著者
今津 正 藤下 典之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.293-302, 1962 (Released:2007-05-31)
参考文献数
34
被引用文献数
8 9

栽培および野生フキの中には形態や生態から, 倍数性のような染色体数の違うものがあるように思われたので, 栽培フキの4品種と, 北海道から九州屋久島にいたる201か所から集めた野生フキとについて, 染色体数と形態, 生態あるいは分布との関係を調べ, 染色体数から栽培フキと野生フキとの関係を考察した。1. 根端細胞で58本と87本の株があり, 後者はその不稔性やフキ属の染色体基本数から3倍体と考えられ, その成因は非減数の染色体をもつた配偶子と正常に減数した染色体をもつた配偶子との合一によるものと推察された。2. そ菜用品種の“愛知早生ブキ”と“水ブキ”は3倍体, 草姿の巨大性を特徴とする加工用の“アキタ大ブキ”は2倍体, 地方品種の“アキタ青ブキ”には3倍体と2倍体とがまざつていた。3. 野生フキのうち2倍体は本邦全土に, 3倍体は北海道をのぞく他のすべての地域に分布し, 後者は緯度の低い西日本, 特に南九州により多く自生する傾向が強かつたが, 両者が入り乱れて生えている場所もあつて, それぞれの自生地の立地条件には差が認められなかつた。東北や北海道地方に分布しているアキタブキ (subsp.giganteus KITAM.) はいずれも2倍体であつた。4. 栽培と野生あるいは株の雌雄の如何にかかわらず, 3倍体のフキには2倍体のものより萠芽が早くて,葉も大きく, 草勢も強いというような実用上すぐれた特性をもつた株が多かつた。5. 雌株にも雄株にも2倍体と3倍体とがあつたが,3倍体の雄株の小花が短花柱花となる以外, とくに倍数化による性表現の変化は認められなかつた。6. 3倍体のフキは不稔性で, 雄株は正常花粉を形成せず開葯もしないし, その雌株は充実種子を稔実せず花穂の丈も低いので, 雌雄の株とも2倍体とは容易にみわけることができる。7. 現在のそ菜用品種は早生, 強勢, 多収などの実用上すぐれた特性をもつていた3倍体の株が野生フキの中から選ばれ, 今日までその株の地下茎の分割増殖がくり返されてきたものらしい。
著者
今津 正 藤下 典之
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.293-302, 1962
被引用文献数
9

栽培および野生フキの中には形態や生態から, 倍数性のような染色体数の違うものがあるように思われたので, 栽培フキの4品種と, 北海道から九州屋久島にいたる201か所から集めた野生フキとについて, 染色体数と形態, 生態あるいは分布との関係を調べ, 染色体数から栽培フキと野生フキとの関係を考察した。<br>1. 根端細胞で58本と87本の株があり, 後者はその不稔性やフキ属の染色体基本数から3倍体と考えられ, その成因は非減数の染色体をもつた配偶子と正常に減数した染色体をもつた配偶子との合一によるものと推察された。<br>2. そ菜用品種の"愛知早生ブキ"と"水ブキ"は3倍体, 草姿の巨大性を特徴とする加工用の"アキタ大ブキ"は2倍体, 地方品種の"アキタ青ブキ"には3倍体と2倍体とがまざつていた。<br>3. 野生フキのうち2倍体は本邦全土に, 3倍体は北海道をのぞく他のすべての地域に分布し, 後者は緯度の低い西日本, 特に南九州により多く自生する傾向が強かつたが, 両者が入り乱れて生えている場所もあつて, それぞれの自生地の立地条件には差が認められなかつた。東北や北海道地方に分布しているアキタブキ (subsp.<i>giganteus</i> KITAM.) はいずれも2倍体であつた。<br>4. 栽培と野生あるいは株の雌雄の如何にかかわらず, 3倍体のフキには2倍体のものより萠芽が早くて,葉も大きく, 草勢も強いというような実用上すぐれた特性をもつた株が多かつた。<br>5. 雌株にも雄株にも2倍体と3倍体とがあつたが,3倍体の雄株の小花が短花柱花となる以外, とくに倍数化による性表現の変化は認められなかつた。<br>6. 3倍体のフキは不稔性で, 雄株は正常花粉を形成せず開葯もしないし, その雌株は充実種子を稔実せず花穂の丈も低いので, 雌雄の株とも2倍体とは容易にみわけることができる。<br>7. 現在のそ菜用品種は早生, 強勢, 多収などの実用上すぐれた特性をもつていた3倍体の株が野生フキの中から選ばれ, 今日までその株の地下茎の分割増殖がくり返されてきたものらしい。
著者
樋口 恒司 今津 正史 下竹 孝志 常盤 和明 岩井 直躬
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.998-1002, 1999-12-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は4歳男児.1歳半頃, 排便時に肛門より球状のウズラ卵大腫瘤の脱出を認めた.3歳頃からは排便ごとに脱出を認めるようになったため, 近医受診後直腸脱を疑われ当科紹介となった.直腸指診上, 直腸後壁に弾性軟のウズラ卵大の腫瘤を触れ, 超音波検査にて直腸後壁に嚢胞性病変を認めた.注腸造影, CT, MRIにて直腸重複症と診断し, 経肛門的腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は径3 cm, 直腸の後壁内に存在し, 嚢胞状で内容は褐色粘液であった.組織学的には, 嚢胞は円柱上皮に覆われ, 杯細胞の散在を認めた.また, 直腸とは独立した粘膜固有層, 平滑筋層を認めた.直腸重複症は本邦では11例の文献報告を見るのみであり, 比較的まれな疾患である.本症例は経肛門的に直腸後壁粘膜を切開し, 腫瘤を摘出し得た.球状腫瘤の肛門外脱出を認める場合, 直腸重複症を鑑別診断の一つとして考慮すべきで, 鑑別診断にはCT及びMRIが有用である.