著者
松村 善昭 奥村 和弘 今村 正明 東 新 松本 慶三 井本 卓 寺地 敏郎
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.599-601, 2002-10

55歳男.人間ドックで骨盤内腫瘤,左水腎症を指摘された.CTで仙骨前面に接し骨盤内臓器を腹側に圧排する13×11×15cmの腫瘤を認め,内容は嚢胞成分,脂肪織,石灰化等が混在していた.手術は,まず砕石位で下腹部正中切開から経腹膜的に直腸後方の腫瘍に到達した.その際,右総腸骨動脈部に右萎縮精巣を認め,摘除した.腫瘤と直腸との間の剥離を進めると,腫瘍は仙骨前面の一部と強く癒着していた.経仙骨アプローチを加えることとし,体位をJack knife positionに変え,仙骨後方に逆Y字切開した.S4,S5神経,尾骨神経根を結紮切断した後,S4以下の仙骨,尾骨を切断し腫瘍後面に到達した.鈍的に剥離を進めたが,S3仙骨と腫瘍との間に強い癒着を認めた.一部嚢胞壁が残存し嚢胞内容がこぼれたが,腫瘍を一塊に摘出した.組織学的には悪性所見を認めず,良性の成熟奇形腫と診断した.術後排便障害は1ヵ月で軽快し,尿閉を術直後に認めたが,1年後には自尿1回200mlと回復した
著者
岡村 菊夫 小澤 秀夫 絹川 常郎 今村 正明 斉藤 史郎 寺井 章人 武井 実根雄 長谷川 友紀
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.792-799, 2004-11-20
被引用文献数
6 1

(目的)経尿道的前立腺切除術(TURP)の共通クリニカルパスの意義を明らかとする.(対象と方法)7つの病院においてTURPを受けた平成13年度の310症例と平成14年度の298例を対象とした.平成13年度は各病院個別の方法で周術期管理を行い,平成14年度は共通パスを用いて管理した.(結果)共通パス施行により,術前・術後入院期間,ベッド上安静期間,抗生剤投与期間,カテーテル留置期間が短縮し,標準偏差も縮小した.入院費総額は515,439円から491,935円に減少した.7つの病院におけるアウトカムにはかなりの差が認められた.多変量解析を用いた検討から,1)TURP以外の検査,手術が同入院時に必要な症例,2)ADL障害,認知障害,既往歴,合併症が術後の回復に影響があると考えられる症例,3)術直前にカテーテル留置を受けている症例,4)術前に尿路感染症がある症例を除外基準と定めた.平成13,14年度のデータから除外条件を満たす122例,129例を除くことにより,術前・術後入院期間の短縮,入院費総額の減少と標準偏差の縮小が認められた.(結論)共通クリニカルパスは複数病院の術前・術後入院期間を短縮するのに有用である.一般病院にも一部出来高払いを含む日本式定額支払い制度(DPC)が導入されようとしている状況下では,泌尿器科専門医の立場から標準的な周術期管理を確立していくことが急務である.