著者
木下 英樹 井本 瞬 須田 義人 石田 光晴
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.171-176, 2011 (Released:2014-03-15)
参考文献数
15

プロバイオティック乳酸菌の単離は現在でも積極的に行われており,効率的な方法が望まれる。本研究では MRS 寒天培地と mLBS 寒天培地を用いて乳酸桿菌を単離し,その選択性について比較した。単離試験の結果,乳酸桿菌の検出率は,MRS 寒天培地では59.4%,mLBS 寒天培地では75.0%であった。また,MRS 寒天培地で最も多く単離された Lb. sakei は,mLBS 寒天培地では 1 菌株のみしか生育できず,Lb. curvatus および Lb. rossiae は mLBS 寒天培地では全く生育できなかった。 L. plantarum, Lb. coryniformis, Lb. rhamnosus, Lb. gasseri, Lb. brevis, Lb. fermentum, Lb. alimentarius, Lb. paracasei および Lb. casei は,単離した全ての菌株が mLBS 寒天培地に良好な生育をみせた。 Lactobacillus 属以外の乳酸菌では,Leuconostoc 属,Weissella 属,Pediococcus 属が検出されたが,mLBS 寒天培地に生育できたのは Pediococcus 属だけだった。このように MRS 寒天培地は選択性が低く乳酸菌以外の様々な細菌も分離され,mLBS 寒天培地は選択性が高く乳酸桿菌でも生育できない菌株が存在することが明らかとなり,目的に応じた培地の選択が必要であると考えられた。