著者
桝田 正治 吉田 裕一 村上 賢治 浜田 優子 向阪 信一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.254-260, 2000-12-01 (Released:2011-03-02)
参考文献数
26
被引用文献数
4 4

本研究は, 閉鎖系連続光下におけるピーマン'京みどり'の果実生産における炭酸ガス施与の効果について調査したものである.栽培環境条件は, 蛍光灯連続光の光強度150μmol m-2 s-1, 気温27±2℃, 湿度70±5%, 炭酸ガス濃度は自然 (340ppm), 800, 1200, 1600ppmとした.播種約45日後に第1番花が開花し, その時点から炭酸ガス施与を開始した.開始後72日間の収穫果数 (20~25gで収穫) はCO2自然区で個体当たり57果, 800~1600ppm制御区では80~90果となり, 自然区に比べて制御区で有意に増加した.CO2濃度の制御区間には有意差は認められなかった.地上部の全乾物重に占める果実乾物重の割合は, いずれの試験区でも40%以上を示した.生育は, すこぶる旺盛で節間は2~3cmと極めて短く葉色も濃緑であったが, 炭酸ガス施与開始2か月後には, 1200ppmと1600ppm区において軽微な葉脈間クロロシスが観察された.長期栽培でのCO2施与は, クロロシスが発生せず収量の向上が期待できる濃度800ppm程度が適当であると推察された.なお, 果実品質について自然光ガラス温室での同栽培法による6月の収穫果実と比較したところ, 連続光下の果実は乾物当たりのデンプン含有率は低いが, 糖含有率には差がなく, 果皮が硬く, 緑色濃く, つやの強い点が特徴的であった.
著者
花田 惇史 吉田 裕一 佐藤 卓也 後藤 丹十郎 安場 健一郎 田中 義行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.161-169, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

近年,受粉用ミツバチがしばしば不足し,果実を中心に園芸作物の生産コスト増大や品質低下を引き起こしている.その解決策の一つとして,医療用の無菌ウジ増殖技術を応用して生産したヒロズキンバエについて,施設栽培作物の花粉媒介昆虫としての実用化の可能性を検討した.イチゴ,トマト,ナスおよびメロンを対象として,開花期にヒロズキンバエをハウス内に放飼し,着果率や果実形態の比較によって,各作物への受粉効果を調査した.トマト,ナスおよびメロンにおいては,明確な着果促進効果は得られなかった.一方,イチゴでは,ハエは羽化直後から盛んに花に飛来する姿が観察され,ハエ搬入前と比較して受精不良果発生率は大きく低下した.ただし,90 m2当たり400頭の搬入では品種によって効果が不十分であった.しかし,1000頭搬入した場合は,ミツバチと同等の効果が得られたことから,ヒロズキンバエはミツバチの代替ポリネーターとして十分利用可能であると考えられた.
著者
河野 芳廣 吉田 裕一郎 田村 幸嗣 森山 裕一 牧原 真治 廣兼 民徳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.DbPI1341, 2011

【目的】換気力学では呼吸筋、胸腔内圧や肺容量、肺気量分画(全肺気量、一回換気量、肺活量、機能的残気量など)、姿勢、肺胸郭コンプライアンスの弾性仕事に関する要因や気道抵抗、肺、胸郭の組織抵抗の粘性仕事に関する要因などが関わっている。その中で、呼吸理学療法を行う際に、姿勢の変化で肺気量が影響を受けることは、多くの先行研究により認知されている。陽圧人工換気のポジショニングや体位呼吸療法(腹臥位管理)は、換気改善の効果があり、呼吸生理学的根拠があることは周知のとおりである。今回、陽圧人工換気下の状態で、姿勢の変化(ヘッドアップ)が及ぼす影響について、若干の知見を得たのでここに報告する。<BR>【説明と同意】今回の報告は、当院の倫理委員会の承認を受けている。<BR>【対象】溺水にて救急搬送、搬入時咳嗽あるも、胸部X線にて肺の状態不良、酸素化能低下し、時間を待たず気管挿管、ICUへ。ウィーニングで抜管するも、喉頭浮腫にて気道閉塞し、再挿管。その後、肺炎悪化。PCVの陽圧人工換気にて治療継続。陽圧人工換気管理下で換気モードはPCV(PEEP6cmH<SUB>2</SUB>O、RR30回/min、PCの圧above PEEP24cmH<SUB>2</SUB>O、FIO<SUB>2</SUB>80%)servo i (シーメンス社製)【方法】1日1回を3回にわたり、下記測定項目を理学療法前に計測する<BR>・2肢位における1分間の呼吸(分時換気量、一回呼気量、一回吸気量)をモニタしていく<BR>・ベッド上フラット位(ギャッジアップ0度、下肢挙上なし)から電動にて45度ギャッジアップ座位にし、それぞれの換気量を計測する。<BR>【測定項目】呼吸機能:分時換気量(MVe )、一回吸気量(VTi )、 一回呼気量(VTe )、終末呼気炭酸ガス濃度(EtCO<SUB>2</SUB>)、呼吸数(RR)、動的コンプライアンス(Cdyn)、酸素飽和度(SpO<SUB>2</SUB>)、呼吸パターン(I:E等)循環機能:動脈圧(ART)、心拍数(HR)<BR>【結果】パラメータ平均値は、1回目の仰臥位;MVe7.20±0.02 L/min、VTi238.35±2.33mL,VTe239.23±2.60mL から、45度坐位MVe5.22±0.04 L/min、VTi165.65±4.74mL、VTe171.12±5.13mLと低下、2回目の仰臥位;MVe7.30 L/min、VTi261.50±2.40mL、VTe261.88±1.93mL から、45度坐位MVe5.35±0.05 L/min、VTi200.00±3.66mL、VTe190.27±3.29mLと低下、3回目の仰臥位;MVe6.82±0.04 L/min、VTi259.96±2.49mL、VTe273.27±1.61mL から、45度坐位MVe4.41±0.03 L/min、VTi180.07±4.62mL、VTe175.96±3.11mLといずれも換気量の低下がみられた。<BR>・1、2、3回目における2条件(仰臥位、45度坐位)はいずれも、45度坐位において換気量の低下がみられ、(Wilcoxonの符号付き順位検定)P<0.01で有意差があった。<BR>・Cdynは1,2,3回目いずれも仰臥位は10.4~11mL/cmH<SUB>2</SUB>O、45度坐位は6.3~7.5mL/cmH<SUB>2</SUB>Oと低下した<BR>・EtCO<SUB>2</SUB>は仰臥位では47~57mmHgで45度坐位では64~76mmHgと上昇した。<BR>・姿勢変化時;酸素化能の変化としてSpO<SUB>2</SUB>値は、一回目に97%から93%に低下、2回目は95%から94%、3回目は97%から96%に低下した<BR>【考察】圧規定換気設定の気道内圧は、気道抵抗と肺胸郭コンプライアンスの大、小により、換気量を反映することになる。気道抵抗が大きいほど、肺胸郭コンプライアンスが小さいほど、換気量は減少するということになる。単に、肺胸郭コンプライアンスが小さくなったこともあると考えるが、それに、仰臥位から坐位時に、安静呼気位レベル(FRC)自体が上がり、結果的に気道内圧に影響し、換気量が変化したと考えられるのではないかと推測した。<BR>【理学療法学研究としての意義】陽圧人工換気下では量・圧規定換気や補助換気の付加など、病態にそって設定を変更させる。よって、同条件下での症例が重ねにくい中で、今回は換気量を測定することができた。陽圧人工換気下で、酸素化能の向上、換気改善目的の姿勢アップや呼吸手技を実施する際にはモニターしながら、圧損傷にたいして十分に注意できるようにする必要があることが理解できた。<BR>
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 大谷 翔子 安場 健一郎 田中 義行 吉田 裕一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.261-266, 2015

