著者
五名 美江 蔵治 光一郎
出版者
水文・水資源学会編集出版委員会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.212-216, 2013-07-05 (Released:2014-04-07)
参考文献数
16

限られた数の地点のデータから,地域の年降水量のトレンドを知るためには,対象とする地域内で複数地点の長期観測データを用いて,トレンドの年数依存性と地域代表性との相互関係を調べておくことが有益である.事例として名古屋とその周辺域の5地点の79年間の年降水量データを取り上げ,年降水量のトレンドの年数依存性と地域代表性との相互関係について調べた.年数45年間未満の場合,トレンドは5地点でそれぞれ異なり,年数45年以上70年未満では,岐阜を除く4地点について共通のトレンドがみられ,年数70年以上では5地点で共通のトレンドがみられた.この地域では,日本海側の気候の影響が無視できない河川流域において,流域全体の降水量のトレンドを知るために,少なくとも70年以上の年数のデータが必要であることが示唆された.
著者
五名 美江 蔵治 光一郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.214-222, 2012-10-01 (Released:2012-11-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

本研究は東京大学演習林生態水文学研究所穴の宮試験流域を対象とし, 単独流域法を適用して, ハゲ山に砂防植栽を施して森林再生を開始した期間 (前期: 1935∼1946年) と, それから65年が経過して森林に被覆され, 土壌が回復途上にある期間 (後期: 2000∼2011年) で, 森林の洪水緩和機能の指標の一つである降雨量と直接流出量との関係の違いを定量的に明らかにすることを目的とした。その結果, 後期と比べて前期の方が, 同じ降雨量に対して推定直接流出量が大きく, その差は, 200, 300, 400 mmの降雨量の降雨に対してそれぞれ16.0, 25.8, 33.5 mmと推定された。前期と後期の差は, 初期水分条件が乾燥の場合や, 最大降雨強度が大きい場合により明瞭に現れた。例えば, 初期水分条件が乾燥の場合, 後期と比べて前期は, 200, 300, 400 mmの降雨に対して推定直接流出量がそれぞれ19.1, 29.1, 36.6 mm大きく, 最大降雨強度が大きい場合, 後期と比べて前期は, 200, 300, 400 mmの降雨に対して推定直接流出量がそれぞれ36.3, 56.7, 71.3 mm大きかった。一方, 土壌が湿潤な場合および最大降雨強度が小さい場合は, 両者の差は小さかった。