著者
廣田 照幸 森 直人 寺脇 研 二宮 祐 丸山 和昭 冨士原 雅弘 小野 方資 末冨 芳 佐久間 亜紀 徳久 恭子 荒井 英治郎 布村 育子 植上 一希 筒井 美紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1、関連文献・史資料の収集・吟味:日教組の運動の範囲が多岐にわたるため、大学院生や学部生にアルバイトとして利用しながら、7つの作業グループのそれぞれの主題に沿った関連文献・史資料の収集・吟味を体系的に行った。2、日教組所蔵史料の検討と整理:研究の基礎史料を利用可能な状態にしていくため、平成29年度は過去のプロジェクトにおいてデジタル化した資料を再整理しつつ、新たに当面の研究に必要な史料を選定してデジタル化作業を行った。教育制度検討委員会(第一次・第二次)関係及び1950年代後半期の中央執行委員会プリントなどを対象にした。単組史料も部分的に行った。3、1954年の中央執行委員会の議事録に綴じ込まれた中根式速記の史料を発掘してデジタル化を行うとともに、速記解読者に依頼して、解読可能性について検討をしてもらった。4、聞き取り調査:日教組OB及び文部省OBに対し手の聞き取り調査をおこなった。記録はテープ起こしと編集作業を行い、ご本人の確認を経て、聞き取り資料として確定させた。5、全体会合:全員が集まる研究会を定期的に開催し、本研究課題に関連する分野の専門家をゲスト・スピーカーとして招聘してレクチャーを受けながら、7つの作業グループから、順次、研究報告をしてもらった。また、全体会では、研究全体の進め方について協議を行った。6、チーム会合・グループ会合:2つのチーム、7つのグループごとに、定期的な会合をもち、具体的な課題に向けた研究を進めた。7、学会発表:日本教育学会、教育史学会などにおいて研究成果の報告を行った。学会発表をふまえて、論文化に向けた打ち合わせも行っている。また、学会誌等に載りにくい主題の論考等を集めて、第一次報告書を編集・印刷した。
著者
廣田 照幸 佐久間 亜紀 筒井 美紀 徳久 恭子 荒井 英治郎 植上 一希 末冨 芳 布村 育子 森 直人 小野 方資 宇内 一文 丸山 和昭 冨士原 雅弘 長嶺 宏作 古賀 徹 岩田 考 太田 拓紀 清水 唯一朗 二宮 祐 冨士原 雅弘 佐藤 晋平 田中 真秀 金子 良事 長嶺 宏作 香川 七海 中嶋 亮太 高木 加奈絵
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の成果として、a)初期教育研究大会の成立と講師団選出過程、b)日教組結成から1950年までの法的な位置づけと政治的な立ち位置の変容、c)「教え子を戦場に送るな」のスローガンの成立過程、d)人材確保法の成立過程、e)日教組におけるストライキ批准体制の確立、f)1973年春闘におけるストライキ戦術と交渉の解明、g)連合加入をめぐる400日抗争の解明、h)1995年の文部省と日教組の和解のプロセス、i)国際労働運動における日教組の位置を明らかにした。以上の点から、労働運動体と教育運動体としての日教組との二重性をふまえ、日教組の多面的な運動、それぞれに与えた影響を実証的に明らかにした。
著者
筒井 美紀 TSUTSUI Miki
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.5-21, 2006-12

本稿は、大学生の授業理解・ノートをとる行為・授業外の学習の3つが、どのように関係しているかについて解明する。学生の多くが「知識の伝達─貯蔵モデル」への過剰適応によって大学で学ぶことへの準備が不充分である。それゆえ、まず必要なのは「いかにノートをとるべきか」的な指南ではなく、「大学での学びのレディネス」を高めさせることだ。ではどうすればよいか。こうした問題意識に基づき、次の4つの知見を得た。第1 に、大事なところが分からないことが多い学生ほど、キーワードしか板書されない場合に自分で文章化したり、板書がなされない口頭のみの説明をノートしたりすることが少ない。第2 に、大事なところが分からないことが多いか否かは、「前進的理解(ノートを早くとり終わった時に疑問点や重要点をまとめる)」の有無に影響しない。第3 に、「前進的理解」をしている学生は、していない学生と比べて、平均的に自学自習時間が長いものの有意ではない。第4に、「前進的理解」をしている学生は、していない学生と比べて、平均的に読書時間が有意に長い(2倍強)。これらの知見の含意は「読むことの聴くことへの効用」である。読書は「自律的オーディアンス」を育成するので、「大学での学びのレディネス」を高めるのだ。以上より、取り組むべき実践的課題は、いかに読ませ書かせるか・いかにフィードバックすべきか、すなわち、「言語獲得の受動性と応答性」が埋め込まれた機会を、とりわけ1 年次の早期段階において、構造化することである。
著者
廣田 照幸 佐藤 晋平 森 直人 二宮 祐 丸山 和昭 香川 七海 冨士原 雅弘 長嶺 宏作 太田 拓紀 小野 方資 末冨 芳 神代 健彦 田中 真秀 徳久 恭子 岩田 考 宇内 一文 荒井 英治郎 金子 良事 筒井 美紀 布村 育子 古賀 徹 植上 一希
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、日本教職員組合(日教組)の1950年代から1980年代末までの期間を研究対象に据え、日教組が所蔵する非公開史料の特別な利用、日教組幹部OBのヒアリングや私文書の活用により、それぞれの時期に日教組内部でどのような論争や対立があり、それが結果的に日教組の運動にどういう方向性を与えたのかを、労働運動と教育運動の両面から分析する。保守対革新、文部省対日教組という単純な2項対立の図式で描かれることが多かった日教組運動史を、多様なイデオロギーのグループ間のダイナミックな相互作用過程としてとらえ直していく。
著者
筒井 美紀
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.55-67, 2020-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1