生育段階の異なるシュートに対する温度条件がシュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序発生に及ぼす影響を検討した.シュート長20 cmから2週間15°Cに加温することで,8週間15°Cに加温した場合と同様に,形態異常花序発生が軽減された.2週間加温した個体の切り花長と切り花重は,8週間加温した個体よりも大きくなった.形態異常花序が発生するシュート長と頂芽における花芽分化段階との関係を調べたところ,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期に当たるシュート長が約1~20 cmから15日間の15°C加温で最も形態異常花序が抑制できた.形態異常花序に及ぼす低温の影響を明確にするため,異なる生育段階に対する低温遭遇(7°C)が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.異なる生育段階に高温(15°C)に遭遇させた実験と同様に,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期までの低温遭遇が形態異常花序発生に大きく関与していた.以上のことから,摘心直後からがく片形成期の期間,株を低温に遭遇させないように温度管理することで,形態異常花序の発生を抑制でき,切り花形質も改善できると考えられた.
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 小日置 佳世子 大谷 翔子 吉田 裕一
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:21867755)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.29-34, 2013-02-01

As occurrence of abnormal inflorescence in Gypsophila paniculata 'Altair' is caused by environmental conditions, effects of day length, supplemental lighting strength, shading period and minimum night temperature on occurrence of abnormal inflorescence were investigated. Abnormal inflorescence was classified into four types : normal, pattern 1 (Short-flower stalk), pattern 2 (Coalescent two-flower stalk) and pattern 3 (Looping and irregular-flower stalk). Neither of 12h, 16h, 20h or 24h day length by fluorescent lamp, nor 24h by incandescent lamp affected occurrence of abnormal inflorescence. Effects of four levels of light intensity (fluorescent lamp : PPFD 1μmol・m−2・s−1, incandescent lamp : PPFD 3μmol・m−2・s−1, metal halide lamp : PPFD 14μmol・m−2・s−1 and high-pressure sodium lamp : PPFD 48μmol・m−2・s−1) were examined in 16h photoperiod. Occurrence of abnormal inflorescence was not affected by different light intensities, neither was it affected by shading period. Occurrence of abnormal inflorescence at 15°C was however significantly reduced compared to that at 8°C. In particular, patterns 2 and 3 at 15°C were significantly reduced compared to those at 8°C. There was a strong negative correlation between average night temperature from starting the treatment to flower budding (7.1°C, 9.0°C, 9.2°C, 11.6°C and 16.4°C) and incidence of pattern 3 (13.1%, 8.7%, 7.1%, 1.1% and 0.7%). Therefore, as average night temperature increased, occurrence of abnormal inflorescence decreased. The results show that low night temperature may be the main factor inducing occurrence of abnormal inflorescence.シュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序の発生には環境要因が関与していると考えられたので,日長,補光強度,遮光時期および最低夜温が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.形態異常程度は4種類のパターン (0:正常,1:茎が短いもの,2:2本の茎が癒着,3:ひどく湾曲し変形したもの) に分類し,その影響を受けた小花の割合を求めた.蛍光灯による日長処理(12時間,16時間,20時間,24時間)や白熱灯による日長処理(自然日長,24時間)は形態異常花序発生率に影響を及ぼさなかった.蛍光灯(PPFD 1μmol・m-2・s-1),白熱灯(PPFD 3μmol・m-2・s-1),メタルハライドランプ(PPFD 14μmol・m-2・s-1),高圧ナトリウムランプ(PPFD 48μmol・m-2・s-1)を用いて16時間の補光を行った.異なる光源による光強度でも形態異常発生率に一定の傾向は認められなかった.遮光時期を変えても形態異常発生率に一定の傾向は認められなかった. 最低夜温を15℃に上げると8℃区と比較して15℃区の形態異常発生は大きく減少した.特にパターン2と3の発生率は大幅に低下した.各実験の処理開始から発蕾までの平均夜温(7.1℃,9.0℃,9.2℃,11.6℃,16.4℃)と,パターン3の形態異常発生率(13.1%,8.7%,7.1%,1.1%,0.7%)との間に高い負の相関(R2=0.849)が認められ,処理開始から発蕾までの平均夜温が高いほど形態異常発生率は低下した.以上のことから,形態異常花序発生には夜間の温度が大きく関与しているのではないかと推察された.
著者
佐藤 萌都子 田村 幸嗣 吉田 裕一郎 河野 芳廣 森山 裕一(MD)
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100387-48100387, 2013

