著者
西垣 一男 三宅 在子 鳩谷 晋吾 久末 正晴
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

内在性レトロウイルス(ERV)は宿主ゲノムに残された古代レトロウイルス感染の痕跡である。ERVの存在が宿主への危害となる事例や、ERVが宿主進化の原動力となっている事例について発見した。また、新規猫白血病ウイルス(FeLV)の受容体を発見した。「1」FeLVのGag遺伝子領域に非相同配列が組み込まれている新規組換えFeLVを発見した。FeLVが獲得した配列をX-regionと名付け、それはFcERV-gamma4に由来することが示された。FcERV-gamma4の9つの遺伝子座を分離・同定した。プロウイルスは感染性を喪失していたが、RT-PCRによって様々な臓器に発現していた。「2」FcERV-gamma4由来のX-regionを保持する組換えFeLVは、17検体において検出され、リンパ腫の発生と関連していた。X-regionはFcERV-gamma4の5’-非翻訳配列を含んでいた。「3」X-regionが共有していた領域に一致する配列が、ヒト、チンパンジー、マーモセット、メガネザル、ブタのゲノムにも存在することを発見し、この配列をCS-sequenceと名付けた。CS-sequenceが系統学的に独立したERVsにおいて共有され、種の進化に重要な役割を果たしていることが示された。FcERV-gamma4は家猫の生体内で発現していることも含めて生体で何らかの機能的役割を果たしており、FeLVへのトランスダクションの発見からその分子の異常発現は病気との関わりがあることが明らかになった。「4」新規FeLV株(FeLV-Eと命名)の受容体を明らかにした。受容体はRFCという葉酸を運搬する分子である。この発見はウイルスの病原性を解明するのみならず、ウイルスデリバリーシステムの革新的技術を提供する。
著者
根尾 櫻子 久末 正晴 土屋 亮
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.795-799, 2017-12-20 (Released:2018-01-20)
参考文献数
7

インピーダンス法を用いた臨床現場即時検査(POCT)対応の自動血球計数装置は特に猫の血小板数(PLT)を正確に測定することが困難である.動物用自動血球計数装置Microsemi LC-662(LC)は測定原理にインピーダンス法を用いたPOCT対応機器である.本研究では基準機にはSysmex XT-2000iV(XT)を用いて,さらにLCと同じ測定原理を用いたPOCT対応機器であるCelltac α(Cα)を比較対象として,LCの精度評価を行った.また,採血直後の測定ができない場合も考慮して血液保存による測定値への影響に関しても検討した.検討用血液は,相関性の確認には健常犬9頭及び猫5頭と,無作為に選出した疾患犬90頭及び猫62頭,血液保存による測定値への影響の検討には健常犬9頭及び猫5頭から得たものを用いた.血小板数(PLT)の相関は,犬ではLC/XTとCα/XTで同程度に高かった.一方,猫においてはCα/XTは中等度の相関に止まったのに対し,LC/XTでは高度の相関が認められた.保存による影響については,温度と時間経過の両面から検討した.その結果,4℃で長時間保存すると,犬,猫共にPLTが顕著に減少し,白血球数は増加した.
著者
久末 正晴 福永 大督 赤池 勝周 石川 武史 齋藤 弥代子 土屋 亮 山田 隆紹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.223-226, 2008-03-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
13

1歳2カ月齢ウェルシュコーギーが麻布大学附属動物病院に紹介され, 血液検査から特発性血小板減少性紫斑病が疑われた. 本症例は, 紹介獣医にてステロイドおよび免疫抑制剤によって治療を行っていたが, 改善が認められなかった. 当院にて, 人免疫グロブリン静脈内投与による治療を行ったところ, 血小板減少症は改善した. さらに, 維持療法のため脾臓摘出とプレドニゾロンの投与を行ったところ, 再発もなく2年間以上生存し良好な経過が得られた.
著者
木村 博充 圓尾 拓也 石川 剛司 福山 泰広 久末 正晴 信田 卓男
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.11-15, 2013-05-31 (Released:2013-05-30)
参考文献数
14

Hypofractionated radiotherapy(27-32 Gy/3-4 fractions)was performed in the 3 dogs diagnosed as plasma cell tumors, since complete resection by surgical operation was impossible. In all cases, their tumors were disappeared within 1 to 4 months after radiotherapy. In case1, recurrence has not been noted during a follow-up period of 19 months. Cases 2 and 3 have not showed recurrence for 13 and 6 months, respectively. These results indicated that hypofractionated radiotherapy is effective for canine plasma cell tumors, since reduction of the local mass was seen within a few months.