学校の機能というと,人は教育機能(人的資本の蓄積)をまず思い浮かべがちだが,学校は地域社会・労働市場との「つながり」(社会関係資本)を創る機能も担ってきた。教育機会を平等にしても「マシュー効果」は消えないし,ハイテク社会でも低賃金・低スキルに留め置かれる人々が依然必要とされることを考えれば,労働供給サイド偏重の社会投資戦略(ヨーロッパがそうである)の限界は明らかである。したがって,「つながり」を創る機能を重視する「地域内蔵アプローチ」が,とりわけ「課題集中高校」では必要ではないか。すなわち,在学中・卒業後の移行パスを「なだらか」にする,言い換えれば,地域労働市場を参入しやすく留まりやすくしようとするアプローチである。これに関する本稿の,大阪府立西成高校とAダッシュワーク創造館の協働の事例からは,しかし,学校の資源的限界が明らかだ。ゆえに,各スケールでの制度的再調整が不可欠である。
著者
長松 奈美江 神崎 淳子 櫻井 純理 阿部 真大 仲 修平 筒井 美紀 嶋内 健 貴戸 理恵
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、生活困窮者自立支援事業に照準を合わせ、本事業が、その創設に込められた理念である「貧困と社会的排除の問題解決」や「制度の狭間の解消」に資する生活・就労支援制度となるために必要な条件を探究する。大阪府内の各自治体や委託事業者という「サービス提供側」だけでなく、相談窓口への来談者という「サービス受給者」に焦点を当てた調査研究を行い、地域レベルでのアクティベーション・サービス配給体制の実態を自治体内のガバナンス構造に注目して分析し、生活困難層の支援ニーズに合致したより実効性のある支援制度について考察する。
著者
筒井 美紀 TSUTSUI Miki
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.89-105, 2009-12

「ふるさと雇用再生特別交付金事業」は、どのような求人を生み出しているのか。本稿は、大阪府の2009年7月現在の状況について、行政的な手続きを確認しつつ明らかにする。本稿は、雇用創出の中間ないし最終集計の分析ではなく、「オン・ゴーイングな観察」に過ぎない。だが、次の強みを持つ―「当該企業やNPOは、なぜいまこのタイミングでこれこれの求人を出しているのか?」という文脈の解明である。これがなされてこそ、当該の雇用が事業終了後も継続するか否かの考察や、継続させる必要条件についての議論も、より深い実質を備える。本稿は、「ふるさと雇用再生」の大枠と流れを、厚生労働省や大阪府庁の資料によって概観したあと、「サポートネットOSAKA」の求人情報の任意の発効日を対象に、労働需要発生の文脈を、受託企業・NPOのホームページの閲覧等によって解明していく。得られた暫定的な知見は次の2点。 1)本事業をブレイクダウンして個別事業の実施にこぎつけるまでのプロセスは、大阪府の場合、トップダウンの傾向が見られる。 2)「ふるさと雇用再生」で生み出されている少なからぬ求人が、行政のアウトソーシングの流れに位置づくものだ、と考えられる。現時点で言えることは次の3点。 1)国から発せられる事業の具体的な推進は、トップダウンで行政中心の方法に限られるわけではない(例えば京都府)。 2)民間企業の雇用保険料が、時限的な交付金として、経常的で福祉的な業務に投入されていることは正当性を欠く。恒久化が無理なら、せめて5年の時限措置とすべき。短期的事業の受託によって露命をつないでいる状態では、経営基盤の安定化も人材育成も望めまい。 3)雇用創出のアイデア出し・グランドデザイン描き・試行錯誤は、景気の良し悪しに関わらず、地味に続けられているべきボトムアップの営みであり、これを制度的に保障すべきである。
著者
筒井 美紀 TSUTSUI Miki
出版者
京都女子大学現代社会学部
雑誌
現代社会研究 (ISSN:18842623)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.51-67, 2008-12

