著者
二文字屋 脩
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第52回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.46, 2018 (Released:2018-05-22)

本発表は、タイ北部で唯一の遊動狩猟採集民と知られるムラブリ(the Mlabri)を事例に、脱狩猟採集民化を経験したポスト狩猟採集民に対する原始豊潤社会論の妥当性を検証するとともに、生産様式から議論されてきた原始豊潤社会論を、思考様式や交換様式といった視点から再考するものである。
著者
二文字屋 脩 才田 春夫 伊藤 雄馬
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、タイ北部で唯一の狩猟採集民と知られるムラブリを対象に、ムラブリの文化的特質を学際的なアプローチから明らかにすることで、今日の東南アジア山地研究(ゾミア論)の学問的空白を補うとともに、「森のゾミア」論を構築することである。この目的を達成するため、初年度は、2018年6月に富山国際大学にて共同研究者全員で本研究課題の内容と方向性を改めて相互に確認するとともに、それぞれの研究課題と研究調査スケジュールについて検討を行った。また、DropBoxを用いて本科研用のストレージを作成し、円滑な情報共有を行えるようにした。タイ北部ナーン県での現地調査は各研究者がそれぞれ実施し、自身の研究課題に沿った研究調査を行なった。人類学班は、遊動と社会性の関係について調査を行い、言語班はムラブリ語の方言差と語派内の特異性について調査を行なった。農学班はムラブリが利用する森の植物性資源について生態学的・栄養学的観点から調査を行うとともに、食用や医療用に用いられてきた有用資源の利用と効果の検証を行った。なお、これらの調査は、被調査者の同意を得て行われた。だが初年度は資料収集がメインだったこともあり、論文や学会発表を通じた成果の発表、そしてフィールドで得られた知見の理論化に十分な時間を割くことができなかったと考える。だが各自2回ほどの現地調査を行ったことで、予想もしていなかった新たな資料などを得ることが出来、調査の成果は十分にあったと考えている。なお、2019年3月には、フィールドにて共同研究者全員が集まり、初年度の成果を共有するとともに、2年目の予定について話し合った。