著者
井口 福一郎 谷口 善知 草野 純子 髙橋 由佳 村井 紀彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.8, pp.1108-1114, 2014-08-20 (Released:2014-10-07)
参考文献数
14
被引用文献数
5

唾液腺導管癌は予後不良な唾液腺悪性腫瘍であり, 遠隔転移再発後の有効な治療法はこれまで知られていなかった. HER2 過剰発現する本腫瘍へトラスツズマブを含む分子標的治療が著効した症例を経験したので報告する. 症例は69歳男性, 原発巣と所属リンパ節への手術, 術後照射の初回治療から半年後に肝, 椎骨への遠隔転移を来した. パクリタキセルとトラスツズマブによる化学療法を行ったところ, 転移巣は肝, 椎骨ともに著明に縮小した. パクリタキセルによる四肢の末梢神経障害が認められた後はトラスツズマブのみの投与を続けているが, 心障害は生じていない. 遠隔転移から3年経過するが再増大は認められず, 在宅で日常生活を送っている.