著者
二ノ宮 裕三
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.7-13, 2018 (Released:2019-03-31)
参考文献数
40

味覚は,体が必要とする栄養素を過不足なく摂り,健康を維持するうえで不可欠な感覚である.生物は,体内の糖や塩分が不足すると,甘味・塩味の情報を手掛かりに探し出し摂取する.逆に苦味や強い酸味物質は有害物として忌避する.味情報が,快・不快の情動,咀嚼,唾液・消化液・ホルモンの分泌を介して食行動・栄養吸収を調節し,生体恒常性が維持されている.近年,筆者らは,甘味受容体が消化管・膵臓・食欲中枢にも発現し,口腔脳腸が味情報・内分泌系で連携しエネルギー調節に寄与することを見出した.本稿では,その味シグナルの食の調節系や生体防御系における新しい機能を含め,味センサーの多臓器発現・多機能性研究の新知見を紹介する.
著者
森 友彦 栗原 堅三 高見 茂 林 由佳子 二ノ宮 裕三 山本 隆
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

昧覚機能は、年齢、性別、生活・職業形態、疾病など種々の環境要因によって変動する。特に、過食と肥満、拒食と痩〓、美食と生活習慣病、食スタイルと生老病死では、味覚機能の変動が原因と結果の双方で生起する。これら諸現象には食の健康科学の視点から関心が高まっていることから、味覚の基本的なメカニズムの解明を通じて味覚機能の全体を理解することが要望される。本企画調査を通じて味覚機能と健康の関連性を科学的に解明する研究の拠点的組織を構築することにより、生命科学としての味覚研究の推進をさらに図る。そのために味覚・食・健康に携わる計12名の第一線の研究者を研究班として組織した。まず、7月26日午後1時から4時、名古屋アソシアターミナルホテル、小会議場にて第1回全体会議を行った。特定研究領域発足に向けて研究方針を立てると共に研究組織の改編を行った。第2回全体会議は9月24日午前10時から12時まで、岡山衛生会館第5会議室で発足に向けての最終打ち合わせを行った。その後、インターネットによる綿密な打ち合わせを頻繁に行い、11月に平成16年度発足特定領域「食の健全性と味覚機能」を申請した。そして、2004年3月1日(月)13時半から6時過ぎまで、京都大学宇治キャンパス農学研究科講義室にて「食の健全性と味覚機能」に関して研究報告会兼シンポジウムを開催した。本研究班に加え、米国ジョンズホプキンス大学医学部より恒成隆博士を招聘して、感覚研究がこれから向かうであろう領域に関して情報を収集した。