著者
羽地 俊樹 佐藤 大介 仁木 創太 平田 岳史
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.223-238, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
69
被引用文献数
1

山陰地方の中新統堆積盆地の成因の特定に向けて,本論は兵庫県北西部の但馬御火浦地域の中新統八鹿層と基盤の境界部周辺の調査研究を行った.八鹿層の軽石火山礫凝灰岩のジルコンU‒Pb年代測定を行い,19.63±0.15 Maの年代値を得た.この年代値は遠方地域の同層の年代制約と調和的であり,八鹿層の火成活動は広域的に同時期に起こったことが明らかとなった.基盤と八鹿層の境界には基底礫岩と判断される堆積性の角礫岩が点在し,境界部に断層は認められない.このことは八鹿層が基盤をアバット不整合に覆っていることを示している.本地域で見積もられるアバット不整合の比高は200 mを越え,山陰地方の中新統の層厚差には堆積時の古地形が寄与していた.八鹿層相当の岩脈群の方向解析によって,NNE-SSW方向に引張する応力比の低い正断層型応力を得た.この結果は,当時の山陰地方が多様な方向のグラーベンが形成されうる造構応力場にあったことを示唆する.
著者
羽地 俊樹 山路 敦 仁木 創太 平田 岳史
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.867-785, 2019-12-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
56
被引用文献数
7

近畿のグリーンタフ地域に分布する下・中部中新統の八鹿層と豊岡層の年代は八鹿層最下部が21.5Ma頃,豊岡層の上部が17~16.5Ma頃としかわかっていない.その間に500万年もの堆積年代が不明な期間あった.しかしその期間には,古地磁気回転と大規模な海進が起こったとされており,この堆積年代の欠如を埋めることがテクトニクスを論ずる上で重要な課題であった.そこで我々は,但馬妙見山東方の八鹿層中部から新たに見出した凝灰岩でジルコンU-Pb年代測定を行った.25粒子の測定結果のうち,統計的に除外された1粒子を除く24粒子から,19.38±0.23Maの加重平均値を得た.この結果,八鹿層の堆積と安山岩質火山活動は,19.4Ma以降まで続いたことが明らかとなった.また,本地域の古地磁気回転と海進の時期は19.4~16.5Ma頃に制約され,他のグリーンタフ地域と大差ない時期に起こったことになる.