著者
片桐 由美子 矢崎 高明 井上 宜充 高篠 瑞穂 久合田 浩幸 田村 拓也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0434, 2008

【目的】臨床では腹臥位が困難な症例に対し、背側の筋を働かせる目的で背臥位でのブリッジ運動や膝関節伸展位での股関節伸展運動を行うことがある。今回はブリッジ課題と背臥位での股関節伸展課題の体幹・下肢の筋活動を比較・検討したので報告する。<BR>【方法】対象は健常男性10名(27.4±4.22歳)。筋活動電位は日本光電マルチテレメーターシステムWEB-5500を用い表面電極にて導出した。測定筋は右側の腹直筋、外腹斜筋、傍脊柱筋、大腿直筋、大殿筋、中殿筋、半腱様筋とした。測定課題は背臥位・両膝関節屈曲120°の両脚ブリッジ課題(WB)、背臥位・両股関節屈曲20°・膝関節伸展位で足部を台にのせた位置からの股関節伸展課題(HE)とした。最終肢位は両課題とも股関節が中間位まで殿部を挙上した位置とした。それぞれ最終肢位を5秒間保持し、その中から安定した3秒間のデータを採用した。各筋についてDanielsの徒手筋力テストの抗重力肢位での最大等尺性収縮値をMVCとし、WBとHEにおける各筋の%MVCを算出した。有意差の判定はWilcoxonの符号順位和検定を使用した(p<0.05)。<BR>【結果】各筋の筋活動はWBでは傍脊柱筋55.03±17.63%、中殿筋31.35±33.16%、大殿筋44.88±30.04%、大腿直筋14.78±16.24%、半腱様筋20.27±12.79%。HEでは傍脊柱筋83.83±28.76%、中殿筋49.13±30.36%、大殿筋64.43±42.70%、大腿直筋25.65±15.07%、半腱様筋77.23±51.75%。全ての筋でHEの方がWBよりも高い値を示し、有意差は傍脊柱筋、中殿筋、大腿直筋、半腱様筋で認められた。<BR>【考察】ブリッジ課題は股関節周囲筋へのトレーニング効果が少なく背筋群での効果が高いといわれているが、今回のわれわれの実験では大殿筋および中殿筋において、どちらも30%以上の高値を示し、筋力増強が期待できることが示唆された。HEでは傍脊柱筋83%、大殿筋64%、半腱様筋77%と全ての背側の筋で高値を示し、中でも半腱様筋と傍脊柱筋は有意に高かった。挙上する際の肩甲帯~足部の距離がHEはWBよりも長い。殿部を挙上する高さが異なるため一概には言えないが、この長さの影響で背側筋群に高値結果が出たと考えた。そのひとつとしてHEでは膝関節伸展位のため二関節筋である半腱様筋は股関節伸展筋としても働きWBより筋力が発揮されたと考えた。また、HEでは体幹を挙上させる際に、半腱様筋、中殿筋が股関節固定筋として働いたためWBよりも高値を示したと考えた。
著者
井上 宜充 隆島 研吾 高木 峰子 島津 尚子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.61-68, 2019 (Released:2019-02-26)
参考文献数
13

〔目的〕初回心不全で入院中の患者と担当理学療法士が必要と考える退院支援の特性と差異を調査すること.〔対象と方法〕対象は65歳以上の心不全初回入院患者16名とその担当理学療法士7名とした.本研究ではQ分類法を使用し心不全患者が必要とする退院支援に関する価値観を調査した.〔結果〕両群ともに必要性が高いとした退院支援は「再発時の対応」であった.両群で差異を認めたのは「運動の効果目的」と,「運動のリスク説明」で患者群の必要性は理学療法士群に比べ低かった.〔結語〕本研究の結果から両群ともに再発予防のために塩分・水分・体重の管理が効果的であることを意識していた.理学療法士群に比べ患者群では「運動」に関する必要性が低く,今後運動に関連した指導への課題があることが示唆された.