著者
久利 美和 Suppasri Anawat 寅屋敷 哲也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

気象庁は2014年8月30日に「特別警報」を導入し、国土交通省は2015年1月20日に「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」を公表しており、災害情報の提示のあり方の模索段階にあるといえる。本論では、科学的な不確実性がある中で迅速判断が求められる場でのサイエンスコミュニケーションの事例として、時間空間幅が広く、自然災害の中でも火山活動情報に焦点をあて、火山活動情報の中でも、東日本大震災以降の論点となった「作動中(発展途上)の科学」や「科学の不確実性」のあつかいに焦点をあて、日本での発信側と受信側の事例を検討する。とくに、活動頻度の高い事例として、2014年8月と2015年5月の噴火で迅速な避難を行なった口永良部火山、活動頻度の低い火山事例として2015年4月に火口周辺危険警報の出た蔵王火山に焦点をあてた。2015年5月29日に口永良部島の新岳火口において火山噴火が発生し、我が国の火山において初めての特別警報(噴火警戒レベル5)が発表され、島外への避難が行われた。2015年の口永良部火山活発化からの全島避難にいたるまでの、住民の火山活動情報の活用についても検討した。聞き取り調査は2015年7月と10月に実施した。主な聞き取り先は、屋久島町役場(宮之浦支所,口永良部支所)、口永良部消防団関係者、口永良部島内区長、である。2015年7月は「2014年8月以前の火山防災意識」「2014年8月以降の火山防災意識」「2015年5月避難の判断と状況」について、2015年10月は、「2015年避難時の再聞き取り」「2015年10月以降帰島に向けた考え」について、聞き取りを行った。これまで指摘されてきた専門家と行政や報道との情報伝達に限らず、非専門家ながら高い関心を持つ地域住民との関係構築や不確実性を含めた情報伝達が重要であることが示唆された。2015 年4月7日以降、蔵王火山御釜付近が震源と推定される火山性地震が増加し、13日に火口周辺警報(火口周辺危険)が発表された。5月17日の火山性微動を最後に、地震の少ない状態で経過し、6月16 日に解除された。御嶽での災害後に活発化した最初の火山であった。4月14日の報道を通じて、行政の観光関係者のコメントとして「(エコーラインの冬期閉鎖からの開通を前に)でばなをくじかれた」「蔵王山が噴火する火山との認識はなかった」との報道があった。情報解除後は、宮城・山形両県での観光支援を中心としたさまざまな施策が行われた。4月の警報直後、6月の解除後の観光地での対応について、2016年1月に宮城・山形両県の観光関連事業主に面談調査を行った。「(噴火は過去のことで)噴火する認識がなかった」という回答が大半を占めるとともに、地学現象と生活の時間スケールの隔たりが、対策への理解を妨げている現状が示唆された。
著者
栗田 敬 市原 美恵 熊谷 一郎 久利 美和
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

・実験課題の整備:従来の課題の整備以外に、Dancing Raisin、Rootless Eruption実験、火炎実験、降伏応力流体の落球実験、ペットボトル噴火実験などの新しい実験課題を整備した.その幾つかは授業、研究会、一般公開の場で利用された.また実験内容は地球惑星科学連合大会、European Geosciecne Union年会、日本火山学会などで発表されるとともに、Web上に公開されている(http://kitchenearth.sblo.jp/ ).小冊子「キッチン地球科学 レシピー集」を作成し、配布するとともに上記Web上に公開した.・キッチン地球科学研究集会の開催:2019年9月1日、2日に東京大学地震研究所にて40名余の参加者を得て開催された.・大学、高校における実験講義の試行:東京大学教養課程・惑星地球科学実習、明星大学理工学部・プロジェクト研究実験「身の回りのものを使った考える流体実験」、都立八王子東高校・化学部特別実験、聖星高校・科学部実験講義などの機会を利用して学生の実験を指導した.実験の題材は味噌汁対流実験、綿飴実験、ベッコウ飴クラック、ペットボトル噴火実験などである.学生の興味を引き出す手法として不確定要素を含む実験課題が有効であることを確認出来た.・キッチン地球科学の広報活動:はまぎん子供宇宙館、東京大学地震研究所一般公開、次世代火山研究者育成プログラム、地球惑星科学連合大会における「キッチン地球科学」セッション、ホイスコーレ札幌生涯学習セミナーなどの場を借りて教育における実験の役割、その具体的な利用法の宣伝活動を行った.
著者
久利 美和 村上 祐子
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

初年度初年度は,研究機関およびその助成金を活用しての直接的または間接的に科学普及活動に従事する人材の意識調査、就業形態、また実施される企画の有償かの可能性について聞き取り調査を行い、キャリアパスとして必要な視点が、報酬体系の確立と評価手法についてであることが明らかとなった。次年度は、研究管理の観点で関連業務者の報酬体系の実態に焦点を当てるとともに、報酬体系の根底にある概念についても意見抽出を行った。また、海外の事例を含めた検討会を国際会議の場で行った。