本稿は、京都女子大学現代社会学部を2008年3月に卒業した4回生の、就職活動のプロセスと結果について、質問紙調査を元に解明する。具体的には、諸活動の開始時期や活動量について記述した上で、就職活動期間と最初の内定獲得時期の規定要因を明らかにする。先行研究が明らかにしてきた構造的・関係的要因と人的資本論的要因は、中堅女子大学の学生の場合、どのような影響力をもつのか。得られた知見は次の5点である : (1) 時間的側面から見た平均像は、3回生の11月頃に就活支援サイトに登録、12月に企業セミナー・会社説明会へ参加、というかたちで始まって、4回生の5月中旬に最初の内定獲得、6月上旬に4月以降勤務先の内定獲得と、約7ヶ月の活動、(2) 活動量から見た平均像は、エントリーシート送付企業数21社、説明会参加社数25~26社、筆記試験受験企業数12社強、面接受験企業数11社、会ったOB・OGの数1.3人(0人は全体の6 割)、内(々)定企業数2社強、(3) 「下宿・寮→独居・寮から通勤」の学生は、「自宅→親元から通勤」の学生と比べて、活動期間が有意に1.5ヶ月短くなっており、最初の内定獲得時期が有意に1.5ヶ月早い、(4) 総合職の学生は一般職の学生と比べて、活動期間が有意に1.2ヶ月長い、(5) OB・OGに会った学生は会わなかった学生と比べて、最初の内定獲得時期が有意に1.5ヶ月早い。以上に基づく理論的含意は、(1) 人的資本としての生活力・自活力の重要性、(2) OB・OG接触の重要性、(3) 買い手市場下の調査の必要性、の3点。実践的示唆は、(1) 3 回生前期までと4 回生後期の教育のさらなる徹底、(2) OB・OGに会うべしという助言、(3) 総合職志望者への適切な配慮、の3点である。The purpose of this paper is (1) to describe the process and result of job search of the students who graduated from the Faculty for the Study of Contemporary Society, Kyoto Women's University in March, 2008 and (2) to identify the factors of both the length of the job search and the timing of the first "naitei (unofficial decision)", from the analysis of the quantitative data. The following are the findings : (1) from the temporal aspect, the average is; register in job search support sites in Nov. 2006 → attend seminars in Dec. 2006 → take the first naitei in May 2007 → take the naitei she finally decided to go in June 2007, then the length is about 7 months, (2) from the quantitative aspect, the average is; entry sheets = 21 firms, seminar attendance = 25 to 26 firms, writing exam. = 12 firms, interview = 12 firms, OB/OG they met = 1.3 persons, na(nai)tei = 2 firms, (3) the length of job search of "living alone or dorm. → living alone or dorm." type is 1.5 months shorter and their timing of the first naitei is also 1.5 months earlier than those of "living with their parents → living with their parents" type, (4) the length of job search of sougou-shoku is 1.2 months longer than that of ippan-shoku, (5) the timing of the first naitei of the students who met OB/OG is 1.5 months earlier than that of the students who did not. Theoretical implications are (1) the importance of independence as human capital, (2) the importance of meeting OB/OG, (3) the need of further research under loose labor markets. Practical suggestions are (1) to make learning more intensive especially until the fifth semester and in the eighth semester, (2) to advise them to meet OB/OG, (3) to pay considerable attention to students who want to work as sougou-shoku.
著者
廣田 照幸 田原 宏人 筒井 美紀 本田 由紀 小玉 重夫 苅谷 剛彦 大内 裕和 本田 由紀 小玉 重夫 苅谷 剛彦 大内 裕和 清水 睦美 千田 有紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1990年代から現在に至る約20年の教育社会学の研究成果と教育現実の変動との関係の見直しの必要性が明らかになった。政治のレベルでの55年体制、経済のレベルでの日本的雇用システムを、暗黙の前提とした研究枠組みを脱する必要が浮かび上がった。特に、教育政策の立案-実施の過程に働く政治的な諸力が、1990年代初頭から大きく変容したこと、また、卒業生の受け皿である労働市場や雇用システムが、1990年代半ば以降、大きく変容したこと、その二つが、教育政策をめぐる議論に対しても、学校や生徒の現実に対しても、大きな意味を持っていた。とはいえ、実証性を研究の主要なツールとしてきた教育社会学は、そのような大きな構造変動を理論や研究枠組みのレベルで適切にとらえきれないまま、2000年代の教育改革の中で、部分的・断片的な実証データをもとにした推論を余儀なくされる状況に陥ってきたといえる。こうした検討を踏まえて、本研究から明らかになったのは、新たな政治・経済の枠組みをとらえた社会科学の知見を、教育社会学内部に取り込む必要性である。特に、グローバル資本主義の展開が政治や経済のあり方を左右する際、どういう選択肢が理論レベルであり得るのかをふまえ、それらの選択肢が教育政策に及ぼす影響を予測することの重要性が、明らかにされた。
著者
筒井 美紀 本田 由紀 阿部 真大 櫻井 純理 櫻井 純理 堀 有喜衣 居郷 至伸 御旅屋 達 伊藤 秀樹 福田 詩織 田近 恵子 喜始 照宣 小柏 円
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

地方分権化は就労支援政策においても進められているが、その理念と実践は労働法制・行政組織法と矛盾しており自治体と支援機関は構造的ジレンマを強いられている。しかし関係者はその相対的自立性によって、法やルールの柔軟な解釈や資源の転用戦略を駆使するとともに、社会本体の変革意識を有している。とはいえ労働市場に関しては、進んでいない。変革的ビジョンを解釈する文化的資源の不足が、政治的迷走を引き起こしている。