著者
村上 昭弘 浅野 和之
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.13-18, 2017-10-31 (Released:2017-11-15)
参考文献数
14

A 10-year-old castrated Miniature Dachshund with hypercalcemia showed normal serum levels of parathyroid hormone (PTH-intact) and parathyroid hormone-related protein (PTHrP). Computed tomography revealed no mass formations in the cervical area. However, serum concentration of 1α,25-dihydroxyvitamin D (1,25(OH)2D) was increased and a small nodule in the right thyroid gland was detected by using ultrasound. Therefore, the right total thyroidectomy was carried out. The resected mass was histopathologically diagnosed as a parathyroid adenoma. The patient showed no complications and clinical signs after surgery, and the serum calcium level decreased to the normal range. This case report suggests that the measurement of serum 1,25(OH)2D can be useful for finding out canine parathyroid adenoma patients with hypercalcemia, even when their serum PTH-intact and PTHrP levels are within the normal range.
著者
日高 勇一 小池 貢史 三角 瞬 吉川 理紗 小西 祐子 佐藤 裕之 平井 卓哉 三堂 祥吾 堀井 洋一郎 都築 直 萩尾 光美
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.5-12, 2017-10-31 (Released:2017-11-15)
参考文献数
19

鼻腔内の未分化癌 (症例1)、移行癌 (症例2) と診断された犬2例に対し、パクリタキセル/白金製剤併用の非選択的動注化学療法を行った。それぞれの投与量は全身化学療法の推奨量の25%から35.5%に減量し、総頚動脈から注入した。症例1は著しい腫瘍の減容積が得られたが、治療後の生存期間は53日であった。症例2においても約3カ月間部分寛解が得られたが、治療後の生存期間は126日であった。本療法による副作用は、症例1ではみられず、症例2においても軽度であった。本報告における非選択的動注化学療法は、手技が容易かつ簡便であり、投薬量の減量により安全に実施し得た。本療法は、その間隔、回数および薬剤の投与量に課題が残るものの、犬の鼻腔内悪性腫瘍に対し、緩和効果が得られる可能性が示唆された。
著者
近澤 征史朗 岩井 聡美 柿崎 竹彦 畑井 仁
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.18-23, 2014-12-26 (Released:2014-12-26)
参考文献数
16

犬の組織球性肉腫 (HS) は高フェリチン血症を呈する代表的な疾患であり、血清フェリチン濃度の異常高値が有用な診断マーカーであると報告されている。我々は血清フェリチン濃度が犬の HS の病態を反映して変化すると考え、HS 罹患犬3例における治療に伴う血清フェリチン濃度の推移を調べた。その結果、全例で診断時に著しい高値を示した血清フェリチン濃度は治療開始後に速やかに低下し、再燃を認めた時あるいはその直前で再び上昇した。従って、血清フェリチン濃度は HS の病態を鋭敏に反映して変化すると考えられ、本症の病態モニタリングへの臨床応用が期待された。
著者
佐藤 敏彦
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.24-28, 2014-12-26 (Released:2014-12-26)
参考文献数
23

多中心型リンパ腫の犬の治療において静脈内に塩酸ドキソルビシンを点滴投与したところ、血管外漏出が発生した。漏出した塩酸ドキソルビシンの推定量は2-3㎎であった。塩酸ドキソルビシン漏出より10時間後、デキスラゾキサンを100㎎静脈内点滴投与し、さらにその12時間後、50㎎を同様に投与した。漏出から7日後、局所皮膚にはほとんど変化がみられなかったが、21日後には局所の色素沈着がみられた。皮膚の潰瘍化や壊死はみられなかった。塩酸ドキソルビシンの漏出に対するデキスラゾキサンの投与量や投与時期は明確になってはいないが、漏出量が少量であれば10時間後でも効果が期待できると考えられた。
著者
古川 敬之 青木 創 藤井 豊 二瓶 和美 鈴木 学 小野 憲一郎 平尾 秀博
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.29-34, 2014-12-26 (Released:2014-12-26)
参考文献数
12

