著者
村井 紀彦 谷口 善知 高橋 由佳 安原 裕美子 窪島 史子 楯谷 一郎
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.615-619, 2011-07-20
参考文献数
16
被引用文献数
5

目的: 2004年に日本臨床細胞学会において提唱された, 唾液腺細胞診に関する新報告様式の当科での運用状況, 有用性と問題点を検討すること. 対象と方法: 2006年から2010年までの4年間に, 術前穿刺吸引細胞診と外科的切除を行った44例を対象とし, カルテをレトロスペクティブに調査し, 細胞診の結果, 病理組織診断等を記録した. 結果: 耳下腺原発が33例, 顎下腺原発は11例, 悪性は8例, 良性は36例であった. 良性例のうちの2例は検体不適正であり, また, 良性例のうちの4例と悪性例のうちの1例は「鑑別困難」と判定された. 真陽性は3例, 真陰性は30例で, 偽陰性が4例あり, 偽陽性例はなかった. 感度, 特異度, 正診率はそれぞれ42.9% (4/7), 100% (30/30), 89.2% (34/37) であった. 精度管理指標については, 検体不適正率は4.5% (2/44), 良悪性鑑別困難率は11.4% (5/44), 悪性疑い例の悪性率は100% (2/2) であった. 結論: 新報告様式の使用により, パパニコロウ分類の報告結果に対する臨床医の解釈の曖昧さが減少し, 臨床的に有意義であると考えられた.
著者
井口 福一郎 谷口 善知 草野 純子 髙橋 由佳 村井 紀彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.8, pp.1108-1114, 2014-08-20 (Released:2014-10-07)
参考文献数
14
被引用文献数
5

唾液腺導管癌は予後不良な唾液腺悪性腫瘍であり, 遠隔転移再発後の有効な治療法はこれまで知られていなかった. HER2 過剰発現する本腫瘍へトラスツズマブを含む分子標的治療が著効した症例を経験したので報告する. 症例は69歳男性, 原発巣と所属リンパ節への手術, 術後照射の初回治療から半年後に肝, 椎骨への遠隔転移を来した. パクリタキセルとトラスツズマブによる化学療法を行ったところ, 転移巣は肝, 椎骨ともに著明に縮小した. パクリタキセルによる四肢の末梢神経障害が認められた後はトラスツズマブのみの投与を続けているが, 心障害は生じていない. 遠隔転移から3年経過するが再増大は認められず, 在宅で日常生活を送っている.