- 著者
-
徳田 誠
湯川 淳一
- 出版者
- 九州病害虫研究会
- 雑誌
- 九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, pp.77-81, 2004-11-10 (Released:2009-05-22)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
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3
5
日本各地の土耕栽培施設バラにおいて,ハオレ状のゴールを形成するタマバエ科害虫(以下,バラハオレタマバエ)が発生した。本種が土着種か侵入種かを検討するため,終齢幼虫の標本を用いて属の同定を行ったところ,Contarinia属の一種であると判明した。したがって,欧米において栽培バラにハオレ状のゴールを形成する害虫として,古くから知られているRose leaf midge,Dasineura rosae(Bremi)とは,上族レベルで異なる別種であると判明した。また,米国においてバラのハオレ状ゴールから採集されているContarinia sp.とも形態的に異なっており,別種であると判断された。国内で,バラ属植物にハオレ状ゴールを形成するノイバラハオレタマバエ,ハマナスハオレタマバエは,いずれもDasineura属の一種であると同定された。したがって,本研究においては,バラハオレタマバエが侵入種であるか土着種であるかは解明できなかった。本種のより詳細な同定を行うためには,今後,本種が多食性であるという可能性も視野に入れ,国内でバラ属以外の植物を寄主としているContarinia属との比較を行う必要がある。また,外国産の種も含めたContarinia属のより包括的な分類学的研究が必要である。さらに,バラハオレタマバエに対する防除手段を検討するため,本種の発生生態および分布拡大経路に関しても研究を行う必要がある。