著者
仲 修平 / 前田 豊 / 石田 淳
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.139-157, 2013-09-15

本稿の目的は、人びとの「勝ち組・負け組」意識が従業上の地位、世帯所得や婚姻形態とどのように関連しているのかをインターネット調査データの分析を通して明らかにすることである。分析の結果、「勝ち組・負け組」意識は、未婚・離死別であるか既婚であるかという婚姻形態と強く結びついていつことが示された。また、「勝ち組」意識を持つうえで重要だと考えられてきた正規雇用の地位には、強い影響力はみられなかった。しかし、婚姻形態と従業上の地位との交互作用の分析では、未婚・離死別の場合は正規雇用に比べて無職、あるいは非正規雇用であることによって「負け組」意識を持ちやすい一方で、既婚の場合は逆に「勝ち組」意識を持ちやすい傾向であることがわかった。さらに、世帯所得との交互作用においても既婚の場合、世帯所得の増加によって「勝ち組」意識を持ちやすい顕著な傾向が示された。従業上の地位や世帯所得という「地位達成」変数の「勝ち組・負け組」意識に対する効果は、婚姻形態という「ライフスタイル」の地位によって異なることがあきらかになった。
著者
長松 奈美江 神崎 淳子 櫻井 純理 阿部 真大 仲 修平 筒井 美紀 嶋内 健 貴戸 理恵
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、生活困窮者自立支援事業に照準を合わせ、本事業が、その創設に込められた理念である「貧困と社会的排除の問題解決」や「制度の狭間の解消」に資する生活・就労支援制度となるために必要な条件を探究する。大阪府内の各自治体や委託事業者という「サービス提供側」だけでなく、相談窓口への来談者という「サービス受給者」に焦点を当てた調査研究を行い、地域レベルでのアクティベーション・サービス配給体制の実態を自治体内のガバナンス構造に注目して分析し、生活困難層の支援ニーズに合致したより実効性のある支援制度について考察する。
著者
仲 修平
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.48-62, 2018 (Released:2019-05-11)
参考文献数
31

本稿の目的は、戦後日本における自営業の職業構成の趨勢を対数線形・対数乗法モデルとイベントヒストリー分析によって明らかにすることである。日本の自営業は販売職や熟練職の比率の高さが一つの特徴として知られてきた。そうした自営業は1980年代の後半以降に減少してきたが、近年は専門職が増加することによって自営業の職業構成が変化の途上にあることが指摘されてきた。ところが、自営業の職業構成が長期的にどのように変化してきたのかについてはほとんど研究がなされていない。そこで本稿では、自営業と専門職の関連の強度が1955年から2015年にかけて常時雇用と比べると次第に強まったのか、個人の職業移動において専門的・技術的職業の自営業(自営専門職)への参入が他の職種の自営業への参入に比べて近年になるほど生じやすくなっているのかを、1955年から2015年に実施された社会階層と社会移動全国調査データの二次分析によって検討する。分析の結果、次の二点が明らかになった。第一に、自営業と専門職の結びつきは職業構造の変動の影響を考慮したとしても、1955年から2015年にかけて強まっていることがわかった。第二に、自営専門職への参入は近年になるほど生じやすい傾向が高まっているのに対して、販売職や熟練職の自営業への参入は生じにくい傾向となっていることが示された。以上の結果を踏まえると、自営業の職業構成は徐々に専門職化していると判断することができる。