著者
井之口 昭
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.7-10, 2012 (Released:2012-07-27)
参考文献数
18

味覚障害の診断の現状について概説した. 丁寧な問診, 特徴的な視診所見の取得が重要であるが, 味覚機能検査として電気味覚検査と濾紙ディスク検査が最も重要である. 電気味覚検査は味覚伝導路障害の診断, 予後判定に有効である. 濾紙ディスク検査は受容器型味覚障害の診断, 経過観察に適している. 詳細な味覚検査を行うと, 結果の評価において年齢, 性別, 喫煙習慣を考慮する必要がある. 電気味覚検査では60歳以上での閾値上昇を考慮する. 濾紙ディスク検査では年齢については今後のさらなる検討が必要である. 性差, 喫煙について重症度判定においては考慮せずともよいと考えている.
著者
井之口 昭 中島 俊之 宮崎 純二
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.87-90, 2008 (Released:2009-06-03)
参考文献数
4

嗅覚障害の診断には従来より静脈性嗅覚検査が用いられてきた. 検査は肘静脈から一定の手技で行うため, 再現性のある一定の匂い刺激になっていると考えられてきた. しかし, 実際に匂い強度を連続的に測定してみると必ずしも一定の匂い刺激ではなかった. 現在の実施方法では, 70%の例では匂い強度が1回だけピークを形成するパターンをとり, 残りの30%の例では複数回の強度ピークを形成することがわかった. そこで一定かつ再現性のある匂い刺激を模索するために注射液の量や注入時間を変化させて最適の注入方法を検討した. すると, アリナミン原液2mlを生理食塩水10mlに希釈し, 全体で12mlの液を40秒かけて注射する方法が全例で1回ピークパターンをとり, 最適の方法であることが判明した. 自覚的な匂い強度もガスセンサで測定した他覚的な匂い強度も原法とほぼ同じであった. 新注射法のもう1つのメリットとして血管痛の副作用が全くないことが挙げられる. アリナミン原液の強酸性が生理食塩水で薄められたためと思われる.嗅覚障害の治療にはステロイド点鼻療法が推奨されてきたが, その投薬コンプライアンスについてはほとんど関心をもたれてこなかった. 特に老人や頸椎疾患患者では懸垂頭位をとることは不可能である. そこで安楽かつ簡便に行える点鼻頭位を検討するため, 屍体頭部をさまざまな角度に倒立させて点鼻液が鼻内のどの部位に到達するか実験を行った. すると懸垂頭位では後屈角を90度ないし100度にしないと嗅裂に点鼻液が到達しないことがわかった. 懸垂頭位で点鼻を行う場合は鼻橋に沿って点鼻すれば後屈角80度でも嗅部に液が到達することもわかった. より患者に負担が少なく, 確実に嗅裂に点鼻液が到達する姿勢として枕なし側臥位を考案した. この頭位・姿勢で点鼻することにより簡便・安楽に投薬コンプライアンスを良好に保つことができた. 嗅覚障害治療にあたっては詳細に点鼻姿勢を指導することが重要である.
著者
宮崎 純二 松下 英友 山田 昇一郎 井之口 昭
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.697-705, 2004-08-01 (Released:2011-10-07)
参考文献数
17
被引用文献数
2 3

In order to obtain a sufficient effect when instilling steroid nasal drops in patients with olfactory dysfunction, the medication must reach and be deposited into the olfactory cleft. Some head positions, such as head-down-and-backwards position, are recommended to instill drops. These positions are, however, known to be uncomfortable and can lead to poor patient compliance. Moreover, there is no clear evidence showing that nasal drops can be delivered into the olfactory cleft in these positions.In this study, we reviewed these positions by utilizing a cadaver head and performing a gravitational flow study using colored nasal drops. The results showed that when using these positions, instilled nasal drops did not reach the olfactory cleft except in limited trials. With the above-mentioned negative points in mind, we devised a new head position, on the side, head down, and found it to be both effective and comfortable for delivering nasal drops into the olfactory cleft.