著者
佐々木 哲也 中垣 慶子 佐栁 友規 真鍋 朋子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒトの脳では、新生児から子供の時期にかけてシナプスが急速に増えた後、大人になるにつれて減っていく。自閉症患者の脳では、シナプスの刈り込みがうまくいかず、余分な神経回路が残っていると考えられている。私たちは霊長類であるマーモセットを使って自閉症の原因に迫ろうとしている。まずマーモセットの脳で「刈り込み」が起こっていることを確認し、さらにバルプロ酸を妊娠しているサルに与えて自閉症の症状を示す霊長類モデルを作り出すことに成功した。本研究では、その脳でシナプスの「刈り込み」が不十分であることを見つけた。ヒト自閉症脳の特徴を反映したサルを用いることで、新しい治療法の開発に貢献できると期待される。
著者
大井 瞳
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

本研究は、情報通信技術(Information and Communication Technology: ICT)を用いた不眠症患者に対する遠隔心理療法の提供に関する基盤整備、およびICTを用いた遠隔心理療法の社会実装のための実際調査を目的とする。第一段階として、ICTを用いたメンタルヘルスサービスや認知行動療法に関する尺度の日本語版作成と妥当性・信頼性の検証を行う。第二段階として、高齢者に多い不眠症患者、医療従事者を対象に、作成した尺度を含む質問紙調査とインタビュー調査を行い、ICTを用いた遠隔心理療法を社会実装するうえでの問題を明らかにする。
著者
星野 幹雄
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小脳をモデル系として、神経幹細胞アイデンティティの時空間制御機構について調べた。小脳菱脳唇の神経幹細胞ではAtoh1が、小脳脳室帯の神経幹細胞ではPtf1aが発現し、その部位での空間アイデンティティを規定することで、それぞれ興奮性神経細胞と抑制性神経細胞を生み出す形質を与えられているということを明らかにした。また、小脳脳室帯の神経幹細胞は、最初にプルキンエ細胞産生神経幹細胞であったものが、その後抑制性インターニューロン産生型神経幹細胞へと形質を変えることを見いだした。その過程では、転写因子Olig2とGsx1が関与することも見いだした。
著者
土嶺 章子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

1)健常男性において新奇性追求の一部の項目である浪費のスコアとフリーテストステロンに正の相関が見られた。フリーテストステロンの量が多い男性では衝動性が高い可能が示唆された。2)児童思春期のうつ病患者では血中のアラキドン酸(AA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、葉酸が低値を示した。しかし脳由来神経栄養因子(BDNF)に差は認められなかった。3)うつ病、躁うつ病、統合失調症の患者では血中オレキシン濃度の低下が認められた。特に躁うつ病では顕著であった。
著者
清水 英雄
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

ハンチントン病(HD)は、変異型ハンチンチンが原因で引き起こされる神経変性疾患である。HDのモデルマウスでは、シナプスの機能異常が起きており、責任遺伝子であるハンチンチン遺伝子のノックアウトは胎生致死に至る。これらのことから、変異型ハンチンチンは発生期から発現して、脳発達初期からシナプス形成に対して悪影響を及ぼすことが予想される。本研究では、シナプス形成異常と興奮毒性等による神経細胞死を、HDモデルマウスと同腹仔の野生型の初代培養神経細胞をそれぞれ用いて定量的に比較する。これにより、HDにおけるシナプス形成異常と神経細胞の脆弱性を明らかにし、HD発症に至る神経発達異常のメカニズムを解明する。
著者
伊藤 まどか 金 吉晴 加茂 登志子 臼井 真利子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2017-02-07

本研究の目的は、複雑性PTSDに対するSTAIR/NSTの日本における実施可能性、安全性、有効性を単群での前後比較試験にて検討することである。2019年度までに8例の登録を行った。予備試験の症例の治療経過については、学会や学術雑誌にて症例報告を行った。また本課題では、STAIR/NSTの治療マニュアルやマテリアル、複雑性PTSD診断評価ツールの整備も進めてきた。その中でICD-11に基づくPTSD/複雑性PTSDの診断面接(国際トラウマ面接;ITI)の翻訳を行った。また自記式評価尺度(国際トラウマ質問票;ITQ)を翻訳と逆翻訳を経て日本語版を作成し、学術雑誌にて全文公開した。
著者
米本 直裕 川島 義高 遠藤 香
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

