著者
栗田 慎也 髙橋 忠志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.41-45, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
22
被引用文献数
3

〔目的〕急性期病院で脳卒中片麻痺患者に長下肢装具(KAFO)を作製することが回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)退院時の歩行能力と下肢装具の使用継続の有無を調査した.〔対象と方法〕重度運動麻痺を呈した脳卒中片麻痺患者18名を対象とし,KAFOの作製群と非作製群に振り分け,機能的自立度評価法(FIM)の歩行と階段の経過と下肢装具の利用状況を調査した.〔結果〕両群ともにFIM歩行・階段が時間経過で有意な差を認めたが,作製群で回復期リハ病棟退院時のFIM歩行・階段と下肢装具の脱却割合に有意な差を認めた.〔結語〕急性期病院における KAFO の作製は,回復期リハ病棟退院時の歩行・階段能力改善と下肢装具脱却の効果があることが示唆された.
著者
栗田 慎也 髙橋 あき 髙橋 忠志 久米 亮一 山崎 健治 尾花 正義
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.69-73, 2021-01-01 (Released:2022-01-15)
参考文献数
15

脳卒中発症早期より長下肢装具(Knee-Ankle-Foot-Orthosis : 以下,KAFO)を使用する報告は増えているが,KAFOの使用や作製に伴う有害事象の報告はない.そこで,急性期病院である当院で,脳卒中発症早期患者に対するKAFOの使用や作製に伴う有害事象を後方視的に調査し,それに対する対策を行った.対象は2017年8月から2019年7月までの間に報告された有害事象データとした.この調査期間内の有害事象は376件あり,そのうちKAFOに関するものは25件(6.6%)であった.有害事象の多くは備品KAFOで生じており,最も多かった内容は医療関連機器圧迫創傷(Medical Device Related Pressure Ulcer : 以下,MDRPU) 6件であった.急性期病院での備品KAFOの使用には,MDRPUの発生予防対策や創傷に対する知識獲得が重要と考える.
著者
髙橋 忠志 尾花 正義
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.204-209, 2022-07-01 (Released:2023-07-15)
参考文献数
35

脳卒中歩行障害に対するリハビリテーション(以下,リハ)は脳卒中発症直後から開始し,急性期,回復期,生活期と途切れることなく行うことが必要であり,そのスタートとなる急性期でのリハは歩行再建の源になる.重度運動麻痺を呈する脳卒中患者の積極的な立位,歩行練習には長下肢装具が不可欠である.長下肢装具の仕様としては油圧制動式足継手を使用し,運動麻痺の改善に応じて装具の設定を変更できることが望ましく,また実際の使用には装具に関する知識と技術が求められる.脳卒中急性期からの長下肢装具使用はエビデンスが蓄積されつつあり,脳卒中歩行障害への歩行再建・装具療法はパラダイムシフトを迎えている.
著者
髙橋 忠志 栗田 慎也 久米 亮一 遠藤 聡 尾花 正義
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.917-921, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
11

〔目的〕急性期脳卒中患者において,早期離床や立位・歩行練習は,深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)および肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)を予防するとされている.今回,発症早期より長下肢装具を用いて歩行練習を開始したが,経過中にDVT・PEを発症した脳出血患者を経験したので報告する.〔対象と方法〕80歳代の女性で右視床出血による左片麻痺を生じた.〔結果〕介入初日より車椅子乗車を開始し,4病日より備品長下肢装具を用いて,歩行練習を開始した.24病日にD-dimerが高値を示し,CTにて左大腿静脈内にDVT,右肺動脈にPEの所見を認めた.〔結語〕DVT・PEを発症した要因として,運動麻痺や脱水,便秘,解剖学的問題などが考えられた.
著者
髙橋 忠志 尾身 諭 泉 圭之介 菊池 謙一 遠藤 聡 尾花 正義 太田 岳洋 長谷川 士朗 柚木 泰広 北澤 浩美 方波見 裕子 八木 真由美 長井 ノブ子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.271-274, 2019-03-10

はじめに 荏原病院(以下,当院)は東京都の区南部医療圏における中核病院の1つである.リハビリテーション科においては,中枢神経疾患や運動器疾患,廃用症候群,呼吸器疾患などを中心に,急性期から早期リハビリテーション介入を行っている.がん患者に対するリハビリテーションは2015年に所定のがんのリハビリテーション研修を修了し,がん患者リハビリテーション料が算定可能となった. がんのリハビリテーションガイドラインでは,周術期がん患者に対するリハビリテーションは呼吸器合併症の減少・入院期間の短縮のため勧められるとされている1).しかし,当院ではがん患者リハビリテーション料算定可能となった後も,がん患者のリハビリテーション科依頼は少なく,周術期がん患者に対して十分なリハビリテーション介入を行えていなかった. さらに,周術期の呼吸器合併症の予防で有効な手段として口腔機能管理が挙げられる.周術期の口腔機能管理は,口腔ケアによる口腔細菌数の減少,口腔感染源の除去,挿管・抜管時の歯牙保護が主な目的であり,周術期口腔機能管理料を算定できる.2016年度の診療報酬改定において,医科歯科連携の推進として,周術期口腔機能管理後手術加算の引き上げ,栄養サポートチームに歯科医師が参加した場合の歯科医師連携加算が新設され,現在,医科歯科連携がいっそう求められている. 当院では2016年度に外科,歯科口腔外科(以下,歯科),看護部,リハビリテーション科が協働して,がん患者の周術期サポートチームを立ち上げた.このチームをSupport Team of Rehabilitation,Oral care and Nursing care Group for perioperative patientsの頭文字を取り“STRONG”とした. これまで,医科歯科連携として,手術を行う主科と歯科の連携の報告は散見するが,歯科とリハビリテーション科が連携して呼吸器合併症を予防する取り組みは報告が少ない. 今回,当院の外来におけるがん患者周術期サポートチーム“STRONG”の取り組みを紹介する.