著者
今井 利宏 笠石 義広 原田 晴康 高橋 竜太 倉持 恵子
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.65-67, 2011-05

クロメンガタスズメAcheronitia lacnesis(F.)は、インド・パキスタン・ネパール・インドネシア・フィリピン・中国・台湾・日本に渡る熱帯~温帯東洋区に広く分布するスズメガである.(Beck and Kitching、2000-2010).国内の分布は、1982年に刊行された日本産蛾類大図鑑では九州・屋久島と記載されているが、1997・1998年に環境省が実施した「種の多様性調査(動物分布調査)」では佐賀を除く九州全県に加え、愛媛・高知・広島・山口・和歌山・三重で記録されている(井上ら、1982;自然環境センター、2002).近年になって、分布は急速に東進しており、関東においては、2007年に神奈川県および千葉県で、2009年に埼玉県で、それぞれ発生が記録されており、ナガサキアゲハPapilio memnon thunbergii SieboldやツマグロヒョウモンArgyreus hyperbius hyperbius(L.)などとともに、分布の拡大が温暖化と関連付けられて語られることも多い(岸ら、2009;加藤、2010;工藤、2010;尾崎、2010;嶋村、2010).Acherontia属は、本種を含め世界で3種が記載されているが、いずれも成虫がミツバチの巣に侵入し、密を摂食する習性を有するため、ミツバチの巣内で死骸が発見されることが知られている(Kitching、2003).栃木県内でも、2008年にニホンミツバチApis cerana japonica Radoszkowskiの巣箱で死骸が発見されているが、本種は大型で飛翔力が高く、長距離飛翔が可能であるため、元来の生息域である西日本から飛来したものと推定されている(増渕・中村、2008).幼虫は広食性で、食草には、ゴマ・ナス・ジャガイモ・トマトなどゴマ科・ナス科に属する農作物が含まれているが、農林有害動物・昆虫名鑑には害虫としてリストアップされていない(一色ら、1965;井上ら、1982;日本応用動物昆虫学会、2006).タバコも本種の寄主植物とされているが(Scott、1941;一色ら、1965).旧来の分布域である九州のタバコ産地を含め、これまで国内に本種による経済的な被害は発生していない(高橋明、私信).2010年7月に栃木県小山市の日本たばこ産業株式会社葉たばこ研究所内のタバコ畑でタバコを食害する本種幼虫が広範囲から多数発見された.その生息状況および食害状況について調査を実施したので、結果について報告する.本事例は、本種の栃木県内における初めての発生記録である.
著者
今井 利宏
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.35-38, 2021-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
18

培養したカビを用いたオオメヒメマキムシの飼育法を確立した.1.5倍に希釈したオートミール寒天培地(寒天は規定濃度)でPenicillium rubensを培養し,胞子形成後に培地ごと乾燥して飼料とした.ろ紙を張った9 cmシャーレに飼料を置き,羽化1週間から2カ月後までの成虫50〜60個体(雌雄の区別なし)を接種し,1週間後に成虫を除去する.このような方法により,25〜30°Cでは成虫接種から3〜4週間で次世代の成虫が100〜200個体程度得られる.同様の方法で,ムナビロヒメマキムシとユウレイヒメマキムシの飼育が可能である.
著者
今井 利宏 笠石 義広 原田 晴康 高橋 竜太 倉持 恵子
出版者
JAPANESE SOCIETY OF APPLIED ENTOMOLOGY AND ZOOLOGY
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.65-67, 2011
被引用文献数
2

Herbivory by the death's head hawkmoth, <i>Acherontia lachesis</i> (F.) (Lepidoptera: Sphingidae), on tobacco was recorded in Oyama, Tochigi Prefecture. The larvae attacked leaves in the lower to middle portion of the plants. They consumed a large area of leaf except the mid-rib. Typically, one larva consumed several leaves from a few adjacent plants. Observation in a 570 m<sup>2</sup> tobacco field (1,110 plants; var. Tsukuba 1), where no pesticides had been applied since transplanting, revealed that 80 plants (7.2%) were injured by final instar larvae of this species. The overall decrease in yield is estimated to be less than 1% by defoliation due to this pest.