著者
渕田 隆史 春原 則子 今富 摂子 後藤 多可志
出版者
目白大学教育研究所
雑誌
目白大学高等教育研究 = Mejiro University Education Reseach (ISSN:21859140)
巻号頁・発行日
no.25, pp.117-125, 2019-03-31

言語聴覚士が対象者と行う会話は、ラポール形成のみならず対象者の言語症状やコミュニケーション能力の把握ならびに訓練課題として重要な意味を持つが、会話に苦手意識を持つ言語聴覚士を目指す学生は少なくない。言語聴覚学科(以下、本学科)では、学生の会話能力向上を目指したプログラムを実施し一定の成果を得ている。しかし、習得がなかなか困難な学生のいること、また、習得がしやすい側面と困難な側面のあることが明らかとなってきた。そこで今回、会話演習における評価点の高い学生と低い学生の会話特性について、聞き手役割の観点から詳細に分析した結果、成績上位群の発話ターンを中心に「あいづち+ 情報要求」パターンが抽出された。この聞き手ストラテジーの使用は「会話への積極的な関与」と「一つの話題の持続性」を示し、適切な会話展開の契機となっていた。しかし成績下位群の会話の分析から、「あいづち+ 情報要求」パターンを使用していても、質問内容が文脈上不適切であれば会話展開の契機とはならないということも示唆された。今回の分析により、会話演習における評価点の高い学生とそうでない学生との具体的な相違点が明らかとなった。
著者
今富 摂子 荒井 隆行 加藤 正子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.304-314, 2003-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

開鼻声の聴覚判定における嗄声の影響を調べるため, 音源フィルタ理論に基づいて健常音声, 顕著な開鼻声, 軽度粗槌性嗄声, 重度粗槌性嗄声から, 4種類のフィルタ (顕著な開鼻声, 健常音声それぞれの/a/, /i/) と6種類の音源 (健常音源, 軽度粗慥性音源, 重度粗慥性音源それぞれの/a/, /i/) を組み合わせ, 24種類の音声刺激を合成し, 言語聴覚士を対象に, 5段階尺度で開鼻声の聴覚判定実験を行った.健常フィルタ, 顕著な開鼻声フィルタの両方で, 音源の種類によって開鼻声の判定値が変化した.特に重度粗槌性音源では, 顕著な開鼻声フィルタにおいて開鼻声の聴覚判定値が著しく低下した.軽度粗槌性音源では, フィルタの種類や聴取者によって, 結果にぼらつきが認められた.嗄声が開鼻声の聴覚判定値を変化させる要因として, 嗄声の音響特性によるスペクトルの変化が考えられるが, 詳細については今後検討が必要であると思われる.
著者
荒井 隆行 岡崎 恵子 今富 摂子 吉田 裕一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
Journal of the Acoustical Society of Japan (E) (ISSN:03882861)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.297-304, 1997-11
被引用文献数
1

Palatalized articulation (PA) is frequently observed in speech uttered by postoperative cleft palate patients. Provided the acoustical and perceptual cues of PA can be found, speech therapists will be able to use these cues to diagnose PA non-invasively and objectively. We tested human perception of certain synthetic sounds to verify the cues of the PA of /s/ in Japanese. To synthesize the fricatives, we modified the center frequency and the bandwidth of a complex-conjugate pole pair of an all-pole filter obtained from the linear predictive analysis of the PA of /s/. First, we shifted the center frequency from 1,000 to 3,000 Hz, while the relative bandwidth, or Q factor, was fixed at 10. Subsequently, we shifted the Q factor from 1 to 10, while the center frequency was fixed at 1,800 Hz. The results of a perceptual experiment involving nine speech therapists were conclusive that fricatives having a peak between 1,600 and 2,400 Hz tend to be identified as the PA of /s/, and fricatives having a peak at 1,800 Hz with the Q factor &gt5, tend to be identified as the PA of /s/. The two-tube model also showed that a peak around 2 kHz characterizes the PA of /s/.