著者
井川 日出男 IKAWA Hideo
出版者
東京大学宇宙航空研究所
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1_C, pp.663-687, 1980-03

スペース・シヤトルのデビューに依って,将来の科学,商業,並びに軍事分野にわたる宇宙利用の研究と応用に画期的な変化がもたらされるであろう.再使用可能な宇宙運航船は,従来の使い捨てブースターで運搬できなかった容積及び重量のペイロードを打ち上げることに依り,低コストの宇宙運営を行うことができる.スペース・シヤトルの重要な点は,有人・右翼のオービター機の開発にある.使命飛行中,オービター機は,垂直打ち上げブースター,宇宙衛星,及び極超音速滑空機として活躍する.特に航空操縦性能を発揮し,極超音達哉の役割りを果すオービター機として,過去に存在しなかった唯一の宇宙船である.従って,オービター機は,降下中,弾道軌道を離れる他の着陸点を選ぶことができ,飛行機の如く着陸する.オービター機の開発に当り,最低100回の再使用及び着陸後二週間以内に再飛行準備を整えることが,二つの必須条件である.オービター機は,大気圏突入の際と極超音速飛行中に生じる苛酷な空力加熱環境に再度曝れることになる.従って,前述の条件に添う為に,オービター機のアルミ構造は完全に再使用可能な表面防熱装置で被覆され,苛酷な熱環境から保護されている.この防熱装置開発の大躍進に依って,今後,経済的宇宙運営及び日常的な宇宙利用が可能とされる.