- 著者
-
松原 英隆
今村 弥生
- 出版者
- Brewing Society of Japan
- 雑誌
- 日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
- 巻号頁・発行日
- vol.106, no.7, pp.493-501, 2011 (Released:2017-02-15)
- 参考文献数
- 11
- 被引用文献数
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蒸留直後の芋焼酎にはガス臭成分が含まれている。製品焼酎の出荷時におけるガス臭の有無およびガス臭の強度は官能試験で評価されており,原因物質の特定には至っていなかった。したがって,機器分析によってガス臭物質を特定し,かつ,閾値濃度付近の非常に低濃度のガス臭物質を定量することは重要であると考えられた。著者らは,蒸留直後の芋焼酎には含硫化合物臭が感じられることから,ガス臭の原因物質としては硫化水素等の揮発性硫黄化合物の可能性が高いのではないかと考えた。そこで,芋焼酎の硫化水素,メチルメルカプタン,硫化ジメチルおよび二硫化ジメチルを分析するため,エタノール除去システムを組み込んだ高感度パージ&コールドトラップ-GC-MS法を開発した。本研究で開発した方法を用いてガス臭のある芋焼酎に含まれる揮発性硫黄化合物を分析したところ,硫化水素とメチルメルカプタンが硫化ジメチルや二硫化ジメチルに比較して高濃度に検出された。次に,硫化水素やメチルメルカプタンがガス臭の原因物質であることを調べるため,銅カラム処理によるこれら2成分の選択的除去を試みた。その結果,銅カラム処理によって硫化水素やメチルメルカプタンは完全に除去され,ガス臭もなくなることが分かった。ここで,メチルメルカプタンの閾値が硫化水素の閾値に比較して圧倒的に低濃度であったことから,ガス臭寄与率が最も高かったのはメチルメルカプタンであり,次が硫化水素であると推察された。