著者
岡村 菊夫 小澤 秀夫 絹川 常郎 今村 正明 斉藤 史郎 寺井 章人 武井 実根雄 長谷川 友紀
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.792-799, 2004-11-20
被引用文献数
6 1

(目的)経尿道的前立腺切除術(TURP)の共通クリニカルパスの意義を明らかとする.(対象と方法)7つの病院においてTURPを受けた平成13年度の310症例と平成14年度の298例を対象とした.平成13年度は各病院個別の方法で周術期管理を行い,平成14年度は共通パスを用いて管理した.(結果)共通パス施行により,術前・術後入院期間,ベッド上安静期間,抗生剤投与期間,カテーテル留置期間が短縮し,標準偏差も縮小した.入院費総額は515,439円から491,935円に減少した.7つの病院におけるアウトカムにはかなりの差が認められた.多変量解析を用いた検討から,1)TURP以外の検査,手術が同入院時に必要な症例,2)ADL障害,認知障害,既往歴,合併症が術後の回復に影響があると考えられる症例,3)術直前にカテーテル留置を受けている症例,4)術前に尿路感染症がある症例を除外基準と定めた.平成13,14年度のデータから除外条件を満たす122例,129例を除くことにより,術前・術後入院期間の短縮,入院費総額の減少と標準偏差の縮小が認められた.(結論)共通クリニカルパスは複数病院の術前・術後入院期間を短縮するのに有用である.一般病院にも一部出来高払いを含む日本式定額支払い制度(DPC)が導入されようとしている状況下では,泌尿器科専門医の立場から標準的な周術期管理を確立していくことが急務である.