著者
村津 裕嗣 水野 耕作
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.91-94, 1989-11-01 (Released:2012-11-20)
参考文献数
7

We have experienced two cases of entrapmentneuropathy of the suprascapular nerve in three accessory nerve palsy.CASES. Three patients were refered to our clinic because of a dropped shouldor, inability to abduct the shoulder, and wasting of the upper trapezius. Among those, two cases showed moderate to severe pain in the shoulder region which was inproportionally strong as part of the symptoms of accessory nerve palsy.Case 1: A 28-year-old woman had a biopsy of the neck which was followed by increasing pain in the shoulder region. Five menths after the biopsy, an abduction support was employed to prevent dropping of the shoulder girdle. The symptoms gradually alleviated within five months after the abduction support had been applied.Case 2: A biopsy in the neck of a 23-year-old woman was followed by severe pain in the shoulder region. Five months after the biopsy, an accessory nerve was sutured, and the suprascapular transverse ligament was excised to decompress the suprascapular nerve. Five days after the operation, the pain in the shoulder was decreased dramatically.Discussion: On the basis of our experiences, entrapment neuropathy of the suprascapular nerve occurs at the scapular notch, having been presumably caused by insufficiency of the upper trapezius due to accessory nerve palsy. We conclude that this is one of the pathogenesis of the unexplained pain in the shoulder region caused by accessory nerve palsy.
著者
日野 高睦 井口 哲弘 原田 俊彦 水野 耕作
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-20, 2000-12-20

目的 : 五十肩の病態を解明するためその器質的ならびに機能的変化をMRIを用いて評価し, 臨床症状と比較検討することである。方法 : 対象は38例42肩 (40〜69歳) であり, ほぼ同様の症状を呈する腱板不全断裂患者24例24肩 (40〜70歳) を対照群とした。MRI像にて肩関節周囲の浸出液貯留像, 腱板の輝度変化と厚み, 関節症性変化の有無につき評価し, これらの所見と疼痛の性状, 関節可動域, JOAスコアなどの臨床症状との関連を検討した。結果 : 五十肩に特有な器質的変化は見いだせなかったが, 異常所見としては関節内外の浸出液貯留像がみられた。また発病初期には上腕二頭筋長頭腱腱鞘周囲の貯留像が多くみられた。そして腋窩陥凹部に貯留のある群は有意に夜間痛を多く訴えていた。しかし腱板の輝度変化や厚さ, 肩峰下面の骨疎, 肩鎖関節の関節症性変化, 上腕骨骨頭の骨嚢腫像は臨床症状となんら関連がなかった。また腱板不全断裂群との比較では肩甲上腕関節内での浸出液貯留像はほぼ同様にみられたが, 肩峰下滑液包での貯留は有意に少なかった。結論 : 腋窩陥凹部での浸出液貯留は, 関節内圧の上昇を来たし, 五十肩の特徴である夜間痛の原因となっていると考えられた。また上腕二頭筋長頭腱腱鞘周囲の貯留は初期に多く見られ, 五十肩の初発像である可能性がある。
著者
三枝 康宏 水野 耕作
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

骨軟骨移植の動物実験として、日本白色家兎を用いた関節軟骨損傷のモデルを作成し、肋軟骨のみの移植(軟骨移植)と肋骨肋軟骨連結部の移植(骨付き軟骨移植)を行った。移植後3、6、12、24、36、48週で摘出し、ヘマトキシリン-エオジン染色、サフラニン-O染色およびI型、II型コラーゲンの染色を行い、両者を比較検討した。移植後48週において、肋軟骨移植では移植軟骨表面は糜爛、不整等がみられ、間質にも亀裂を生じており、軟骨細胞が広範に壊死、消失している部分もあった。またI型コラーゲンに染色するなど関節軟骨とは異なる性状を示した。これに対し、肋骨肋軟骨連結部移植では移植後48週までの長期に亙って軟骨表面は糜爛等が少なく平滑であり、間質の亀裂や軟骨細胞の壊死もほとんど認めなかった。またII型コラーゲンにも染色性があり、関節軟骨により近い性状と思われた。肋骨肋軟骨連結部移植では軟骨部分を薄くすることが可能であり、また肋骨部分と海綿骨との間で移植後早期に骨癒合し血行の速やかな再開が期待できるため、軟骨表面の糜爛や間質の亀裂、細胞壊死等の変性所見が少なく、良好に生着していると考えられた。また肋軟骨は硝子軟骨でありながら関節軟骨と異なりI型コラーゲンが主成分であるが、肋骨近傍ではII型コラーゲンにも染色されることからより関節軟骨に近いと思われ、この点でも関節軟骨損傷に対する移植材料として有利であると考えられた。臨床的には軟骨欠損が比較的狭く、損傷が軟骨下骨にまで及ぶ離断性骨軟骨炎や特発性内顆骨壊死、骨軟骨骨折等の治療に応用が可能と思われた。