著者
井上 健 井上 高良 出口 貴美子
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ある同一の遺伝子内の異なる変異が、異なる表現型を呈する別個の疾患の原因となる現象をアレル親和性と呼ぶ。アレル親和性の分子基盤の理解には、各疾患の分子病態の解明が必要である。我々は、転写因子SOX10の変異が、アレル親和性効果によりWS4とPCWHの2つの異なる疾患を引き起こすことを明らかにし、in vitroでの分子病態解析により、SOX10におけるアレル親和性の分子基盤を明らかにしてきた。本申請では、さらにBACトランスジェニックマウスの手法を用いてPCWHの組織細胞レベルでの分子病態を明らかにし、in vivoでのSOX10アレル親和性の分子基盤を明らかにした。
著者
井上 高良 井上 由紀子 浅見 淳子 寺川 洋平 江草 早紀 平賀 孔
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、生後間もないマウス大脳皮質の接線軸方向に沿ってユニークな発現様式を示すシナプス・細胞間接着分子カドヘリン遺伝子群に着目し、それら発現制御機構や領野形成に果たす役割を探索することから、これまで不明であった大脳皮質機能領野個々の発生に関わる細胞・分子機序に迫ることを主目的とした。その結果、生後1週間の短期間に視床からの入力やバレルIV層神経細胞自身の活動に依存してカドヘリンサブクラスの発現動態が精妙に調節され、各サブクラスのもつ選択的な接着特異性が動的かつ協同的に神経細胞体の配置や樹状突起の配向性を制御することによってバレル領野特異的な組織構築様式を表出することが明白となった。
著者
井上 高良 井上 由紀子
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では細菌人工染色体を解析単位とした独自かつ効率的な遺伝子発現制御領域特定法の適用により、マウス前脳コンパートメント形成に関わる分子機序を明白にすることをめざした。その結果、まず細胞接着分子Cdh6のマウス前脳コンパートメントに対応した発現様式に転写開始点上流およそ40-kbに位置する110-bpの断片が必要なことがわかった。また、この110-bp断片と前脳特異的なマスターコントロール遺伝子Pax6の結合モチーフを含まないゲノム領域が協同的に働くことが前脳コンパートメントに対応したCdh6発現様式に十分であることが示された。本成果は複雑な細胞構築と機能をもつ前脳発達基盤を規定する遺伝的調節カスケードの組み合わせを初めて明らかにしたため意義深い。