- 著者
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エクストン マテュー・
井浦 吉彦
- 出版者
- 日本武道学会
- 雑誌
- 武道学研究 (ISSN:02879700)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.3, pp.24-34, 1991
本研究は,柔道の投技のうち巴投を採り上げ,基本的施技方法と応用的施技方法で体重の異なる3名の相手を投げた場合の動作を,映像と圧電式加速度計を用いて分析し,柔道の投技のメカニズムを明らかにすることを目的とした。<br>実験は1987年1月,イギリスにおいて行い,映像と圧電式加速度計から異なる方法で施技される巴投の動作中の重心位置,慣性モーメント,角変位,角速度,角運動量を求め,比較検討した。得られた結果は下記の通りである。<br>1.基本的巴投の施技中における3名の受の重心移動は,ほぼ同様の傾向を示した。<br>2.基本的巴投の施技中における3名の受の慣性モーメントにおいて,軽量及び中量の受は同じ傾向を示したが,重量の受は,異なる傾向を示した。また,最高値は重量,中量,軽量の1順であり,慣性モーメントが体重に比例することを裏付けた。<br>3.基本的巴投の施技中における3名の受の角速度では,何れも2層曲線を形成するという点では一致したが,時間的変化及び値に違いがみられた。<br>4.基本的巴投の施技中における取の角運動量は,いわゆる「つくり」の局面で最小を示し,「掛け」の局面の直後で最大を示した。<br>5.中量の受における角速度の比較では,基本的巴投に比べ,相手を急激に引く動作を伴う応用的巴投に著しい角速度変化及び角速度の増加による施技時間の短縮がみられた。<br>6.圧電式加速度計による比較では,基本的巴投及び応用的巴投ともほぼ同様な傾向を示したものの,取の動作中の「つくり」の局面において,基本的巴投では相手を引くと同時に脚の屈曲がみられるが,応用的巴投では相手を引いた後暫くしてから脚の屈曲がみられた。