A 9-year-old neutered female Miniature Dachshund had undergone lobectomy of the left frontal lobe for lung carcinoma followed by nine post-operative doses of carboplatin chemotherapy(250 mg/m2, every 3weeks). The dog was referred to the Japan Animal Referral Medical Center (Nagoya), because of lung masses in the opposite right middle and posterior lobes. Whole body contrast-enhanced computed tomography(CT)was performed and revealed lung solitary tumors in the relevant areas. No abnormal findings were observed in other lobes or intrathoracic lymph nodes. Since the possibility of metastatic lesions of lung carcinoma incompletely removed in the previous surgery was considered, we performed CT again on day 45 for evaluation of the new tumor progression. The size of both tumors increased, and right middle and posterior lung lobectomies were carried out on day 53. There were no adhesive lesions around the tumors, carcinomatous pleuritis, pleural fluid or hilar lymphadenopathy. While histopathology revealed high-grade lung adenocarcinoma with numerous mitoses, there was no evidence of intravascular invasion, suggesting complete resection. A tentative diagnosis of metastatic lung tumor(T2N0M1)was made. Adjuvant chemotherapy with carboplatin(250 mg/m2, for every 3 weeks)and piroxicam(0.3 mg/kg/3 days)was also given starting on day 21, and no evidence of recurrent lesions was observed on day 726 with a good health condition maintained. From these results, it is suggested that aggressive surgery plus adjuvant chemotherapy can be appropriate treatments for metastatic lung carcinoma.
著者
日高 勇一 小玉 彬人 田村 亮太 伊藤 誠文 小池 貢史 平井 卓哉 佐藤 裕之 萩尾 光美
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.6-11, 2014-07-05 (Released:2014-07-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

5歳、雌のミニチュア・ダックスフントが腹囲膨満および呼吸困難を主訴に来院した。身体検査、エックス線検査および超音波検査により腹腔内腫瘤と胸水の貯留が認められた。腫瘤と胸水の細胞診により、腫瘤は胸腔内転移を伴う卵巣由来の悪性腫瘍であることが示唆された。手術により腹腔内腫瘤は摘出され、病理組織学的に卵巣の乳頭状腺癌と診断された。術後、肺転移に伴う胸水の制御を目的にパクリタキセルと白金製剤併用の化学療法が合計9回行われ、手術から623日目に死亡した。剖検により肺は腫瘍組織に侵されていたことが確認された。パクリタキセルと白金製剤併用の化学療法は、犬の転移性卵巣癌症例に対する化学療法の選択肢の一つになりうるかもしれない。
著者
牛尾 宣夫 福山 泰広 圓尾 拓也 川原井 晋平 信田 卓男
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.12-17, 2014-07-05 (Released:2014-07-05)
参考文献数
19

重症筋無力症と巨大食道症を伴った胸腺腫と診断された12歳、避妊メスのゴールデンレトリバーに対して4週間ピリドスチグミンの投与後、胸腺腫に対して12Gy の1回照射を行った。照射1ヵ月後、巨大食道症の消失、2ヵ月後、抗アセチルコリンレセプター抗体価の減少が認められ、更に胸部X線検査で腫瘤は消失した。ピリドスチグミン投与は照射後5ヵ月間継続した。照射1年半後、腫瘤は認められず重症筋無力症の症状も認められない。更に放射線障害は見られなかった。以上のことから重症筋無力症を伴った胸腺腫に対して放射線単回照射とコリンエステラーゼ阻害薬の併用療法の有効性が示唆された。
著者
木村 博充 圓尾 拓也 石川 剛司 福山 泰広 久末 正晴 信田 卓男
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.11-15, 2013-05-31 (Released:2013-05-30)
参考文献数
14

Hypofractionated radiotherapy(27-32 Gy/3-4 fractions)was performed in the 3 dogs diagnosed as plasma cell tumors, since complete resection by surgical operation was impossible. In all cases, their tumors were disappeared within 1 to 4 months after radiotherapy. In case1, recurrence has not been noted during a follow-up period of 19 months. Cases 2 and 3 have not showed recurrence for 13 and 6 months, respectively. These results indicated that hypofractionated radiotherapy is effective for canine plasma cell tumors, since reduction of the local mass was seen within a few months.
著者
林宝 謙治 賀川 由美子 山上 哲史
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-5, 2013-05-31 (Released:2013-05-30)
参考文献数
12