自殺予防介入の普及と適応に関する研究ガイダンスを作成した。事例として、ゲートキーパー(GKT)研修について検討した。1つ目として、GKTの有用性について系統的レビューを行い、介入効果の限界と今後の研究の必要性を明らかにした。2つ目として、系統的レビューを行い、日本の自殺予防政策の発信とGKTの普及の関連と、ゲートキーパーの知見の統合や評価といった課題を明らかにした。
著者
河野 稔明
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

精神保健福祉法に基づき警察官などから通報された事例について、通報への対応や通報対象者への事後支援の振り返りと方針の検討を定期的に行っている、一政令指定都市の取り組みをベースにした研究である。記録の分析と取り扱う情報の検証を踏まえて、通報事例データベースの構築を目指す。これを活用することで、地域で精神保健の支援ニーズを抱えた人々に、自治体がより適切な支援を届けることが可能になると期待される。
著者
太田 深秀
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

水分子の拡散現象を利用して生体組織の性質を画像化する拡散強調画像は、超急性期脳梗塞を敏感に描出できることから1990年代後半に急速に臨床応用が進んだ。また、近年開発された拡散尖度画像は従来の指標と比較して微細構造変化を鋭敏に捉えることが可能であると考えられている。我々は健常被験者や大うつ病制障害患者、双極性障害患者を対象にこの拡散尖度画像を用いて精神疾患に特徴的な局所脳形態変化を明らかにした。また精神疾患モデルマウスを用いた研究として大うつ病性障害モデルラットを対象に [11C]PK11195を用いた検査を行い、うつ病モデル化前後での脳内炎症の差異をPETにより明らかにした。
著者
山田 光彦 斎藤 顕宜 古家 宏樹 山田 美佐
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

これまでに我々は、グルタミン酸神経伝達を抑制するリルゾールがラットの恐怖記憶の消去学習を促進することを報告した。本研究では、リルゾールの恐怖記憶の再固定化への影響を再曝露時間を区別した文脈的恐怖条件付け試験により検討した。その結果リルゾールは、消去学習促進作用と再固定化阻害作用を併せ持つことが明らかとなった。また、リルゾールの再固定化阻害作用には、背側海馬が関与することが明らかとなった。
著者
田中 英樹 竹島 正 (2013-2014) ZHAO XIANG HUA ZHAO. X.M ZHAO X.m
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年、日本の精神保健医療福祉政策は、従来の入院中心の精神医療から地域生活を支えるための地域精神保健医療へと転換しているところである。このような地域精神保健医療の充実は国際的な方向であるが、欧米の脱施設化過程で経験されているように、地域で生活する精神障害者に十分な支援が届かない場合、ホームレス状態に陥る可能性が出てくる。実際、精神障害者の地域ケアを政策課題として掲げている日本、中国、韓国においても精神疾患を持つホームレスの存在が確認され、克服すべき社会問題として浮上している。このような背景をもとに、本研究では欧米のホームレス支援の文献研究を踏まえ、東アジア諸国である日本、中国、韓国で展開されているホームレス支援の実態と課題を把握し、精神障害者のホームレス化の予防とホームレス状態からの脱却に向けた支援プログラムの検討を行った。「ホームレス」の定義は国によって異なり、欧米では「安定した住まいがない人」と広義に取らえられているが、日本、中国、韓国では一定の条件を満たす者に限られている。精神障害のあるホームレス支援においても、アメリカでは精神科病院やシェルターなどの通過施設から、恒久的な住宅支援である「ハウジング・ファースト」へと展開されているに比べ、日本、中国、韓国では医療中心や一時的問題解決の支援に止まる傾向があった。精神障害のあるホームレスには、「障害」「医療」「生活困窮」が相互に絡み合っていることから、一人暮らしをしてからも十分な支援が届かない場合、再度ホームレス状態に陥るリスクが高く、多職種による継続的な支援が欠かせない。精神障害者がホームレス状態から脱却し、安定した地域生活を継続するためには、①支援者との出会い、②恒久的な住まいの確保、③仲間(地域生活をしている元路上生活者)④地域住民の理解と受け入れ、⑤専門家による支援の継続性が不可欠であると思われる。
著者
伊藤 順一郎 福井 里江 坂田 増弘 山口 創生 種田 綾乃 相川 章子 伊佐 猛 市川 亮 伊藤 明美 大島 真弓 岡本 和子 黒木 紀子 坂本 麻依 佐竹 直子 佐藤 由美子 澤田 優美子 関根 理絵 富沢 明美 友保 快児 二宮 史織 久永 文恵 藤田 英親 松長 麻美 松谷 光太郎 村木 美香
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、共同意志決定 (SDM)を促進するツール(SHARE)を用いた包括的なSDMシステムの構築とその効果検証であった。SHAREは利用者のリカバリーゴール(希望する生活の実現に向けた目標)や自身の精神的健康にとって大切なこと、自身の状態を適切に医師に伝えることに焦点を当てたPCソフトウェアである。利用者は診察前にピアスタッフのサポートを受けながら自身の情報をSHAREに入力した。医師はSHAREの情報をもとに診察を進め、診察の最後にSDMを実施する。このSDMシステムは、臨床的なアウトカムに影響を及ぼすことはなかったが、患者と医師のコミュニケーションや関係性の向上に効果を示した。
著者
田島 美幸 佐渡 充洋 藤澤 大介 堀越 勝 大野 裕 横井 優磨 吉原 美沙紀 原 祐子 藤里 紘子 岩元 健一郎 石川 博康 岡田 佳詠
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、認知行動療法を活用した認知症の家族介護者向けの2つのプログラム(①集団CBT、②訪問看護師による個人CBT)を開発し有効性を検討した。【集団CBT】集団CBTプログラム(月1回90分、計5回)を実施したところ、75歳以下の介護者では、介護負担感、介護に対する否定的な感情において主効果が認められた(p<0.05)。【訪問看護師によるCBT】 訪問看護時に訪問看護師が実施できる個人CBTプログラム(1回30分、計11回)を開発した。また、介入の質を担保するために訪問看護師に対するCBTの教育体制(集団研修およびスーパービジョン)を整備した。現在、症例登録を継続中である。
著者
柏木 宏子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

