著者
久高 潤 堀川 和美 瓜生 佳世 松雪 星子 緒方 喜久代 河野 喜美子 山口 仁孝 山崎 省吾 渡辺 治雄 岩永 正明
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.864-870, 2005-11-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
19
被引用文献数
5 7

食中毒及び感染性胃腸炎の潜伏時間と下痢, 嘔吐, 発熱, 腹痛, 頭痛等の臨床症状を集計し検討した.特に発生頻度の高い10病原体 (Norovirus, Salmonella, Vibrio Parahaemolyticus, Campylobacter jejuni, Clostridium perfringens, 腸管出血性大腸菌 (STEC), 腸管毒素原性大腸 (ETEC), Shigella sonnei/flex-neri (Shigella), Staphylococcus aureus, 嘔吐型Bacillus cereus) について解析を行った. 対象としたのは2000年1月から2004年12月までに九州10地区の衛生研究所管内で発生した646症例である. 調査の結果, 平均潜伏時間が最も短かったのはB. cereus (0.8h) 次いでS. aureus (3.3h), C.perfringens (10.7h) とV. parahaemolyticus (164h) であった. なかでもS. aurcusおよびB. cereusは6時間以内にV. para-haemolyticus, C. perfringensは24時問以内にほぼ全例が発症していた. 血便を示す例はSTECとShig-ella以外では殆ど見られなかった. 嘔吐の発現は高頻度群と低頻度群にはっきりと区別され, 高頻度群としてはS.aureusとB. cereusで, ほぼ全症例に見られNorovirusの71.5%, V.parahaemolyticusの56.1%が続いた. 低頻度群では最高でもC. perfringensの22.0%でありETEC, STECは5%前後であった. O157STECとO157以外のSTEC株を比較すると血便・腹痛・嘔吐では有意にO157に差が見られた (P-値0.01以下).今回の調査で各病原体による臨床症状の発現頻度を具体的な数値として示すことができたほか, 潜伏時間, 血便, 嘔吐, 発熱の4項目では病原体別に特徴的な発現頻度を有する事が判明した. 今回の結果は医療機関を受診するまでもない軽症者から入院を要した重症者, また輻広い年代が含まれることから, 保健所や衛生研究所が集団食中毒等の原因調査を行う際の有用な資料になると思われた.
著者
久高 潤 糸数 清正 平良 勝也 仁平 稔 岡野 祥 中村 正治 岩永 節子 富永 正哉 大野 惇
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.11-15, 2008
被引用文献数
2 14

海ぶどうの細菌学的汚染状況を把握し,効果的な衛生対策を確立するために調査・研究を行った.沖縄県内16か所の養殖場で各生産段階や製品など11か所における腸炎ビブリオおよび海洋細菌の汚染実態調査を実施した.調査の結果,養殖海水中の海洋細菌数は,養殖により平均10<sup>3</sup>から10<sup>6</sup> cfu/mLまで増加した.一方,海ぶどうの海洋細菌数は母藻から出荷の段階,あるいは出荷7日後まで平均10<sup>7</sup> cfu/gと高い菌数で推移した.腸炎ビブリオは使用海水56%,母藻25%,製品19%から検出されたが,<i>tdh</i> は増菌液,分離株のいずれからも検出されなかった.今回の調査結果を踏まえ,今後,各養殖工程に適した具体的な消毒方法,殺菌装置の評価・改良等についてさらなる検討が必要である.