【はじめに、目的】 癌患者、その家族にとって終末期をどのように過ごすかは大きな問題のひとつである。今回、癌の進行に伴い、ADLおよび活動意欲が低下し、目標喪失となった終末期癌患者への理学療法を担当した。本症例を通し、意識変化のきっかけを与えることで、共通目標の設定・自宅退院が可能となった症例を経験する機会を得たため、報告する。【方法】 症例は30歳代女性。子宮肉腫に対し、他院にて子宮全摘+両側付属器切除施行。その6年後、子宮肉腫クラスV再発を認められ、当院にて抗癌剤治療目的に入院となる。生命予後については、主治医より"年単位は難しい"と入院時のインフォームドコンセントにて症例・ご家族に対し告知済みである。ご家族は夫・両親・義理の母親を中心に終日誰かが病室にいる状態であり、症例に対し非常に協力的であった。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に沿って個人情報保護に配慮し、患者情報を診療記録から抽出した。症例ご家族に対し、本学会にて症例報告を行うことについて同意を得た。また、当院の倫理委員会の承諾も受けた。【結果】 当院入院から退院までを以下の3相に分け、経過を報告する。(介入初期)当院入院約1ヶ月経過し、機能改善目的にリハビリテーション(以下リハ)開始となった。介入当初は、PS2~3と個室内トイレへは点滴台歩行にて自立レベルであったが、終日嘔気・嘔吐に加え間欠的な腹部痛、下腿浮腫を中心とした倦怠感により臥床傾向であった。また、人目を気にすることで個室外出はほとんどみられず、"リハが入っても何もできない"とリハ介入に対しての強い不安が聞かれた。そこで、まずは「個室からリハ室までの外出」を目標に、他の利用者のいない昼休み時間を利用するなど環境設定をしながら、少しずつ離床を図った。(活動範囲拡大期)点滴台歩行に加え自転車エルゴメーターを中心に運動耐容能改善を図るなかで、"思ったより歩けた""動けるなら自宅に帰って妻らしく家事がしたい"など心理的変化に加え、意欲的な発言がみられ始めた。一時的には病棟内を散歩するなど、人前に出る機会も多くなり、身体機能の向上を図ることができた。PTに対して、在宅復帰への希望がある一方で、ご家族の負担となることへの不安を話す場面もあったが、症例、ご家族、病棟スタッフを含め「自宅退院」という目標を共有した。その後、抗癌剤治療の合間に自宅退院の予行を含め、訪問看護を導入しながら一時退院となった。(自宅復帰移行期)再入院に伴い再び介入したが、抗癌剤治療開始に併せ、腹水の増加や熱発・嘔吐が持続し、誤嚥性肺炎を呈するとNGチューブ・ドレーン留置となり、徐々にベッドサイドでの身体機能維持を目標とした緩和的な介入が中心となった。加えて、症状の不安定性により積極的な介入が行えない日が増えた。そのため、病棟との連携の中で疼痛コントロールを図った上での介入を行い、リラクゼーション・下腿浮腫に対するマッサージをはじめとし、体調に合わせたプログラム設定の中で、個室内の点滴台歩行の継続を図り、機能維持に努めた。最終的な自宅退院が近づく中、希望がみられる一方で"家に帰っても家族の迷惑になるのでは"という強い不安が聞かれたが、家族の受け入れを得ることができ、再入院から2ヵ月後、状態維持のまま自宅退院となった。【考察】 介入当初、活動意欲の低かった症例に対し目標設定を行うことに大変苦慮したが、症例に合わせた環境設定を行うことで個室外への離床を図ることができ、そこから前向きな意識変化を生み出せたことが自宅退院という共通目標設定に大きく繋がったと考える。また、終末期においてADL低下は避けられないが、緩和的介入へ移行し症状が不安定な中でも介入し続けることで治療はまだ続いているという精神的な支えとなり、身体機能低下を遅らせるだけでなく、目標への意欲を保持することも可能であると考える。自宅退院が決まったのち、症例からは笑顔とともに"やっぱり家が良いね"と、ご家族からは"家に帰らせることができて良かった"という発言が聞かれ、QOL向上を図れたことから今回のPT介入は適切なものであったと考える。【理学療法学研究としての意義】 癌の終末期において、QOLの向上を図ることは重要である。ADL機能の向上が図れなくなった時こそ、身体機能面への介入だけでなく、症例に合わせた理学療法を行い、目標を共有し意識を高めることはQOL向上に有効なアプローチと考える。
著者
吉田 裕一 尾崎 英治 村上 賢治 後藤 丹十郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.343-349, 2012 (Released:2012-10-24)
参考文献数
27
被引用文献数
8 14

