乳期における馴致処理がその後のウシの扱い易さに及ぼす影響を明らかにする目的で試験一調査を行った。約1ヵ月齢のホルスタイン種×黒毛和種雄牛10頭を、5頭ずつ馴致群および対照群とし7ヵ月齢まで供試した。馴致群には1日2回、朝夕5分間ずつ32日間合計320分ブラッシングおよび声かけを実施した。対照群の5頭は馴致処理以外は馴致群とほぼ同様に管理した。管理者に対する逃避反応性を、ヒトがウシの体に触れた時の忌避反応評点および試験用通路内で試験者が静かにウシに近づきウシが逃避を開始した地点と試験者との距離である逃避反応距離により測定した。馴致群の忌避反応評点は9.2点に対し対照群では5.6点で馴致群が有意に(P<0.01)高く、逃避反応距離においても馴致群の0.61mに対し対照群では1.46mと馴致群が有意に(P<0.05)短い結果であった。出生直後でなくとも哺乳期における長期の馴致処理はウシのヒトに対する逃避反応性を弱める効果がある事が明らかとなった。同時に馴致群では処理開始直後から管理者に対する模擬闘争行動が発生し始め、処理終了時には全個体で頭突きを伴う強い模擬闘争が発生するに及んだ。しかも模擬闘争行動は、逃避反応性の低い個体で多発する傾向が見られた。馴致処理はヒトに対する逃避反応性を弱め、扱い易さの改善効果をもたらす一方、ヒトに対する模擬闘争行動を誘発し管理上問題になる可能性も示唆された。日本家畜管理学会誌、36(4) : 143-150、2001 2000年3月6日受付2000年12月6日受理