著者
杉本 琢哉 近藤 哲矢 仁田 豊生 山本 淳史 尾関 豊 関戸 康友
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.183-188, 2006-02-01
参考文献数
24
被引用文献数
6

症例は76歳の男性で, 2001年10月に検診で胃の異常陰影を指摘され, 精査加療目的で当科を紹介された.血液検査では腫瘍マーカーは正常であったが可溶性IL-2レセプターは926U/mlと高値であった.上部消化管造影, 内視鏡検査では前庭部に2型の腫瘍を認めた.生検では悪性リンパ腫が疑われた.以上から, 胃悪性リンパ腫を疑い2001年12月胃全摘, 脾摘術を施行した.病理組織学的, 免疫組織学的検査で胃小細胞癌と診断した.術後CPT-11による化学療法を施行した.2003年8月の腹部CTで肝S7に22mm大の腫瘍を認め肝転移が疑われた.その他全身に異常を認めなかったため2003年11月, 肝S7S8部分切除術を施行した.病理組織学的に肝腫瘍は胃切除組織と同様であり胃小細胞癌の肝転移と診断した.肺転移の疑いがありVP-16による化学療法を施行中であるが胃切除から3年, 肝切除から1年1か月の現在生存中である.
著者
山内 希美 宮田 知幸 岡田 将直 仁田 豊生 河合 寿一 宮下 剛彦
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.751-755, 2004-03-25
被引用文献数
6 3

症例は78歳,男性.平成13年5月5日から全身倦怠感,食欲不振が出現し下血を認めたため当院内科を受診した.カルチノイド症状は認めなかった.大腸内視鏡検査で下部直腸に1型腫瘍を認め,生検で低分化腺癌もしくは未分化癌と診断された.腹部CT検査で多発肝転移を認めた.腹会陰式直腸切断術とリザーバー留置術を行った.免疫組織染色のクロモグラニンA, NSEで陽性像を示し,内分泌細胞癌と診断された.化学療法を開始したが,平成14年1月5日死亡した.内分泌細胞癌は予後不良であり,低分化腺癌や未分化癌との鑑別が困難である.直腸内分泌細胞癌の本邦報告例は自験例を加えて37例であり,術前から肝転移を認めた症例は22例であった.早期癌の症例は5例あるがいずれも予後は不良であり壁深達度と予後の関連はないと考えられた.内分泌細胞癌は外科的切除が第一選択と考えられるが,予後は不良で何らかの補助療法が必要である.