著者
櫻井 真由美 大野 良晃 槇野 亮次郎 杉田 省三 井上 圭右 吉本 充 稲葉 雅章
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.457-463, 2017 (Released:2017-07-28)
参考文献数
8

透析患者においては歩行速度の低下が予後の悪化や入院のリスクとなることが報告されている. このため当院で患者の歩行速度を改善させるために透析前5分間のバランスマット上の運動を2か月間施行したところ, コントロール群12名は歩行速度に変化がなかったのに対し運動群13名は0.81±0.19m/sから1.05±0.20m/sと有意に改善した (p=0.043). 歩行速度と骨格筋指数 (SMI), 握力, 開眼片足立位時間, 5回立ち上がり所要時間とは単相関を示した. 重回帰分析では5回立ち上がり所要時間のみが歩行速度に対して有意な因子であった (p=0.002). 運動群では介入後2か月の歩行速度と片足立位時間, 5回立ち上がり時間はそれぞれ相関を示したが重回帰分析では5回立ち上がり時間のみが有意であった (p=0.003). バランスマット上の運動で歩行速度が改善し, 最も寄与した因子は下肢筋力の向上である可能性が示唆された.
著者
寺柿 政和 宮本 雅史 槇野 亮次郎 立石 悠 井上 圭右
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.155-159, 2016-07-01

症例は83歳女性で、以前から夜間に下腿の冷える感じやこむら返りを自覚した。夜に健康補助食品の生姜湯(黒生姜湯)を飲んだところ、翌朝から動悸を感じるようになった。血液検査では中性脂肪、随時血糖、HbA1c、尿素窒素、Cr、尿酸BNPの上昇がみられた。12誘導心電図では頻脈性心房細動を示した。心拍コントロール目的でベラパミルを内服した。動悸症状は軽減するも持続し、心電図では心房細動が続いており、心拍数は毎分約90に減少していた。生姜湯は継続して服用し、下腿の冷感やこむら返りは改善していた。しかし、動悸が持続していたため、みずから生姜湯の服用をやめたところ、翌朝起床時には動悸は消失していた。その3日後、心電図では洞調律に復していた。負荷心電図を行ったが、負荷不十分で判定は困難であった。その後は動悸の再発もなく、洞調律を維持している。
著者
寺柿 政和 河野 仁美 井上 圭右 崔 吉永 稲荷場 ひろみ 川村 千佳 岡村 幹夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.40-45, 2013-01-15 (Released:2014-09-12)
参考文献数
17

アルコールは心臓や肝臓を含むさまざまな臓器に影響を及ぼす.アルコール性心筋症(alcoholic cardiomyopathy;ACM)は特発性心筋症に類似して左室壁運動低下や左室拡大を示すが,大酒歴があることで区別される.断酒で心機能は改善し,再飲酒で悪化するといわれるが,量を減らして飲み続けた場合の長期予後は明らかではない.また,肝障害との合併についても一定の見解はない.今回われわれは,時期を違えて顕性のACMとアルコール性肝硬変を認めた症例を経験した.患者は,51歳時にACMと診断され,断酒により心機能は改善した.その後,以前の約半量のアルコールを再び飲み始めて15年以上を経て肝硬変をきたしたが,この間にはACMは再燃しなかった.飲酒量が臨床的にACMか肝硬変かを規定する一因になったと推測され,興味深い症例と考えられた.