- 著者
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仲 修平
- 出版者
- 関西社会学会
- 雑誌
- フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.48-62, 2018 (Released:2019-05-11)
- 参考文献数
- 31
本稿の目的は、戦後日本における自営業の職業構成の趨勢を対数線形・対数乗法モデルとイベントヒストリー分析によって明らかにすることである。日本の自営業は販売職や熟練職の比率の高さが一つの特徴として知られてきた。そうした自営業は1980年代の後半以降に減少してきたが、近年は専門職が増加することによって自営業の職業構成が変化の途上にあることが指摘されてきた。ところが、自営業の職業構成が長期的にどのように変化してきたのかについてはほとんど研究がなされていない。そこで本稿では、自営業と専門職の関連の強度が1955年から2015年にかけて常時雇用と比べると次第に強まったのか、個人の職業移動において専門的・技術的職業の自営業(自営専門職)への参入が他の職種の自営業への参入に比べて近年になるほど生じやすくなっているのかを、1955年から2015年に実施された社会階層と社会移動全国調査データの二次分析によって検討する。分析の結果、次の二点が明らかになった。第一に、自営業と専門職の結びつきは職業構造の変動の影響を考慮したとしても、1955年から2015年にかけて強まっていることがわかった。第二に、自営専門職への参入は近年になるほど生じやすい傾向が高まっているのに対して、販売職や熟練職の自営業への参入は生じにくい傾向となっていることが示された。以上の結果を踏まえると、自営業の職業構成は徐々に専門職化していると判断することができる。