著者
井村 岳男
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.49-53, 2019-05-31 (Released:2019-09-01)
参考文献数
19

露地ナスに発生するミナミキイロアザミウマの土着天敵であるヒメハナカメムシ類に対する9種殺虫剤の圃場影響を調査した。ニジュウヤホシテントウの防除薬剤では,メタフルミゾンは影響が小さかったが,インドキサカルブは処理1週間後以降に軽微な影響があった。ナミハダニ黄緑型の防除薬剤では,ピフルブミド,ミルベメクチン,スピロテトラマトのいずれも影響が無かった。アオクサカメムシの防除薬剤であるアセタミプリドとジノテフラン,並びにミナミキイロアザミウマの防除薬剤であるエマメクチン安息香酸塩とフロメトキンは,処理直後にヒメハナカメムシ類が急減したが,2週間後には無処理の 1/3~1/2 程度まで密度が回復した。これらの結果から,露地ナスで使用するニジュウヤホシテントウの選択性殺虫剤としてメタフルミゾンが,ナミハダニ黄緑型の選択性殺虫剤としてピフルブミド,ミルベメクチン及びスピロテトラマトが適していると考えられた。また,アオクサカメムシの防除にアセタミプリドまたはジノテフランを使用するとヒメハナカメムシ類が減少するので,エマメクチン安息香酸塩またはフロメトキンを同時に散布することで,ヒメハナカメムシ類の密度が回復するまでの2週間程度の間,ミナミキイロアザミウマを抑制するのが良いと考えられた。
著者
井村 岳男
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.21-25, 2020-05-31 (Released:2020-09-01)
参考文献数
12
被引用文献数
2

奈良県の露地ナス圃場から採集したタバコノミハムシ成虫に対し,31種の殺虫剤について常用濃度での殺虫効果を調査した。その結果,効果が認められた殺虫剤は,アセフェート,MEP,ペルメトリン,エトフェンプロックス,ビフェントリン,イミダクロプリド,アセタミプリド,ジノテフラン,クロチアニジン,スルホキサフロル,スピノサド,クロルフェナピル,インドキサカルブ,メタフルミゾン,シアントラニリプロールおよびフルキサメタミドだった。露地ナス圃場では,5回の成虫発生ピークが認められ,年4世代を経過していると考えられた。また,ナス株内において成虫は最下位葉に最も多く,慣行の栽培管理で実施される下葉のかき取りによる耕種的防除ができる可能性が示唆された。
著者
井村 岳男 玉井 喜文 鳥居 名実子
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.173-174, 2020-05-31 (Released:2020-09-01)
参考文献数
8

Nine insecticides were used as treatments against cucumber moth larvae on cucumber leaves. At three days after treatment, all insecticides were found to have high toxicity at commercial concentration, but flubenziamide, chrorantraniliprol, and acetamiprid were found to have low toxicity at 1/10 of commercial concentration. These results suggest that cucumber moths exhibit low susceptibility to two diamides.
著者
井村 岳男
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1-6, 2011 (Released:2011-09-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

イチゴハナゾウムシによる春期の蕾被害の発生状況を,奈良県の促成イチゴ栽培施設とその周辺の野生寄主植物において調査した。越冬成虫は3月下旬から4月上旬に活動を開始し,まず野生寄主のクサイチゴを加害した。その2週間後の4月上旬から中旬に施設内のイチゴへの加害が始まった。4月中旬から下旬にノイバラの着蕾が始まるとこれも加害し,異なる寄主植物を着蕾時期に応じて順次利用していた。施設内のイチゴにおける幼虫発生時期は,野外のクサイチゴよりも早かった。また,イチゴにおける蛹の初確認時期から,第1世代成虫の発生時期は少なくとも4月下旬から5月上旬か,それよりも早いと推定された。イチゴにおける被害密度は年次間差が大きかったが,その原因は不明だった。本種成虫に対する殺虫剤の効果を簡易な室内試験で調査したところ,マラソン乳剤とチアクロプリド水和剤,スピノサド水和剤の効果が高かった。
著者
徳田 誠 湯川 淳一 井村 岳男 阿部 芳久 Keith M. Harris
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.185-188, 2009-11-25 (Released:2009-12-16)
参考文献数
26
被引用文献数
5 8

In June 2005, an unidentified species of Dasineura (Diptera: Cecidomyiidae) that induced leaf-fold galls on cultivated roses was found in a greenhouse in Heguri, Nara Prefecture, Japan. Similar Dasineura species have been known to occur in Japan on two wild roses, Rosa multifolia and R. rugosa. In Europe, rose leaf midge, Dasineura rosae, induces leaf-fold galls on both cultivated and wild roses. In order to confirm the phylogenetic relationship among Rosa-associated Dasineura species, we analyzed a partial region of the mitochondrial DNA cytochrome oxidase subunit I (676 bp) gene. The nucleotide sequence of the Dasineura species collected from cultivated roses in Nara was identical to that of gall midges that induced leaf-fold galls on wild R. multiflora in Nara and Kyoto Prefectures, Japan. However, D. rosae and Dasineura sp., which are associated with R. rugosa, were phylogenetically distinct from them. This indicates that the Dasineura sp. associated with wild R. multiflora has invaded the greenhouse in Nara Prefecture and infested the cultivated roses.