著者
石田 光晴 小田島 恵美 池田 昭七 武田 武雄
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.20-26, 2001-01-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
14
被引用文献数
11 6

本学で飼育されたニホンジカ肉および市販牛肉のコレステロール含量と脂肪酸組成を比較した.ニホンジカ(ホンシュウシカ)は去勢雄4頭,平均26ヵ月齢であった.筋肉脂質試料として,肩肉(上腕二頭筋),もも肉(大腿三頭筋),ロース(胸最長筋)を必要量採取した.また,市販の和牛,国産牛および輸入牛肉ロースを4個体ずつ購入した.各食肉の全脂質を抽出し,コレステロールおよび中性脂質と極性脂質の脂肪酸組成を測定した.鹿肉の全脂質割合は1.50~2.67%,牛肉ロースは3.34~18.63%であった.鹿肉のコレステロール含量は100gあたり31.85~35.15mg,牛肉ロースでは39.20~72.75mgであった.全脂質とコレステロール含量の鹿肉の部位による差はなかった.鹿肉ロースと牛肉ロースを比較すると,牛肉の方が脂肪含量と共にコレステロール含量も高く,和牛はいずれも2倍以上高く有意差(P<0.01)が認められた.中性脂質の主な脂肪酸組成は鹿肉,牛肉ともパルミチン酸,パルミトオレイン酸,ステアリン酸およびオレイン酸であった.鹿肉と牛肉を比較すると,鹿肉ではパルミチン酸とパルミトオレイン酸が高く(P<0.01),オレイン酸が低かった(P<0.01).極性脂質脂肪酸では,鹿肉,牛肉共にパルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸およびアラキドン酸が主であった.鹿肉のパルミチン酸とオレイン酸は牛肉よりも低かった(P<0.01).中性脂質と極性脂質を構成する脂肪酸の重量比(N/P比)は,鹿肉が3.51~4.69,牛肉は22.38~153.72と,鹿肉に含まれる極性脂質の割合が明らかに高い(P<0.01)ことが認められた.鹿肉のP/S比は0.22~0.27,牛肉では0.03~0.06, n-6/n-3比は,鹿肉1.88~4.28,牛肉12.05~56.91となり,いずれも有意差(P<0.01)が認められた.すなわち,鹿肉中のn-3系脂肪酸の割合が牛肉よりも非常に高いことが示された.
著者
井上 達志 林 佳美 石田 光晴
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.3, no.Supplement, pp.18-19, 2000-06-30 (Released:2012-09-24)
参考文献数
3

市販ドライキャットフードに鰹節を20%および40%添加してネコに給与し,無添加のフードあるいは猫下部尿路疾患(FLUTD)対応フードとストラバイト尿石形成の及ぼす影響について比較した。塩基過剰度(BE) は鰹節20%の添加でFLUTD対応フードと同等でありこれらを摂取したネコでは無添加の場合と比べて尿中固形分およびストラバイト結晶が有意に少なくなった。
著者
木下 英樹 井本 瞬 須田 義人 石田 光晴
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.171-176, 2011 (Released:2014-03-15)
参考文献数
15

プロバイオティック乳酸菌の単離は現在でも積極的に行われており,効率的な方法が望まれる。本研究では MRS 寒天培地と mLBS 寒天培地を用いて乳酸桿菌を単離し,その選択性について比較した。単離試験の結果,乳酸桿菌の検出率は,MRS 寒天培地では59.4%,mLBS 寒天培地では75.0%であった。また,MRS 寒天培地で最も多く単離された Lb. sakei は,mLBS 寒天培地では 1 菌株のみしか生育できず,Lb. curvatus および Lb. rossiae は mLBS 寒天培地では全く生育できなかった。 L. plantarum, Lb. coryniformis, Lb. rhamnosus, Lb. gasseri, Lb. brevis, Lb. fermentum, Lb. alimentarius, Lb. paracasei および Lb. casei は,単離した全ての菌株が mLBS 寒天培地に良好な生育をみせた。 Lactobacillus 属以外の乳酸菌では,Leuconostoc 属,Weissella 属,Pediococcus 属が検出されたが,mLBS 寒天培地に生育できたのは Pediococcus 属だけだった。このように MRS 寒天培地は選択性が低く乳酸菌以外の様々な細菌も分離され,mLBS 寒天培地は選択性が高く乳酸桿菌でも生育できない菌株が存在することが明らかとなり,目的に応じた培地の選択が必要であると考えられた。
著者
石田 光晴 武田 武雄 斎藤 孝夫 鹿野 裕志 松本 忠 高橋 功
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.496-501, 1988
被引用文献数
4 2

黒毛和種去勢牛8頭を用いて,屠殺前1年間の肥育期間中における皮下脂肪をバイオプシーによって採取し,その脂肪酸組成を調査した.供試牛は4頭ずつA,B2群にわけ,A群は主に濃厚飼料を多給,B群では濃厚飼料と稲ホールクロップサイレージを給与し,飼料による差を検討した.さらに屠殺後の皮下脂肪,筋肉間脂肪および腎臓周囲脂肪の脂肪酸組成を比較した.バイオプシーによる皮下脂肪の脂肪酸組成は,肥育期間中徐々に全飽和脂肪酸の割合が増加し,試料採取開始から最終時期までに8-10%程度増加した.季節的には,寒い時期の12月から2月にかけて,飽和脂肪酸のパルミチン酸とステアリン酸の割合が低くなり,不飽和脂肪酸のパルミトオレイン酸とオレイン酸の割合が高くなった.5月から10月の暖かい時期はその逆の傾向がみられた.飼料別では,A群はB群と比較して,全不飽和脂肪酸の割合は肥育期間中約5%高い値を示したが,飼料の差異は脂肪酸組成に有意な差を示さなかった.この傾向は,屠殺後の各蓄積脂肪においても同様であった.部位別では,体表部に近い皮下脂肪から深部の腎臓周囲脂肪にかけて,全不飽和脂肪酸の割合が減少し,部位間で有意差が得られた.また,皮下脂肪の腹側と背中側では,背中側の方が不飽和脂肪酸の割合がやや高かった.