低コストで簡便な促成栽培イチゴの新しい花芽分化促進法として間欠冷蔵処理を考案して‘女峰’のトレイ苗に試みたところ,体内非構造炭水化物濃度の低下が抑制され,顕著な開花促進効果が認められた.果実予冷用に用いられるプレハブ冷蔵庫を用いて 13℃暗黒の冷蔵庫内と戸外の 50%遮光条件下に 2,3,4 日間ずつ交互におく処理をそれぞれ 4,3,2 回繰り返し行った.冷蔵庫の利用効率を高めることを前提として,冷蔵庫と戸外で経過する期間は同一とし,交互に入れ替える 2 処理区をそれぞれに設定した.相互の移動は正午頃に行い,処理期間中の戸外の環境条件は,日平均気温 22.5~29℃,日長 12.4~13.1 時間(日の出から日没まで)であった.ピートバッグに定植し,12 日間連続で低温暗黒処理を行った処理区および無処理の対照区と比較したところ,いずれの処理においても,冷蔵処理区は無処理区より 6~10 日早く開花した.12 日間連続処理区と同じ日に処理を開始してその中間で 4 日間戸外においた間欠冷蔵処理区とを比較すると,9 月 13 日定植では 15 日,9 月 17 日定植でも 4 日早く間欠冷蔵処理区が開花した.冷蔵を中断し,2~4 日間戸外で光合成を行わせることによって炭水化物栄養条件が大きく改善される結果,イチゴの花芽分化が促進されると考えられた.効果的な処理条件については今後詳細に検討する余地があるが,2 から 4 日間の低温暗黒と自然条件を繰り返す間欠冷蔵処理は新規の花芽分化促進技術としてきわめて有望であることが示された.
著者
後藤 丹十郎 高谷 憲之 吉岡 直子 吉田 裕一 景山 詳弘 小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.760-766, 2001-11-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 5

