著者
栗田 慎也 髙橋 あき 髙橋 忠志 久米 亮一 山崎 健治 尾花 正義
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.69-73, 2021-01-01 (Released:2022-01-15)
参考文献数
15

脳卒中発症早期より長下肢装具(Knee-Ankle-Foot-Orthosis : 以下,KAFO)を使用する報告は増えているが,KAFOの使用や作製に伴う有害事象の報告はない.そこで,急性期病院である当院で,脳卒中発症早期患者に対するKAFOの使用や作製に伴う有害事象を後方視的に調査し,それに対する対策を行った.対象は2017年8月から2019年7月までの間に報告された有害事象データとした.この調査期間内の有害事象は376件あり,そのうちKAFOに関するものは25件(6.6%)であった.有害事象の多くは備品KAFOで生じており,最も多かった内容は医療関連機器圧迫創傷(Medical Device Related Pressure Ulcer : 以下,MDRPU) 6件であった.急性期病院での備品KAFOの使用には,MDRPUの発生予防対策や創傷に対する知識獲得が重要と考える.
著者
久米 亮一
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.151-158, 2017-07-01 (Released:2018-07-18)
参考文献数
3

我々は,退院後の装具のメンテナンスや作り替えを専門分野と位置づけ15年に渡り取り組んできた.地域には「歩容の崩れ」,「足部の変形」,「装具の不適合」が多く存在し,今までの知識や技術,考え方では解決できない問題点に気づくことができた.装具について,自宅での未使用などが引き起こす不適合,介護保険非対象者がおかれる状況,老人保健施設における必要性,在宅ケアの実情などの「環境的問題」,および制御力の小さい短下肢装具のリスク,製作の遅れのリスク,装着練習の大切さ,予備の装具の重要性などを整理する.そして現在行っているケアマネジャーやセラピストとの連携や,講演活動によって地域環境に対する直接アプローチを紹介する.
著者
髙橋 忠志 栗田 慎也 久米 亮一 遠藤 聡 尾花 正義
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.917-921, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
11

〔目的〕急性期脳卒中患者において,早期離床や立位・歩行練習は,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)および肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)を予防するとされている.今回,発症早期より長下肢装具を用いて歩行練習を開始したが,経過中にDVT・PEを発症した脳出血患者を経験したので報告する.〔対象と方法〕80歳代の女性で右視床出血による左片麻痺を生じた.〔結果〕介入初日より車椅子乗車を開始し,4病日より備品長下肢装具を用いて,歩行練習を開始した.24病日にD-dimerが高値を示し,CTにて左大腿静脈内にDVT,右肺動脈にPEの所見を認めた.〔結語〕DVT・PEを発症した要因として,運動麻痺や脱水,便秘,解剖学的問題などが考えられた.
著者
中村 学 遠藤 聡 佐藤 恵 手島 雅人 久米 亮一
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.272-276, 2019-04-18 (Released:2019-05-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

装具療法は脳卒中患者の立位・歩行獲得のために有効な手段であり,運動療法を合わせて実施することでその効果を高めることができる.セラピストの介入が少なくなる生活期においては,下肢の変形や異常運動を防ぐために下肢装具が重要な役割を担うが,その効果を発揮するためには,装具メンテナンスなどの患者指導も重要である.生活期でも多職種チームで連携してリハビリテーション診断と治療を行い,装具を装着したことによる歩行時の筋活動や下肢の運動を学習させる運動療法が重要である.さらに,介護保険サービスとの情報共有,地域の装具ユーザーやケアマネジャーへの相談窓口を設置するなど,地域連携も不可欠である.