著者
中井 正博 河村 正 松岡 信男 片江 宏巳 大石 勇
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.360-366, 1990-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
31

犬糸状虫症の予防に用いるIvermectin (IVM) の投与量6~9μg/kgの約2倍量を, ラフ・コリーに投与した場合の影響およびIVMの中枢神経組織への移行について検討した.試験犬は2ヵ月齢の幼犬である.ラフ・コリー4頭と雑種4頭にIVM20μg/kgを, 対照群4頭 (ラフ・コリー2, 雑種2) にplacebo (賦形剤) をいずれも1回経口投与した.投薬後24時間臨床所見を観察したが中枢神経症状を含あ, 異常所見は認あられなかった.また, 心電図, 血液・血漿生化学的検査値および24時間後の剖検による病理学的検査所見にも, IVM投与に関係すると考えられる異常は認められなかった.IVM投与後6, 24時間の血漿中IVM濃度は, コリー群と雑種群間に有意差はなく, 吸収・排泄に差は認められなかった.IVM投与後24時間の中枢神経組織中IVM濃度は, コリー3頭, 雑種4頭では検出限界以下であったが, コリー1頭では, 小脳で同時点における血漿中濃度の約1/3, 脳幹と脊髄では血漿中濃度に近い濃度が検出された.この成績から, ラフ・コリーのなかにはIVMが中枢神経組織に入り得る個体のあることが明らかにされた.
著者
早崎 峯夫 大石 勇
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.455-458, 1987-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
8

秋田犬 (雄, 3才, 体重18kg) に全身性強皮症に類似した皮膚変化がみられた.特徴的異状所見は, 仮面様顔貌, まばたきおよび開口の困難, 木馬様歩行であった.開口の程度は, 口吻先端で約5cmで, 舌の運動も障害されていた.しかし, 食欲, 元気は正常であり, 採食も時間をかけて必要量を採ることができた.被毛, 皮膚表面, 眼, 粘膜, 筋肉, 関節, 骨, 耳および性格に異常を認めなかった.皮膚の生検にて, 膠原線維の著明な膨化増生や, 汗腺, 皮脂腺の萎縮が認められた. 臨床病理学的検査では, 抗核抗体とCRPは陰性, 副腎機能検査では, ソーン試験における好酸球数減少率は56.5%と, 軽度な機能低下が示唆された.症例犬は, 病態観察中, 第104日に腸捻転と腹膜炎により突然死亡した.
著者
大石 勇 小林 茂雄 久米 清治
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.60-65, 1973

本邦の犬には犬糸状虫が広くかつ高率に分布しているが, 他の糸状虫は沖縄を除いては未だ知られていない. 著者らは近年東京都西南地域に飼育される糸状虫子虫陽性犬110頭を対象とし, アセトン集虫法を用いて子虫の形態調査を行なった.<BR>検出された子虫は全て無鞘で, 体長・体巾の測定値, その他形態から2種頼に区別された. すなわち, 109頭から検出された子虫は大型で犬糸状虫子虫と同定され, 1頭から検出された子虫は小型で<I>Dip. reconditum</I>子虫と同定された.<I>Dip. reconditum</I>子虫は米国ケンタッキー州から輸入した2才のプロットハウンドに見出されたものであり, 本邦では沖縄以外の地域における最初の報告である.<BR>今回の調査から東京地域の犬に一般に見出される糸状虫は犬糸状虫であるが, 他種糸状虫の流行地から搬入された犬の検診には犬糸状虫以外の糸状虫を考慮して診断を行なう必要がある.
著者
大石 勇 片江 宏巳 中垣 和英 中井 正博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.125-130, 1988-02-15
被引用文献数
1

Ivermectinの1か月間隔投与による犬糸状虫の寄生予防効果を,自然感染下で実験した. 実験犬35頭をA(15頭), B(10頭), C(5頭)の3群とし,7月1日から9月30日の3か月間蚊に曝して自然感染させた. さらに,A,B両群には7,8月に3回に分けてL_3を1頭当り30匹実験感染した. A群には8,9,10,11月の各月1日にivermectin 6μg/kgを経口投与し,B群にはA群と同一日にplaceboを投与し,C群は無投薬群とした. B群全例からは平均49.1匹の虫が回収(実験感染L_3数に対して平均163.7%の回収率)され,C群全例からは平均33.6匹の虫が回収されたことから,この実験では高度の自然感染があったことが示された. Ivermectin投与のA群からは虫は回収されず,右心への寄生予防効果は確実であり,副作用は認められなかった. 以上の成績から,自然感染開始後1か月から終了後1か月の期間を通して,1か月間隔でivermectin 6μg/kgを投与すれば,犬糸状虫寄生を確実に予防できることが証明された.