根域制限によって生じるキクの生育抑制が, 養水分ストレスの軽減によってどの程度まで解消できるかを明らかにするため, 連続給液式の水耕法と1日の給液頻度を異にした点滴灌水式の培地耕を用いて根域制限と養水分ストレスに対する品種'ピンキー'の反応を調査した.連続給液水耕では, 茎長, 節数は定植25日後においても根域容量(10&acd;1000ml)による差が生じなかったが, 葉面積, 地上部・地下部乾物重は根域容量が小さいほど抑制された.最も抑制程度が大きかった葉面積には定植10日後から影響が認められ, 定植25日後には根域容量10mlで根域容量1000mlの約70%となった.S/R比は根域容量の減少に伴って大きくなったが, その差は比較的小さかった.点滴給液した培地耕において, 根域容量30mlで給液頻度が少ない場合には, 定植14日後から茎長に差が認められたが, 8回では28日後においてもほとんど差が認められなかった.根域容量が小さいほど定植35日後の地上部の生育は劣ったが, 根域容量30および100mlでは給液頻度が8回以上の場合, 1および3回と比較して抑制程度はかなり小さくなった.地下部乾物重は給液頻度に関わらず根域容量が大きくなるほど重くなった.S/R比は給液頻度1回および3回では根域容量による影響がみられずほぼ一定であったが, 8回および13回では根域容量が小さくなるほど大きくなった.以上のように, 養水分を十分に与えることによってキクの生育抑制を軽減することができたことから, 根域制限による植物体の生育抑制の最大の要因は, 養水分ストレス, 特に水ストレスであると推察された.100ml以下の根域容量で栽培されるキクのセル苗や鉢育苗においては, 養水分供給頻度を高めることによって, 養水分ストレスが回避され, 生長が促進されると考えられる.
著者
佐藤 萌都子 田村 幸嗣 吉田 裕一郎 河野 芳廣 森山 裕一(MD)
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100387, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 癌患者、その家族にとって終末期をどのように過ごすかは大きな問題のひとつである。今回、癌の進行に伴い、ADLおよび活動意欲が低下し、目標喪失となった終末期癌患者への理学療法を担当した。本症例を通し、意識変化のきっかけを与えることで、共通目標の設定・自宅退院が可能となった症例を経験する機会を得たため、報告する。【方法】 症例は30歳代女性。子宮肉腫に対し、他院にて子宮全摘+両側付属器切除施行。その6年後、子宮肉腫クラスV再発を認められ、当院にて抗癌剤治療目的に入院となる。生命予後については、主治医より“年単位は難しい”と入院時のインフォームドコンセントにて症例・ご家族に対し告知済みである。ご家族は夫・両親・義理の母親を中心に終日誰かが病室にいる状態であり、症例に対し非常に協力的であった。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に沿って個人情報保護に配慮し、患者情報を診療記録から抽出した。症例ご家族に対し、本学会にて症例報告を行うことについて同意を得た。また、当院の倫理委員会の承諾も受けた。【結果】 当院入院から退院までを以下の3相に分け、経過を報告する。(介入初期)当院入院約1ヶ月経過し、機能改善目的にリハビリテーション(以下リハ)開始となった。介入当初は、PS2~3と個室内トイレへは点滴台歩行にて自立レベルであったが、終日嘔気・嘔吐に加え間欠的な腹部痛、下腿浮腫を中心とした倦怠感により臥床傾向であった。また、人目を気にすることで個室外出はほとんどみられず、“リハが入っても何もできない”とリハ介入に対しての強い不安が聞かれた。そこで、まずは「個室からリハ室までの外出」を目標に、他の利用者のいない昼休み時間を利用するなど環境設定をしながら、少しずつ離床を図った。(活動範囲拡大期)点滴台歩行に加え自転車エルゴメーターを中心に運動耐容能改善を図るなかで、“思ったより歩けた”“動けるなら自宅に帰って妻らしく家事がしたい”など心理的変化に加え、意欲的な発言がみられ始めた。一時的には病棟内を散歩するなど、人前に出る機会も多くなり、身体機能の向上を図ることができた。PTに対して、在宅復帰への希望がある一方で、ご家族の負担となることへの不安を話す場面もあったが、症例、ご家族、病棟スタッフを含め「自宅退院」という目標を共有した。その後、抗癌剤治療の合間に自宅退院の予行を含め、訪問看護を導入しながら一時退院となった。(自宅復帰移行期)再入院に伴い再び介入したが、抗癌剤治療開始に併せ、腹水の増加や熱発・嘔吐が持続し、誤嚥性肺炎を呈するとNGチューブ・ドレーン留置となり、徐々にベッドサイドでの身体機能維持を目標とした緩和的な介入が中心となった。加えて、症状の不安定性により積極的な介入が行えない日が増えた。そのため、病棟との連携の中で疼痛コントロールを図った上での介入を行い、リラクゼーション・下腿浮腫に対するマッサージをはじめとし、体調に合わせたプログラム設定の中で、個室内の点滴台歩行の継続を図り、機能維持に努めた。最終的な自宅退院が近づく中、希望がみられる一方で“家に帰っても家族の迷惑になるのでは”という強い不安が聞かれたが、家族の受け入れを得ることができ、再入院から2ヵ月後、状態維持のまま自宅退院となった。【考察】 介入当初、活動意欲の低かった症例に対し目標設定を行うことに大変苦慮したが、症例に合わせた環境設定を行うことで個室外への離床を図ることができ、そこから前向きな意識変化を生み出せたことが自宅退院という共通目標設定に大きく繋がったと考える。また、終末期においてADL低下は避けられないが、緩和的介入へ移行し症状が不安定な中でも介入し続けることで治療はまだ続いているという精神的な支えとなり、身体機能低下を遅らせるだけでなく、目標への意欲を保持することも可能であると考える。自宅退院が決まったのち、症例からは笑顔とともに“やっぱり家が良いね”と、ご家族からは“家に帰らせることができて良かった”という発言が聞かれ、QOL向上を図れたことから今回のPT介入は適切なものであったと考える。【理学療法学研究としての意義】 癌の終末期において、QOLの向上を図ることは重要である。ADL機能の向上が図れなくなった時こそ、身体機能面への介入だけでなく、症例に合わせた理学療法を行い、目標を共有し意識を高めることはQOL向上に有効なアプローチと考える。
著者
田村 幸嗣 吉田 裕一郎 河野 芳廣 大寺 健一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Db1208, 2012

