著者
寺柿 政和 河野 仁美 井上 圭右 崔 吉永 稲荷場 ひろみ 川村 千佳 岡村 幹夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.40-45, 2013-01-15 (Released:2014-09-12)
参考文献数
17

アルコールは心臓や肝臓を含むさまざまな臓器に影響を及ぼす.アルコール性心筋症(alcoholic cardiomyopathy;ACM)は特発性心筋症に類似して左室壁運動低下や左室拡大を示すが,大酒歴があることで区別される.断酒で心機能は改善し,再飲酒で悪化するといわれるが,量を減らして飲み続けた場合の長期予後は明らかではない.また,肝障害との合併についても一定の見解はない.今回われわれは,時期を違えて顕性のACMとアルコール性肝硬変を認めた症例を経験した.患者は,51歳時にACMと診断され,断酒により心機能は改善した.その後,以前の約半量のアルコールを再び飲み始めて15年以上を経て肝硬変をきたしたが,この間にはACMは再燃しなかった.飲酒量が臨床的にACMか肝硬変かを規定する一因になったと推測され,興味深い症例と考えられた.
著者
金山 良春 根来 伸夫 岡村 幹夫
出版者
大阪市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

自然発症高血圧ラット(SHl)およびWKYラットの大動脈由来の培養血管手滑筋細胞(VSMC)を用いて,各種成長因子,血管作働物質を作用させた場合のcーmyc protoーoncogene(cーmyc)の発現の程度を比較し,Ca培抗薬やα_1ブロッカ-により抑制されるかどうかを検討した。SHR由来のVSMCは,胎児血清PDGF,EGF,アンギオランシンII,エンドセリンー1,エンドセリンー2,エンドセンリンー3の刺激に対してWKY由来のVSMCに対し有意に高いcーmycの発現を示した。しかし,TGFーβに対してはcーmycの発現の増強は示さなかった。一方,SHR由来のUSMCの種々の成長因子やアンギオテンシンII,エンドセリンなどの血管作働物質によるcーmycの増強それた発現はCa拮抗薬である,ニフェジピン,ジルチアゼムによりWKY由来のVSMCのcーmycの発現の程度に抑制された。また,α_1ブロッカ-である塩酸プナソシンによっても抑制されることを認めた。cーmycの発現にはCa^<++>とプティンキナ-ゼCが関与すると考えられているが細胞内Ca^<++>の動員に重要とされているイノシト-ル1.4,5ー3リン酸(IP_3)のアンギオテンテンIIに対する反応性をSHR由来のVSMCとWKYのそれとを比較したが、SHR由来のVSMCのIP_3反応はWKYの4ー5倍の反応を示した。このことよりSHR由来VSMCのcーmyc発現の増強の要因の一つはアレギオテンシンIIに対するIP_3反応の増強とそれに続く細胞内Ca^<++>の上昇の増強が関与している可能性が考えられた。