著者
井川 克彦 長谷部 弘 阿部 勇 奥村 栄邦 西川 武臣 小林 延人 高橋 未沙 土金 師子
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

江戸後期において上田小県地方は生糸主産地の一つであり、その生糸は前橋の生糸市に集荷され、桐生などの絹織物の原料となった。横浜開港後にその生糸生産はさらに拡大して明治を迎えたが、この地方では器械製糸業がなかなか勃興しなかった。上田商人や生糸流通構造の実態を明らかにすることに努めた結果、養蚕と結合した農家小商品生産の部厚い存在、買い集める上田生糸商人の資本基盤の小ささを見通すことができた。
著者
吉良 芳恵 井川 克彦 村井 早苗 久保田 文次 斎藤 聖二 櫻井 良樹 久保田 博子
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1、宇都宮恭三氏から拝借した宇都宮太郎(陸軍大将)の資料(日記15冊と書類約1700点、書簡約4600通、写真約300点等)をもとに、宇都宮太郎関係資料研究会を立ち上げ、平成15年度から1点毎の資料整理を行って、書類と書簡の目録・データベースを作成した。2、全日記の解読・翻刻(入力作業)を行い、書類や書簡と照合しながらその内容の分析を行った。その過程で、中国での情報収集活動をもとに、宇都宮が陸軍のアジア政策を立案し、中国革命への種々の関与・工作を行ったこと、諜報活動資金を陸軍機密費だけでなく岩崎久弥からも得ていたこと、二個師団増設問題で妥協工作を行ったことなど、新しい歴史事実が明らかとなった。中でも、朝鮮軍司令官時代の3・1独立運動時の対応(堤岩里事件等)や、「武断政治」的統治策を批判して「文化政治」的懐柔工作を行ったことなどは、従来知られていなかった事実でもあり、日本の植民地研究に大きく寄与することになるだろう。また陸軍中央の人事についても具体的背景が判明したことは収穫であった。3、書簡の一部(特に上原勇作書簡)の解読・翻刻を行い、「長州閥」と「反長州閥」との闘いの実態を明らかにすることができた。4、日露戦争期における英国公使館付武官としての役目や行動を、英国調査や書類の解読で明らかにすることができた。特に、英国の新聞に英国陸軍軍制改革案を投稿したことや、明石工作などの対露情報工作資金の実態が判明したことは、今後の日露戦争研究に寄与することになるだろう。5、佐賀県での調査により、宇都宮太郎の父の切腹事件が幕末維新期の佐賀藩の藩政改革に関係していることを確認できた。6、書類中の任命関係資料により、人物辞典等の誤りを訂正することができた。7、平成17年2月26日に日本女子大学で国際シンポジウム「宇都宮太郎関係資料から見た近代日本と東アジア」を開催し、招聘した英国や中国の研究者等と共に、宇都宮太郎関係資料の歴史的価値を、そのアジア認識を含めて、広く学会に紹介した。8、岩波書店から2007年4、7、11月に3巻本として宇都宮太郎日記を刊行することになった。