【はじめに、目的】 一般に肺外科手術の術前評価の一つとして肺機能検査が行われる。最近では一秒量が1000mlを下回る症例でも手術適応となる場合があり、当施設でも低肺機能症例に対して術前理学療法が処方される。これらの症例に対しては術前オリエンテーション、排痰法指導、深呼吸指導等と合わせて効率的な分泌物の除去方法とされているアクティブサイクル呼吸法(以下ACBT)の指導もしている。ACBTは呼吸コントロール、胸郭拡張、ハフィング、強制呼出手技で構成される。一般には吸気筋トレーニングに関してはある程度の効果とする報告が多い一方、EMT(expiratory muscle training:以下EMT)の呼気流速に関連する呼吸機能に関しては変化がなかったとする報告が多い。EMTの具体的な方法としては器具を使用し呼気に抵抗をかける場合がほとんどである。そこで今回は低肺機能症例でも安全でかつ呼気流速を改善する方法として、ハフィングの反復練習が呼吸機能に及ぼす効果を研究目的とした。【方法】 喫煙歴や疾患の既往がない健康な成人18名(男性6名、女性12名)を無作為にトレーニング群(男性3名、女性6名、平均年齢28.1±7.3歳、身長160.5±8.65cm、BMI22.0±4.07)と対象群(男性3名、女性6名、平均年齢26.2±3.88歳、身長163.2±9.19cm、BMI21.8±2.60)に振り分けた。トレーニング群にはスパイロメーター用のマウスピース(直径30mm)を渡し、立位をとり肺機能検査の方法で最大努力の呼気を1日20回ハフィングの反復を指示した。トレーニングは続けて行わず個々のペースで行なうよう指示した。トレーニング期間は2週間とした。測定にはVM1 VENTILOMETERを用いて努力性肺活量(以下FVC)、一秒量(以下FEV1)、peak expiratory flow以下(PEF)を測定した。測定はトレーニング群にはトレーニング開始前と2週間後、対象群には初回測定日と2週間後の2回、初回測定時と同時刻にそれぞれ3回測定し、最高値を測定値とした。統計処理は対象者の属性についてはMann-Whitney U検定を行い、呼吸機能の測定値にはウィルコクソンの符号付順位和検定を行った。統計処理の手段としてはR Ver.2-11を用い、すべての検定において有意水準は5%とした。【説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に沿って進めた。対象者には研究内容を文書及び口頭で説明した。参加は任意であり、参加に同意しないことをもって不利益な対応を受けないこと、いつでも不利益を受けることなく撤回することができることを説明し参加の同意を得た場合には研究計画書に自筆署名して頂いた。【結果】 1.トレーニング群と対象群の基礎データにおいて、各代表値に有意な差は認めなかった。2.呼吸機能の変化;FVCではトレーニンニング開始前(2.95±1.27L)、トレーニング2週間後(3.39±1.39L)となりトレーニング群において、トレーニング前後の代表値に有意な差を認めた(P<0.05)。FEV1、PEFには有意な差を認めなかったもののトレーニング群においては一定の増加傾向がみられた(但しFEV1;P=0.07、PEF;P=0.05)。3.対象群ではいずれの測定値も有意な差を認めなかった。【考察】 一般には呼吸筋トレーニングの効果として肺機能の指標は変化しないと言われている。今回の結果ではFVCにおいて改善を認めた。FVCは最大吸気位からの最大呼気量である。FVCの改善のためには吸気量が増える事、残気量が減少することで達成される。これらは胸郭の柔軟性の改善と吸気筋および呼気筋の筋力の増強が因子として挙げられる。胸郭の柔軟性に関してはトレーニングの際は最大吸気位からの最大呼出を指示しているため反復することで通常よりも大きな動きを繰り返した結果胸郭の柔軟性が改善した可能性がある。今回は安静位、最大吸気位、最大呼気位の胸郭拡張差の測定を実施しておらず胸郭柔軟性の改善は検討できていないため今後の検討が必要となる。また、筋力としては2週間のトレーニングでは筋の肥大は起こらないとされているが、神経因性の筋力増強のメカニズムとされている大脳の興奮水準の増加(活動参加する運動単位の数や発火頻度の増加)、拮抗筋の抑制、運動プログラムの改善などが関与した可能性がある。また、今回はマウスピースを使用したハフィングトレーニングのため肺機能検査と同様の運動様式となり特異性の法則により効果的に高められた可能性もある。今回の結果では有意な差は認めなかったもののピークフロー値も増加の傾向があることから効率的な運動が可能となった可能性もある。今後は諸因子の検証とともに低肺機能患者についても検討を加え術前トレーニングの有効性を検討する必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果、2週間のマウスピースを使用したハフィングトレーニングは呼吸機能の改善を期待できる。
著者
イスラム マハメッド シャヒドール 松井 年行 吉田 裕一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.245-251, 1994
被引用文献数
5

トマト (品種レディファースト) 果実の糖含量と酸性インベルターゼ活性に及ぼす炭酸ガス施用 (700~900ppmv) の影響について検討した.炭酸ガス施用を行った果実のブドウ糖と果糖は無施用区 (250~400ppmv) よりも有意に高かったが, ショ糖では有意差が認められなかった.酸性インベルターゼ活性は可溶性のものが細胞壁結合性のものよりも高かった.開花後50日からのインベルターゼ活性の増大は還元糖含量の増大傾向と一致した.さらに, 炭酸ガス施用を行った果実は対照区のものよりもインベルターゼ活性は高かった.炭酸ガス施用は光合成とインベルターゼ活性の増大を導き, 糖含量および果色を向上させるものと考えられた.
著者
イスラム マハメッド シャヒドール 松井 年行 吉田 裕一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.185-190, 1995

トマト (品種'レディファースト') 果実の糖含量とショ糖合成・ショ糖リン酸合成酵素活性に及ぼす炭酸ガス施用の影響について検討した.生育申に炭酸ガス施用を行った果実重量, 全糖, 還元糖は無施用区よりも有意に高かった.ショ糖合成酵素活性は開花後50日目まで施肥トマトで高く, その後急激に減少したが, 無施肥区では徐々に減少した.ショ糖合成酵素活性の減少はショ糖濃度の減少を伴った.処理間のショ糖濃度とショ糖合成酵素活性の間に有意差は認められなかった.ショ糖リン酸合成酵素活性は, 生育中比較的一定であった.
著者
吉田 裕一 本村 翔
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.26-31, 2011 (Released:2011-01-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

イチゴ高設栽培の普及にともなって,ポット育苗からトレイ育苗への転換が進んでいる.空中採苗したランナー子株をトレイに挿し苗することによって,省力的な促成栽培用イチゴ苗の育苗が可能であるが,トレイで育苗した苗はポット苗と比較して開花が遅れる株の割合が高くなることが多い.挿し苗育苗した苗はクラウンが深く埋もれることが多いことから,クラウンの深さ,挿し苗時期と苗の大きさがイチゴ‘女峰’の開花に及ぼす影響について検討した.その結果,培地から露出したクラウンより深く埋もれたクラウンの茎頂分裂組織付近の温度が高く,花芽分化が遅れることが明らかになった.また,小さなランナー子株を遅い時期に挿し苗した場合には,特に開花が不揃いになりやすいが,クラウン周辺の培地を取り除いて露出させることによって茎頂分裂組織付近の温度が低下し,開花が早く斉一になった.以上のように,深く埋没したイチゴのクラウン周辺の培地を取り除いて露出させることにより,花芽分化が安定したイチゴのトレイ苗を効率的に生産できることが明らかになった.
著者
河野 芳廣 田村 幸嗣 吉田 裕一郎 森山 裕一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.D4P3171-D4P3171, 2010

