著者
金村 在哲 西川 哲夫 松原 伸明 日野 高睦 冨田 佳孝 三谷 誠 原田 俊彦 井口 哲弘
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.211-214, 2000-02-25

抄録: 潰瘍性大腸炎に破壊性の股関節炎を合併した1例を経験した.症例は33歳の女性で,12歳時より腹痛と下痢を主訴に潰瘍性大腸炎の診断にて加療を受けていたが,翌年より腹部症状の増悪時には膝,肘および股関節の移動性,一過性の疼痛を自覚していた.31歳時より右股関節痛が増強し,保存的治療を受けたが症状の軽快はなく,X線像上も関節破壊の進行を認めたため,右股関節に対して双極性人工骨頭置換術を施行した.術後経過は良好で疼痛は消失している. 潰瘍性大腸炎では種々の腸管外合併症が認められているが,その中でも脊椎および関節症状は血清反応陰性脊椎関節症の範疇に属している.その特徴は急性に発症し,一過性,移動性に生じるびらん性変化を伴わない非破壊性の関節炎とされている.自験例では破壊性の股関節炎を合併し,観血的治療にまで至った稀な1例であり,人工骨頭置換術を施行し良好な結果を得た.
著者
井口 哲弘 笠原 孝一 金村 在哲
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.85-91, 2005 (Released:2007-12-14)
参考文献数
21

腰痛に対する薬物療法(特にNSAIDs,筋弛緩薬,抗うつ薬)のEBMについてCochrane Reviewを中心に調査した.まずNSAIDsは急性腰痛に対して効果があるが消化器系合併症が問題となる.NSAIDs間の効果に違いはなく,鎮痛剤より効果があるかは中等度のエビデンスがあった.慢性腰痛に対する効果は証明されていないが,これは絶対的なRCT量の不足による可能性が強い.筋弛緩薬は急性腰痛に対して強いエビデンスがあるが,長期効果は証明されていない.検討された筋弛緩薬には非ベンゾジアゼピン系薬剤が多く,中枢神経系の副作用はプラセボの約2倍であった.慢性腰痛に対する抗うつ薬はプラセボと比較して,疼痛は軽減させるが日常生活の改善度は差がなく,抗うつ薬使用群は有意に眠気,口内乾燥感,フラツキなどの副作用が多い結果であった.欧米と本邦では薬剤そのものや,その分類法が異なり国際的な分類の統一と本邦独自のメタアナリシスが必要と思われた.
著者
日野 高睦 井口 哲弘 原田 俊彦 水野 耕作
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-20, 2000-12-20

目的 : 五十肩の病態を解明するためその器質的ならびに機能的変化をMRIを用いて評価し, 臨床症状と比較検討することである。方法 : 対象は38例42肩 (40〜69歳) であり, ほぼ同様の症状を呈する腱板不全断裂患者24例24肩 (40〜70歳) を対照群とした。MRI像にて肩関節周囲の浸出液貯留像, 腱板の輝度変化と厚み, 関節症性変化の有無につき評価し, これらの所見と疼痛の性状, 関節可動域, JOAスコアなどの臨床症状との関連を検討した。結果 : 五十肩に特有な器質的変化は見いだせなかったが, 異常所見としては関節内外の浸出液貯留像がみられた。また発病初期には上腕二頭筋長頭腱腱鞘周囲の貯留像が多くみられた。そして腋窩陥凹部に貯留のある群は有意に夜間痛を多く訴えていた。しかし腱板の輝度変化や厚さ, 肩峰下面の骨疎, 肩鎖関節の関節症性変化, 上腕骨骨頭の骨嚢腫像は臨床症状となんら関連がなかった。また腱板不全断裂群との比較では肩甲上腕関節内での浸出液貯留像はほぼ同様にみられたが, 肩峰下滑液包での貯留は有意に少なかった。結論 : 腋窩陥凹部での浸出液貯留は, 関節内圧の上昇を来たし, 五十肩の特徴である夜間痛の原因となっていると考えられた。また上腕二頭筋長頭腱腱鞘周囲の貯留は初期に多く見られ, 五十肩の初発像である可能性がある。
著者
金村 在哲 在哲 佐藤 啓三 栗原 章 井口 哲弘 笠原 孝一 伊藤 研二郎
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.146-152, 2002
被引用文献数
2 1

体幹の回旋運動を考慮した挙上運搬動作を模倣し,表面筋電計を用いて体幹筋の筋活動量を計測した.また同様の動作を腰部固定帯を装着して行い,その有用性を検討した.対象は健常成人男性20名で,各対象の膝の位置から6.8 kgの負荷重量を体幹を回旋させ,側方へ50 cm,肩の高さまで挙上させた.この動作を左右10回ずつ行い,左右の脊柱起立筋と腹斜筋の筋活動量を表面筋電計を用いて計測した.1回の動作における左右の脊柱起立筋と腹斜筋の平均筋活動量を計算し,%MVCで各群間を比較した.脊柱起立筋と腹斜筋間では有意に脊柱起立筋の%MVCが大きく,平均4.6倍の筋活動量を示した.また腰部固定帯の装着により%MVCは有意に小さくなり,脊柱起立筋では14.6%,腹斜筋では18.9%筋活動量が減少した.回旋を加えた挙上運搬動作でも脊柱起立筋に対する負荷が大きく,腰部固定帯の装着は,その負荷を軽減させる効果があった.
著者
陳 隆明 井口 哲弘 三枝 康宏 松原 司 廣畑 和志
出版者
Japanese Society for Joint Diseases
雑誌
日本リウマチ・関節外科学会雑誌 (ISSN:02873214)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.61-70, 1991-06-20 (Released:2010-10-07)
参考文献数
17

RA joints whose bone scan was positive are thought to have a subclinical abnormality even if there aren't any symptoms. Two hundred joints in 45 patients with positive 99m Tc -HMDP bone scan without clinical signs except in small joints in hands and feet were followed for 12 to 45 months (mean: 22 months) . The age of the patients ranged from 24 to 76 (average : 57) and they had suffered from RA from 4 to 30 years (mean: 14) .Clinical signs such as pain and/or swelling appeared in 88 out of the 200 joints during the follow-up time. The new symptoms appeared frequently in the knee joint. There was no significant difference in the occurrence of the symptoms, however, between loaded and non-loaded joints. Those new symptoms were observed within 18 months in 79 % out of 88 joints.It is therefore considered that bone scans are an useful means for prospective detection of inflammatory joints. Careful observation is necessary for at least 18 months for RA joints with positive scintigraphic findings.