著者
大石 勇 小林 茂雄 久米 清治
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.60-65, 1973

本邦の犬には犬糸状虫が広くかつ高率に分布しているが, 他の糸状虫は沖縄を除いては未だ知られていない. 著者らは近年東京都西南地域に飼育される糸状虫子虫陽性犬110頭を対象とし, アセトン集虫法を用いて子虫の形態調査を行なった.<BR>検出された子虫は全て無鞘で, 体長・体巾の測定値, その他形態から2種頼に区別された. すなわち, 109頭から検出された子虫は大型で犬糸状虫子虫と同定され, 1頭から検出された子虫は小型で<I>Dip. reconditum</I>子虫と同定された.<I>Dip. reconditum</I>子虫は米国ケンタッキー州から輸入した2才のプロットハウンドに見出されたものであり, 本邦では沖縄以外の地域における最初の報告である.<BR>今回の調査から東京地域の犬に一般に見出される糸状虫は犬糸状虫であるが, 他種糸状虫の流行地から搬入された犬の検診には犬糸状虫以外の糸状虫を考慮して診断を行なう必要がある.