著者
加藤 久美子 近藤 厚生 岡村 菊夫 高羽 秀典
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.1501-1505, 1986-09-20
被引用文献数
19

名古屋市内の一企業の女性社員に尿失禁に関するアンケート用紙を配布し,回答の得られた968名(回答率93.3%)を集計した.対象の年齢は17〜69歳で,10〜20代が全体の約7割を占めた.1)尿失禁が現在あるものは全体の8.5%,過去にあったが消失したものは6.7%であった.2)尿失禁保有率は年代と共に増加し,40代をピークとしてその後やや低下した(10代1.5%,20代4.1%,30代17.7%,40代23.9%,50代21.8%,60代20.0%).3)出産回数が多い程,尿失禁保有率は高かった(0回4.3%,1回15.2%,2回24.0%,3回以上34.3%).4)未産婦の尿失禁保有率は,年代と共に上昇した.5)尿失禁の現在ある群の平均体重は,尿失禁の経験のない群より,30代・50代・60代では統計的に有意に重かった.6)尿失禁の誘因はくしゃみ,咳,急がないと間にあわない,なわとび,笑う,精神的緊張,走る,重い物を持つの順に多かった.7)尿失禁の程度は,気にならない73%,濡れると気になって下着を替える22%,時々生理用ナプキンを使う4%であった.8)尿失禁を主訴として医療機関を受診したことのあるものはなかった.本邦の健常女性において,未治療の腹圧性尿失禁が多数存在すると推測された.腹圧性尿失禁の啓蒙に取り組むことが今後の課題になると思われる.
著者
岡村 菊夫 鷲見 幸彦 遠藤 英俊 徳田 治彦 志賀 幸夫 三浦 久幸 野尻 佳克
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.557-563, 2005-09-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
33
被引用文献数
4 6

目的: 水分を多く摂取することで脳梗塞や心筋梗塞を予防できるか否か, これまでの報告を系統的にレビューする. 方法: PubMed 上で dehydration, hydration, water intake, fluid intake, cerebral infarction, cerebrovascular disease, apoplexy, myocardial infarction, angina pectoris, ischemic heart disease, blood viscosity, hemorheology を組み合わせた条件で文献検索し, 6名が論文を評価, 取捨選択した. 結果: 検索された611論文のうち22論文を選択した. 前向き無作為化試験が1つ, 前向きの非無作為化試験が4つ, コホート研究あるいは症例対照研究が8つ, 後ろ向きの記述研究が9つ存在し, 以下の点が明らかとなった. 脱水は血液粘稠度を上昇させ, 脳梗塞や心筋梗塞を惹起する原因の一つである. 血液粘稠度上昇には, 脱水以外にも重要な複数の要因が関連する. 夜間の水分補給は血液粘稠度を下げるが, 脳梗塞を予防するという証拠はない. コップ5杯以上の水を飲む人は, 2杯以下しか飲まない人より心筋梗塞の発症が低いとする報告が1つ存在した. 結論: 脳梗塞や心筋梗塞の主な原因は動脈硬化, 動脈硬化性粥腫であり, 予防には生活習慣の是正が根本的に重要である. 水分を多く摂取すると脳梗塞を予防するという直接的な証拠はなかった. 水分摂取と脳梗塞・心筋梗塞の頻度に関してはさらなる研究が必要であり, 高齢者のQoLを向上させる適切な水分摂取法を検討していく必要がある.
著者
岡村 菊夫 鷲見 幸彦 遠藤 英俊 徳田 治彦 志賀 幸夫 三浦 久幸 野尻 佳克
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.557-563, 2005
被引用文献数
6

<b>目的</b>: 水分を多く摂取することで脳梗塞や心筋梗塞を予防できるか否か, これまでの報告を系統的にレビューする. <b>方法</b>: PubMed 上で dehydration, hydration, water intake, fluid intake, cerebral infarction, cerebrovascular disease, apoplexy, myocardial infarction, angina pectoris, ischemic heart disease, blood viscosity, hemorheology を組み合わせた条件で文献検索し, 6名が論文を評価, 取捨選択した. <b>結果</b>: 検索された611論文のうち22論文を選択した. 前向き無作為化試験が1つ, 前向きの非無作為化試験が4つ, コホート研究あるいは症例対照研究が8つ, 後ろ向きの記述研究が9つ存在し, 以下の点が明らかとなった. 脱水は血液粘稠度を上昇させ, 脳梗塞や心筋梗塞を惹起する原因の一つである. 血液粘稠度上昇には, 脱水以外にも重要な複数の要因が関連する. 夜間の水分補給は血液粘稠度を下げるが, 脳梗塞を予防するという証拠はない. コップ5杯以上の水を飲む人は, 2杯以下しか飲まない人より心筋梗塞の発症が低いとする報告が1つ存在した. <b>結論</b>: 脳梗塞や心筋梗塞の主な原因は動脈硬化, 動脈硬化性粥腫であり, 予防には生活習慣の是正が根本的に重要である. 水分を多く摂取すると脳梗塞を予防するという直接的な証拠はなかった. 水分摂取と脳梗塞・心筋梗塞の頻度に関してはさらなる研究が必要であり, 高齢者のQoLを向上させる適切な水分摂取法を検討していく必要がある.
著者
岡村 菊夫 小澤 秀夫 絹川 常郎 今村 正明 斉藤 史郎 寺井 章人 武井 実根雄 長谷川 友紀
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.792-799, 2004-11-20
被引用文献数
6 1

(目的)経尿道的前立腺切除術(TURP)の共通クリニカルパスの意義を明らかとする.(対象と方法)7つの病院においてTURPを受けた平成13年度の310症例と平成14年度の298例を対象とした.平成13年度は各病院個別の方法で周術期管理を行い,平成14年度は共通パスを用いて管理した.(結果)共通パス施行により,術前・術後入院期間,ベッド上安静期間,抗生剤投与期間,カテーテル留置期間が短縮し,標準偏差も縮小した.入院費総額は515,439円から491,935円に減少した.7つの病院におけるアウトカムにはかなりの差が認められた.多変量解析を用いた検討から,1)TURP以外の検査,手術が同入院時に必要な症例,2)ADL障害,認知障害,既往歴,合併症が術後の回復に影響があると考えられる症例,3)術直前にカテーテル留置を受けている症例,4)術前に尿路感染症がある症例を除外基準と定めた.平成13,14年度のデータから除外条件を満たす122例,129例を除くことにより,術前・術後入院期間の短縮,入院費総額の減少と標準偏差の縮小が認められた.(結論)共通クリニカルパスは複数病院の術前・術後入院期間を短縮するのに有用である.一般病院にも一部出来高払いを含む日本式定額支払い制度(DPC)が導入されようとしている状況下では,泌尿器科専門医の立場から標準的な周術期管理を確立していくことが急務である.