SAPROF日本語版の予測妥当性と評価者間信頼性の後方視的コホート研究の結果を英文誌に論文発表した。対象は、2008年4月から2012年11月までに、国立精神・神経医療研究センター病院の医療観察法病棟に入院した対象者の中で、入院期間が1年以上の者とした。SAPROFは、入院後2週間の診療録、医療観察法鑑定書、生活環境調査書をもとに評価した。入院後6カ月間および1年間の暴力の発生の有無を診療録で調査した。この他、評価者間信頼性を調査するため、二人の評価者が30名の対象者を評価した。解析は、暴力の予測妥当性については、ROC曲線を、評価者間信頼性はICCにて解析した。結果は、95名が参加(男性83名)、診断は統合失調症圏が73.7%であった。対象行為(入院のきっかけとなった他害行為)は、殺人、傷害、放火の順で多かった。6カ月以内に、11名、1年間に17名の暴力が見られた。SAPROF日本語版の評価者間信頼性は、SAPROF総得点、内的要因、動機付け要因、外的要因、最終判断のそれぞれにおいて中等度から良好との結果が得られた。また、SAPROF日本語版のSAPROF総得点、内的要因、動機付け要因、外的要因、最終判断のそれぞれにおいて、6ヶ月後と12ヶ月後の暴力の発生がないことへの高い予測妥当性が得られた。本研究で得られた結果は、暴力のリスクアセスメントにおいて、本人の強みとなる部分、すなわち保護要因に着目することの妥当性が示されたとともに、海外との比較において重要な資料を提供できる。今後は、通院対象者や、刑務所、一般精神科などの別の集団におけるSAPROFの予測妥当性を確かめることが必要である。
著者
皆川 栄子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

睡眠-覚醒リズムの異常は多くの神経変性疾患に共通してしばしば出現する症状であり、従来、睡眠-覚醒の制御部位に神経変性が波及して出現すると考えられてきた。一方、近年の疫学研究からは睡眠障害が神経変性を増悪させる可能性が示唆されているが、患者特有の睡眠障害が神経変性疾患の脳病理に与える影響は未知である。本研究では神経変性疾患モデルマウスに患者特有の睡眠障害を誘発することに成功し、中途覚醒の回数とマウスの脳病理の重症度との間に有意な正の相関が見られることを明らかにした。
著者
井上 高良 井上 由紀子 浅見 淳子 寺川 洋平 江草 早紀 平賀 孔
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、生後間もないマウス大脳皮質の接線軸方向に沿ってユニークな発現様式を示すシナプス・細胞間接着分子カドヘリン遺伝子群に着目し、それら発現制御機構や領野形成に果たす役割を探索することから、これまで不明であった大脳皮質機能領野個々の発生に関わる細胞・分子機序に迫ることを主目的とした。その結果、生後1週間の短期間に視床からの入力やバレルIV層神経細胞自身の活動に依存してカドヘリンサブクラスの発現動態が精妙に調節され、各サブクラスのもつ選択的な接着特異性が動的かつ協同的に神経細胞体の配置や樹状突起の配向性を制御することによってバレル領野特異的な組織構築様式を表出することが明白となった。