著者
井上 三四郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.312-318, 2017-03-25 (Released:2017-05-01)
参考文献数
21

【目的】2015-2016シーズンに当院整形外科病棟で生じたインフルエンザアウトブレイクを報告し,今後の教訓とすること.【経過】前日から咳が続く1名の看護師が,病棟勤務中に発熱し当院内科外来を受診しインフルエンザと診断された.その後感染が拡大し,最終的に看護師5名患者7名に治療量の抗インフルエンザ薬が投与された.3例の患者が特に治療に支障をきたし,うち1例は手術を延期した.全例が内科的合併症を有する高齢者であった.【考察】整形外科病棟でインフルエンザアウトブレイクが生じた場合,整形外科病棟責任者は関連部署に速やかに連絡し,病院としての方針を確認する必要がある.そして,院内感染対策チームを中心に適切かつ迅速な対応が行われるべきである.そのようなバックアップの下に,可能な限り手術を含めた急性期治療を遅滞なく行っていくことこそが,整形外科医に与えられた責務である.
著者
富永 冬樹 井上 三四郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.685-689, 2015-09-25 (Released:2015-12-03)
参考文献数
3

犬猫咬傷は日常よく遭遇する疾患であるが,診療の注意点は周知されていない.今回,当院の犬猫咬傷について報告する.対象は2013年1月から2014年8月までに当院を受診した46例で,犬が35例,猫が11例であった.それらの症例の受傷部位,受傷から受診までの日数,感染徴候の有無,手術の有無,治療期間を調べた.受傷部位は手部19例,手指13例と上肢に多かった.受傷から受診までは平均0.74日で,犬0.46日,猫1.64日と有意に猫が長かった(p=0.0001).感染徴候は11例に認め,犬2例,猫9例で,有意に猫に多かった(p<0.0001).手術は12例に行われ,犬5例,猫7例で,有意に猫に多く施行され(p=0.0011),治療期間は平均10.3日で,犬4.6日,猫28.5日と,猫が有意に長かった(p=0.0008).受診の頻度は犬咬傷が多いが,感染徴候を認め手術に至る症例は猫咬傷が多く注意が必要である.
著者
井上 隆広 井上 三四郎 松延 知哉 岩崎 元気 菊池 直士 阿久根 広宣 丸塚 浩助
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.154-156, 2020-03-25 (Released:2020-04-30)
参考文献数
5

【症例】類表皮嚢腫は手指軟部組織に発生することは多いが,まれに骨内に発生する.末節骨内に発生した1例を経験したので報告する.【症例】41歳男性.12歳時に左示指を受傷し,縫合処置を受けた既往がある.1.5年前に近医で偶然示指末節骨透亮像を指摘された.半年前より特に誘因なく左示指疼痛が出現し,骨透亮像の増大を指摘され当科紹介となった.MRI検査で骨透亮部はT1強調画像で低信号,T2強調画像で高度の高信号を示し,造影効果は認めなかった.初診より1.5ヶ月後,腫瘍掻爬及び人工骨移植を行った.培養陰性で,病理学的に類表皮嚢腫と診断された.術後1年で可動域に左右差なく,疼痛も軽減し経過良好である.【考察】本症を診断する際には,手の受傷歴を丁寧に問診することが重要である.
著者
井上 三四郎 村岡 辰彦 児玉 博和 竹本 翠
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.53-55, 2019-03-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
6

鎖骨骨幹部骨折に対しプレート固定とりわけ上方設置法は,標準術式として確立されている.その術前作図には,単純X線像とメーカーが提供するテンプレートが使用される.当院のルーチン鎖骨2方向は,鎖骨正面像と20度尾頭撮影である.テンプレートにはプレートを正面と真上から見た2方向が印刷されている.このうちプレートを真横から見た像は従来法でテンプレーティング可能であるが,プレートを真横から見た像は不可能である.そこで,50度尾頭像を撮影し,テンプレーティングを行っている.
著者
井上 隆広 井上 三四郎 菊池 直士 増田 圭吾 岩崎 元気 田中 宏毅 中村 良 川本 浩大 泊 健太 阿久根 広宣
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.164-165, 2021-03-25 (Released:2021-04-30)
参考文献数
6

【緒言】鎖骨骨折術後経過フォロー中にVariax Clavicle Plate(Stryker社)が折損し再手術を余儀なくされた1例を経験したので報告する.【症例】症例:55歳男性,既往歴特記事項なし.ロードバイク走行中に転倒し受傷した.当科受診しX線検査で右鎖骨骨幹部骨折(Robinson分類Type2B1)を認めVariax Clavicle Plateを用いて内固定術を行った.術後経過良好であったが,受傷約2ヶ月後ロードバイク走行中に再度転倒し,プレート折損及び鎖骨骨幹部粉砕骨折を認め当科再診となり再手術施行した.【考察】鎖骨骨折に対してプレートによる内固定を行う場合は,プレート折損の可能性について患者に十分説明し,スポーツ再開についても骨癒合を確認した上で許可すべきであることを再確認させられた.
著者
田中 宏毅 井上 三四郎 有田 卓史 古川 寛 大角 崇史 内田 泰輔 岩崎 元気 菊池 直士 阿久根 広宣
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.861-863, 2020-09-25 (Released:2020-11-12)
参考文献数
8

51歳女性.左腰痛,両下腿痛,血尿のため体動困難となり,救急搬送された.両下腿と腰部に高度な浮腫と腫脹,激しい疼痛,水泡形成,著明な筋逸脱酵素の上昇,高カリウム血症を認め,左腰部,両下腿の急性コンパートメント症候群と診断した.緊急で腰部と両下腿に減張切開術を施行し,ICUで全身管理を行った.全身状態安定とともに四肢の浮腫は改善した.初診時に血圧低下,血液濃縮,低タンパク血症,心拍出量低下を認め,その他の多発コンパートメント症候群をきたし得る全身疾患が除外されたことより,原疾患として全身性毛細血管漏出症候群(SCLS)と診断した.SCLSは非常にまれな疾患であり,多発急性コンパートメント症候群を認めた場合,鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要がある.
著者
宇都宮 健 菊池 直士 横田 和也 高野 祐護 宮崎 幸政 井上 三四郎 谷口 博信 阿久根 広宣
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.241-247, 2013-03-25 (Released:2013-06-11)
参考文献数
24

本疾患は1970年Maroteuxが初めて報告した.手指に紡錘形の腫脹・熱感・疼痛を生じるが,数カ月の経過で自然軽快し予後は良好とされる.生後2カ月-15歳に好発し,寒冷期に多い.血液検査では炎症反応は認めない場合が多く,単純X線写真で中節骨に1mm大の小透亮像を多数有することが特徴である.今回本疾患と思われた3症例を経験したので報告する.