著者
田島 典夫 高橋 博之 畑中 美穂 青木 瑠里 井上 保介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.656-665, 2013-10-31 (Released:2013-11-25)
参考文献数
12

はじめに:バイスタンダーによるBLS は,実施者に相当な精神的負担がかかると想定されるが,これに関する研究自体が少なく対策も進んでいない。そこで,バイスタンダーのストレス反応を明らかにし,心のケアに関する対策を検討することを目的として調査を行った。対象と方法:2008年8月から2011年10月までの間にバイスタンダーによるBLSが実施されて社会復帰した事案のうち,バイスタンダーの連絡先を把握している事案を抽出し,当該事案の救助に携わった者を対象に面接調査を実施した。結果:多くのバイスタンダーがさまざまなストレス反応を経験していた。また,その体験を他者に話して,自分の気持ちを理解してもらいたいと考える者が多かった。結論:BLS教育において,BLS実施によるストレスとその対処法に関する教育を考慮する必要がある。さらに対策の一環として,相談を受けるシステムを整備することが有用であり,急務であると考えられる。
著者
田島 典夫 畑中 美穂 青木 瑠里 井上 保介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.442-448, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
11

本研究では,高齢者福祉施設職員を対象にBLS(basic life support;BLS)に伴うストレス反応を調査し,ストレス反応およびその後の救助意欲を規定する要因を検討した。A市内の全高齢者福祉施設職員に対して悉皆調査を行い,利用者の心停止現場に遭遇した経験をもつ360名を分析対象としたところ,約9割から何らかのストレス反応が回答された。BLS経験後のストレス反応の規定因を重回帰分析によって検討した結果,BLSの手技に関する不安と非救命例でのBLS実施事案がストレス反応を規定していた。また,BLS経験後の救命に対する態度の規定因をロジスティック回帰分析によって検討した結果,BLSへの関与人数が2人以下の場合,また,BLS後のストレス反応が重い場合ほど,その後の救助意欲が消極的になることが示された。これらの結果を踏まえ,バイスタンダーのストレス対策の重要性が議論された。
著者
田島 典夫 井上 保介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.562-567, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
5

救急救命士が対応した施設外分娩症例を調査し,その頻度や母体と児の状態について検討した。県内で現場活動に従事している救急救命士のうち,52%の者が過去救急出動で施設外分娩に遭遇した経験があると回答した。回答があった施設外分娩症例のうち,457件について検討したところ,調査から直近1年間の施設外分娩は87件であり,県全救急件数の0.025%であった。また,救急隊が現場到着時にすでに分娩済みであったのは75.9%であり,救急隊接触後および搬送中に分娩に至った事案は21.9%であった。さらにすでに分娩していた事案の分娩場所については,自宅内が82%を占め,なかでもトイレでの分娩が37.2%ともっとも多かった。これらの結果から,救急救命士が対応した施設外分娩の頻度や母体と児の状態が明らかとなったが,不明な点も多かった。今後は,統一したフォーマットによる全国規模でのデータ収集とその分析が望まれる。
著者
末廣 吉男 森谷 裕司 山口 京子 夏目 恵美子 井上 保介 武山 直志 中川 隆 野口 宏
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.375-379, 2010-06-30 (Released:2023-03-31)
参考文献数
8

近年,臨床検査関連団体や学会が認定する専門臨床検査技師制度の普及により,専門分野に特化した臨床検査技師が増加している。しかし,救急医療に関連した専門臨床検査技師制度の整備は遅れている。当院では,緊急検査担当の臨床検査技師が救急蘇生外傷治療室にて検査関連業務を実施することで,医師による検査依頼から結果確認までの時間(TTAT:Therapeutic turn around time)を従来と比べ約22分間短縮した。救急蘇生外傷治療室における初療時検査は,病態把握や治療方針決定のために実施されるものであり,医師が最も必要としている検査結果を推測し,的確な検査項目について結果報告することが重要である。これらを実践するため,救急医療に携わる臨床検査技師にはさまざまな疾患に対応するための幅広い臨床検査知識や技術のほかに,救急医療の基礎知識および技術の習得が必須であると考える。救急医療における臨床検査技師の専門性とは,積極的に救急医療の現場へ介入して検査関連業務を実施し,検査依頼から結果確認までの時間を短縮するとともに,医師や看護師が本来業務に特化できるように業務支援することであると考える。