【目的】効果的な呼吸理学療法実施のために、目的に応じた最適姿勢を見つけることは理学療法士の重要な役割である。今回、急性薬物中毒により、ICU内の人工呼吸器(SIMV(VC)+PS)での管理のもと、閉塞性無気肺を呈したケースに、呼吸理学療法を施行し、効率的に改善した経験を若干の考察を加え報告する。<BR>【説明と同意】今回の報告は当院の倫理委員会の承認を受けている。<BR>【症例と経過】急性薬物中毒による入院歴がある40歳代の女性。薬の多量服用後、誤嚥によりERに搬送。気管挿管とBF(気管支鏡検査)にて精査し誤嚥性肺炎あり、右上肺野、左肺野に無気肺認める。ICUへ転棟、体動あり、鎮静薬(ドルミカム、マスキュラックス共に5ml/h)下でSIMV+PSモードで呼吸管理SIMV12回に同調。上記の誤嚥性肺炎あり、ポジショニングと吸引施行継続する。鎮静剤減量(3ml/h)後、自発呼吸認めるも呼吸回数は12回、TV500ml/回で呼吸器に同調。肺エアー入りは全体的に弱く断続性ラ音聴診。BT38度台まで上昇。口腔内は粘調度の高い喀痰、気管チューブは水様性の喀痰吸引。吸引持続するも体動はない。2時間後に低換気で、気道内圧上昇アラーム(+)、両肺特に右肺より粗い断続性ラ音聴診、吸引も少量、開放吸引実施し中等量。体位は左側臥位にて30分ごと吸引療法実施。5時間後に鎮静剤off、開眼、うなずき(+)、BP170台、自発呼吸あり呼吸回数増える。TV500ml/回前後で安定も両肺から粗い断続性ラ音聴診、CXP上左肺の陰影悪化、無気肺おこしている状態、BF施行し右肺は中等量、左肺は分泌物なし。理学療法処方となる。実施施行後、胸写再検後、左陰影改善し、PSモード、サーモベント5L経過後、呼吸器離脱し抜管、酸素マスク5Lで咳嗽可能となり、翌日転院となる。<BR>【結果】Servoi(シーメンス社製)SIMV(VC)+PS、PEEP5cmH2O、設定にて管理中。バイタル変化:(SPO298→100%HR94→87bpm,BP135/87→149/79,RR12→22,BT38.3→38.7°C2時間おき計測、理学療法前→後)呼吸器モニター変化(MV/EtCO2 7.3/37→10.9/29,気道内圧23→16,VTi/VTe599/557→481/4232時間おき計測、理学療法前→後)意識レベル:E4VTM6→E4V5M6 <BR>理学療法:聴診にて左下肺は気管支音聴診(左上肺は断続性ラ音)。ポジショニング(右半腹臥位→右側臥位)で呼吸介助実施(30分間)。ヘッドアップ30度のポジショニングをとる(60分間)。その後、再度右側臥位で呼吸介助実施後、吸引(白黄色の粘稠痰中等量)。左下背野は肺胞音聴取、深呼吸の促がしも可能でリズム良好となる。<BR>【考察】人工呼吸器管理下(SIMV+PS)で、しかも自発呼吸が減弱しており、十分な咳嗽が行えない状況では、換気血流不均等是正やVAP防止のため、仰臥位の延長を可能な限り避けて、目的に合った体位を選択し、呼吸理学療法の技術を加え実施した。また、当ケースはBMI29のobesityでその体型の呼吸機能への影響も多いと考え、ウィ-ニング中で自発呼吸の促進を効率的にするため、仰臥位から坐位へという体位を選択して、呼吸理学療法を実施することは抜管にむけて効果的であった。<BR>【理学療法学研究としての意義】呼吸理学療法を実施するにあたり、チーム連携により体位は重要と考え、できる限り早期に、しかも目的に沿った呼吸理学療法を展開することで、二次的合併症の重度化を防止することや在院日数短縮ということを経験できた。<BR><BR>
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 大谷 翔子 安場 健一郎 田中 義行 吉田 裕一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.261-266, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
12

生育段階の異なるシュートに対する温度条件がシュッコンカスミソウ‘アルタイル’の形態異常花序発生に及ぼす影響を検討した.シュート長20 cmから2週間15°Cに加温することで,8週間15°Cに加温した場合と同様に,形態異常花序発生が軽減された.2週間加温した個体の切り花長と切り花重は,8週間加温した個体よりも大きくなった.形態異常花序が発生するシュート長と頂芽における花芽分化段階との関係を調べたところ,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期に当たるシュート長が約1~20 cmから15日間の15°C加温で最も形態異常花序が抑制できた.形態異常花序に及ぼす低温の影響を明確にするため,異なる生育段階に対する低温遭遇(7°C)が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.異なる生育段階に高温(15°C)に遭遇させた実験と同様に,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期までの低温遭遇が形態異常花序発生に大きく関与していた.以上のことから,摘心直後からがく片形成期の期間,株を低温に遭遇させないように温度管理することで,形態異常花序の発生を抑制でき,切り花形質も改善できると考えられた.
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 小日置 佳世子 大谷 翔子 田中 義行 吉田 裕一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.161-167, 2014
被引用文献数
1

