- 著者
-
林 京子
田中 昭弘
- 出版者
- 日本醸造協会
- 雑誌
- 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
- 巻号頁・発行日
- vol.108, no.6, pp.401-412, 2013-06-15
- 参考文献数
- 14
マイタケはサルノコシカケ目サルノコシカケ科のキノコであるが,所謂,サルノコシカケとは異なり,食用としても,香り,味および歯応えが良好で,現在は広く食卓に供されている。元来は深山幽谷に発生する希少なキノコであったが,1980年初め頃より栽培技術の開発および量産化に成功して生産販売が開始され,食品としての市場を確立して現在に至っている。量産技術により生み出されるマイタケは,季節を問わずに入手可能かつ品質に差が少ないという利点もあり,1980年後半より,抽出物あるいはその画分の研究が精力的になされた。その結果,抗腫湯化学療法剤による骨髄抑制の回復樹状細胞の成熟化などの免疫に関する薬理効果,あるいは,降圧血糖値低下血中脂質低下等,主に食物繊維が関与する機能と考えられる薬理効果が報告されている。(株)雪国まいたけ(以後当社と表記)は熱風乾燥マイタケ抽出物を健康食品MDフラクション(R)(以下MDと省略)として1997年に日本で,また,2000年に米国で発売を開始しており,この抽出物については,米国スローンーケタリング記念がんセンター(以下,MSKCCと省略)が,2001年から薬理研究を開始し,その後2004年には,手術および化学療法を施して既に治癒している元乳癌患者(治験時点では健常者の範疇)を対象として臨床試験(第一相:P-I/II;乳癌罹患歴があるためP-Iではない)を実施したへその結果,MDは一方的に免疫を尤進するのではなく免疫を制御する可能性が示され,その結果を2008年6月に第44回米国腫蕩学会(ASCO)で発表した。そこで,当社はこの免疫制御作用に着目して2008年に,(独)農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)の平成20年度民間実用化研究促進事業に「まいたけ免疫制御成分の特定と機能性食品としての開発研究」をテーマとして応募し,採択され,3年間を事業期間として研究開発に着手した。研究開発の基本的なコンセプトを,マイタケに含有され,従来から免疫を允進する作用が明らかになっているB-グルカン以外の免疫制御成分を同定することに置いた。その結果,マイタケの貯蔵多糖と考えられるa-(1→6)分岐-a-(1→4)グルカンが意外にもインフルエンザ治療効果を有することを見出した(インフルエンザ治療効果評価は富山大学医学薬学研究部薬用生物資源学研究室が遂行)ので紹介する。しかしながら,マイタケの仕グルカンは生育,保存,抽出等の様々な条件で大きく含有量,分岐構造あるいは分子量が大きく変化し,その変化がインフルエンザ治療効果と密接に関係することが判明したため,先ずは,マイタケに含有されるa-グルカンについて説明する。