著者
田島 典夫 高橋 博之 畑中 美穂 青木 瑠里 井上 保介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.656-665, 2013-10-31 (Released:2013-11-25)
参考文献数
12

はじめに:バイスタンダーによるBLS は,実施者に相当な精神的負担がかかると想定されるが,これに関する研究自体が少なく対策も進んでいない。そこで,バイスタンダーのストレス反応を明らかにし,心のケアに関する対策を検討することを目的として調査を行った。対象と方法:2008年8月から2011年10月までの間にバイスタンダーによるBLSが実施されて社会復帰した事案のうち,バイスタンダーの連絡先を把握している事案を抽出し,当該事案の救助に携わった者を対象に面接調査を実施した。結果:多くのバイスタンダーがさまざまなストレス反応を経験していた。また,その体験を他者に話して,自分の気持ちを理解してもらいたいと考える者が多かった。結論:BLS教育において,BLS実施によるストレスとその対処法に関する教育を考慮する必要がある。さらに対策の一環として,相談を受けるシステムを整備することが有用であり,急務であると考えられる。
著者
高橋 博之
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.543-547, 2011-11-30 (Released:2012-02-17)
参考文献数
4

当科で経験した陰茎部外傷の2例につき報告した。症例1は64歳,男性。重度の糖尿病あり。喧嘩の際,股間を蹴られた5日後に当科を受診。陰茎包皮の広範な壊死と二次感染あり。症例2は80歳,男性。深部静脈血栓症にてワーファリン内服中。リハビリ目的の自転車漕ぎを通常の2倍の時間施行後,陰茎全面および陰嚢にかけ皮下出血あり。受傷一週間後に当科受診。両名とも合併症や年齢を考慮し保存的方法にて治療するも改善しないため,全身麻酔下でデブリドマンならびに分層植皮術を施行した。術後の経過は順調であり創部の修復状態も良好であった。陰茎部の植皮はシートグラフトが基本であるが,メッシュスキングラフトでも肥厚性瘢痕や瘢痕拘縮を来さず,また最小の採皮で充分満足のいく陰茎部の創修復が可能であった。
著者
高橋 博之 宮崎 正弘
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第49回, no.人工知能及び認知科学, pp.33-34, 1994-09-20

文字音韻変換処理は一般の単語については辞書を用いて行われる。しかし、数詞は表記が無数に生成できるため、全表記を辞書に収録することはできない。そのため、数詞は別処理で音韻付加する必要がある。日本語における数詞の表記は、算用数字表記、漢数字表記に加え両者の混ぜ書きも行われるなど多様である。本稿ではこれら多様な表記の数詞を処理するための可読性、拡張性に富むルールを提案し、その有効性を示す。
著者
高橋 博之
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

X線で非常に明るく輝く超高光度X線源はコンパクトな天体を起源とし、ガス降着によって重力エネルギーを解放することで明るく輝いていると考えられる。特筆すべきはその光度で、太陽質量程度の天体におけるエディントン光度を超えて明るく輝くいている。このコンパクトな天体の正体は太陽質量程度の恒星質量ブラックホールか、もしくは太陽質量の1000倍程度の質量を持つ中間質量ブラックホールであると考えられてきた。しかし近年になって明るく輝く超高光度X線源の一部は中性子星を起源に持つことが明らかになってきた。ブラックホールと異なり中性子星は強い磁場を持つために中性子星の磁場に沿ってガス降着が起こり、磁軸付近に堆積したガスが光る。さらに磁軸と回転軸が非平行なために周期的なX線光度変動を示す。観測によって中性子星を起源に持つことが明らかになった超高光度X線源はこのような特性を持つが、磁場が弱い場合や見込み角の違いにより、X線パルスが観測されていない超高光度X線源のリストの中にも中性子星を起源とするものが埋もれていると考えられる。従ってX線パルス以外の方法で超高光度X線源がブラックホールを起源とするか中性子星を起源とするかを判別する手法を構築することは急務である。そこで本研究では光度だけでなくX線スペクトルによる中心天体の同定方法を構築すべく、これまでにない新しい数値計算コード(振動数依存型一般相対論的輻射磁気流体コード)を構築した。この方法は一般相対性理論の枠組みで流体や電磁場を扱うのみならず、光も同時に扱う。そしてこの光は振動数の情報を持つため、光度だけでなくX線スペクトル、さらにそれらの時間変動についても情報を得ることができる。このコードは超高光度X線源のみならず、一般の高エネルギー天体現象に適用できる汎用的なコードである。
著者
大須賀 健 高橋 博之 川島 朋尚
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ブラックホールおよび中性子星周囲をターゲットとした大規模数値シミュレーションを実施し、超臨界円盤からは連続光による輻射力で、亜臨界円盤からは束縛ー束縛遷移吸収による輻射力で加速されたアウトフローが噴出することを解明した。また、発生したガス噴出流が流体不安定で小さなガス片に分裂することも突き止めた。強磁場中性子星の場合は、磁極からガスが降着することも示した。活動銀河核やX線連星で観測されるアウトフローや光度変動を説明できる新たな理論モデルを構築したのである。
著者
松元 亮治 高橋 博之
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.864-867, 2013-12

X線天文衛星やガンマ線望遠鏡等による観測を通して,突発的なX線・ガンマ線増光を示す天体が多数発見されてきた.これらのフレア現象では,太陽フレアに類似した天体表面で発生する磁気エネルギー解放に加えて,中心天体の周りに形成される降着円盤および降着円盤コロナ,中心天体近傍から噴出するジェット・アウトフロー中での磁気エネルギー解放と粒子加速が寄与していると考えられている.ブラックホール近傍から噴出するジェットやパルサー風では電磁エネルギーをいかにして熱エネルギーや運動エネルギーに変換するかが問題となっており,その機構として磁気リコネクションによる磁気エネルギー散逸が候補になっている.高エネルギー宇宙物理学分野は相対論的な磁気リコネクションおよび粒子加速の理論・シミュレーション研究と観測・実験の連携を通して急進展が期待される分野であり,100年来の課題である宇宙線加速機構の研究も新たな段階に入りつつある.
著者
矢部 沙織 高橋 博之 後藤田 裕子 森 孝之 井川 裕之 工藤 ひとみ 松本 哲 紅粉 睦男 関口 雅友
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.34-40, 2015-01-30 (Released:2015-02-04)
参考文献数
16
被引用文献数
1

62歳男性.30歳時に糖尿病を発症しインスリン治療を開始され,10年前より1日4回のインスリン強化療法を施行していた.62歳時,糖尿病性壊疽のため左足第I趾切断術目的に当院の心臓血管外科に入院.術後創部治癒は良好であったが,空腹時血糖値が50~500 mg/dl台と激しく変動したため,血糖コントロール目的に当科転科となった.インスリンを増量したが,600 mg/dl以上の高血糖が数日間持続した.腹部の診察をしたところインスリン注射部位に,径4 cm大の皮下硬結を2カ所認めた.皮膚生検の結果,インスリン頻回注射部位に形成された皮下限局性アミロイド沈着と診断した.注射部位変更後,血糖コントロールは著明に改善し,総インスリン量は減少した.長期インスリン治療患者に対しては注射手技指導を徹底し,さらに血糖コントロール不良例では,皮下限局性アミロイド沈着の形成を念頭に置いた丹念な身体診察が重要である.