右下顎リンパ節の腫脹を主訴に6歳齢、去勢雄のラブラドール・レトリーバーが来院した。腹部エコー検査では脾臓の腫瘤と腰下リンパ節の腫脹が認められた。右下顎リンパ節は、多数の小型の非腫瘍性T 細胞(CD3陽性)と組織球(CD18、MHC class ⅡおよびIba-1陽性)に混じて大型の腫瘍性B 細胞(CD20およびCD79a 陽性)が混合した細胞集団からなり、これらの特徴によりT-cell-rich B-cell lymphoma と確定した。細胞学的評価では、脾臓と腹腔内リンパ節にも腫瘍細胞が浸潤していた。この犬は化学療法による治療を受けたが、十分な反応が見られず第54病日に死亡した。
著者
佐藤 敏彦 信田 卓男 圓尾 拓也 川村 裕子 山田 徹 伊藤 哲郎 武田 晴央 杉山 大樹 石川 剛司 斑目 広郎 茅沼 秀樹 菅沼 常徳
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.20-24, 2012-12-19 (Released:2012-12-19)
参考文献数
17

人の肺癌では、腫瘍随伴症候群として好中球増加症や単球増加症を伴う白血球増加症が報告されている。しかしながら、犬では腫瘍随伴性白血球増加症の報告は少ない。今回、初診時の血液検査にて好中球を主体とした白血球増加症を示した犬に対し、種々の検査を行った結果、巨大肺腫瘤を認め、肺腫瘤の摘出術を行った。術後の病理組織学的検査にて肺腺癌と診断されたが、腫瘍の摘出とともに劇的な好中球数の回復がみられ、肺癌による腫瘍随伴性白血球増加症と診断した。
著者
藤田 道郎 大内 詠子 越智 直子 張替 康隆 保田 大治 谷口 明子 長谷川 大輔
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.13-19, 2012-12-19 (Released:2012-12-19)
参考文献数
6

犬の四肢軟部組織肉腫14症例に対して術後低分割放射線治療を行い、治療成績や放射線障害について回顧的研究を行った。再発率は7.1%、放射線障害は85.7%で何らかの障害が認められたが、現在まで重篤な障害は認められず、再発に対する影響もなかった。一、二および三年生存率はそれぞれ100、92.9および66.7%あった。また一、二および三年腫瘍コントロール率はそれぞれ85.7、71.4、57.1%であった。以上のことから、犬の四肢の軟部組織肉腫に対する術後低分割放射線治療は従来の根治目的の放射線治療スケジュールと比較して治療効果に大きな差はなく、麻酔のリスクや動物への負担、オーナーへの負担を軽減する上で有用な照射方法の1つと考えられた。
著者
髙平 篤志 信田 卓男 圓尾 拓也 斑目 広郎
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.9-12, 2012-11-28 (Released:2012-11-28)
参考文献数
11
被引用文献数
2

雑種猫、避妊雌、15歳齢が低血糖性痙攣で来院した。インスリノーマが疑われ、試験開腹を行った。膵左葉に2か所の腫瘍が確認され、膵左葉部分切除を行った。病理にてインスリノーマと診断した。術後2年以上、無治療にて経過は良好であったが、術後30カ月目に低血糖性痙攣を再び発症した。試験開腹にて膵臓や他の腹腔臓器に多数の白色結節が認められたが、病理にて過形成と診断された。その3日後に痙攣が再発したため、安楽死処置となった。インスリノーマの転移が疑われた。
著者
信田 卓男 石川 剛司 八野田 健 山根 悠太郎 安藤 健二 上條 圭司 柴田 真治 浅利 昌男
出版者
日本獣医がん学会
雑誌
日本獣医がん学会雑誌 (ISSN:18843344)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-8, 2012-11-28 (Released:2012-11-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

健康犬の乳腺からのリンパ流路について調べた。解剖学的研究では、リンパ流路の多くが定型的パターンを示したが、個体により変異も見られた。CT 分析では、造影剤を乳腺皮下に少量注射すると非侵襲性で迅速にリンパ経路を可視化することができた。これらのことから、臨床では各個体で、3D-CT によるリンパ造影をすることで、変異のあるリンパ流路の特定が容易になり、その結果、その個体にあった最も適切な乳腺腫瘍の外科切除と予後判定の実施が可能になると思われた。