最低気温がシュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序発生および切り花形質に及ぼす影響を調査した.形態異常花序を異常の特徴と程度に基づき3つのタイプ(1:茎が短いもの,2:2本の茎が癒着,3:ひどく湾曲し変形したもの)に分類した.形態異常花序の発生は初冬から早春にかけて増加した.軽度なタイプ1とタイプ2による形態異常は,開花時期に関係なくほぼ一定の割合で発生が認められたのに対して,切り花の外観を大きく損なうタイプ3は3月開花の個体で大幅に増加した.最低気温(7°C, 11°C, 15°C)が形態異常発生に及ぼす影響を調査したところ,タイプ3は最低気温が低いほど発生率が高かった.一方,切り花長,切り花重は最低気温が高いほど劣ることが明らかになり,形態異常花序発生を抑制したうえで,十分なボリュームの切り花を得るためには11°Cの加温が有効であると考えられた.栽培期間中の低温への積算遭遇時間とタイプ3の発生割合の関係を分析したところ,発蕾から開花までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生の間に相関は認められず,摘心から発蕾までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生との間には有意な相関が認められたことから,摘心から発蕾の期間における9°C以下の低温遭遇が重度の形態異常花序(タイプ3)の発生に関与することが示唆された.
著者
安場 健一郎 藤尾 拓也 渡邊 勝吉 多根 知周 山田 竜也 内村 優希 吉田 裕一 後藤 丹十郎 田中 義行
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.155-163, 2017 (Released:2017-12-28)
参考文献数
22
被引用文献数
2

施設内外の夜間のCO2濃度の計測値を利用して,隙間換気回数と施設内でのCO2発生速度を推定するソフトウェアを開発した.開発したソフトウェアはパーソナルコンピュータ上で動作し,ユビキタス環境制御システム(UECS)に準拠したCO2計測ノードが導入された施設で利用可能である.冬期間締め切った施設では夜間,土壌や植物から発生するCO2によってCO2濃度が上昇する.隙間換気回数と施設内からのCO2発生によってCO2の上昇曲線が決まる.開発したソフトウェアで,隙間換気回数推定のためのデータ収集期間を設定すると,自動的にその期間のCO2濃度を記録する.その期間の終了時に,非線形回帰分析を利用して,隙間換気回数と施設のCO2発生速度を自動的に推定する.また,計算したこれらの推定値を利用して,日中,換気開始前までの施設内での光合成速度を推定する機能を実装した.また,電子メールによってこれらの計算結果をリアルタイムにユーザーに伝達する機能を実装し,推定値の把握を容易にした.本ソフトウェアを利用することでCO2測定ノードが導入されていれば,簡単に隙間換気回数,施設内でのCO2発生速度を推定可能で,施設内でのCO2環境や省エネルギなどの施設内環境の改善に活用できると考えられた.
著者
花田 惇史 吉田 裕一 佐藤 卓也 後藤 丹十郎 安場 健一郎 田中 義行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.161-169, 2016
被引用文献数
4

近年,受粉用ミツバチがしばしば不足し,果実を中心に園芸作物の生産コスト増大や品質低下を引き起こしている.その解決策の一つとして,医療用の無菌ウジ増殖技術を応用して生産したヒロズキンバエについて,施設栽培作物の花粉媒介昆虫としての実用化の可能性を検討した.イチゴ,トマト,ナスおよびメロンを対象として,開花期にヒロズキンバエをハウス内に放飼し,着果率や果実形態の比較によって,各作物への受粉効果を調査した.トマト,ナスおよびメロンにおいては,明確な着果促進効果は得られなかった.一方,イチゴでは,ハエは羽化直後から盛んに花に飛来する姿が観察され,ハエ搬入前と比較して受精不良果発生率は大きく低下した.ただし,90 m2当たり400頭の搬入では品種によって効果が不十分であった.しかし,1000頭搬入した場合は,ミツバチと同等の効果が得られたことから,ヒロズキンバエはミツバチの代替ポリネーターとして十分利用可能であると考えられた.
著者
荒井 隆行 岡崎 恵子 今富 摂子 吉田 裕一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
Journal of the Acoustical Society of Japan (E) (ISSN:03882861)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.297-304, 1997-11
被引用文献数
1

Palatalized articulation (PA) is frequently observed in speech uttered by postoperative cleft palate patients. Provided the acoustical and perceptual cues of PA can be found, speech therapists will be able to use these cues to diagnose PA non-invasively and objectively. We tested human perception of certain synthetic sounds to verify the cues of the PA of /s/ in Japanese. To synthesize the fricatives, we modified the center frequency and the bandwidth of a complex-conjugate pole pair of an all-pole filter obtained from the linear predictive analysis of the PA of /s/. First, we shifted the center frequency from 1,000 to 3,000 Hz, while the relative bandwidth, or Q factor, was fixed at 10. Subsequently, we shifted the Q factor from 1 to 10, while the center frequency was fixed at 1,800 Hz. The results of a perceptual experiment involving nine speech therapists were conclusive that fricatives having a peak between 1,600 and 2,400 Hz tend to be identified as the PA of /s/, and fricatives having a peak at 1,800 Hz with the Q factor &gt5, tend to be identified as the PA of /s/. The two-tube model also showed that a peak around 2 kHz characterizes the PA of /s/.