著者
元治 恵子 辻 竜平 太郎丸 博 三輪 哲 田辺 俊介 長松 奈美江 脇田 彩 斉藤 知洋
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、「職業に関する意識調査」を実施し、従来の職業威信スコアのバージョンアップを行うとともに、職業構造の変化に対応する、職種に加え、性別、雇用形態、企業規模などを反映した社会的地位尺度を作成した。職業威信スコアは、性、年代、学歴別では、グループ間に高い相関が見られ、時点間でも変化は見られず、スコアの頑健性と信頼性が改めて強調されることになった。しかし、性別、雇用形態、企業規模の情報が評定職業に付与されていた場合には、同じ職業であっても人々の評定に違いが見られた。多元的地位尺度を測定した職業以外に拡張し、さらに精緻化していくことが喫緊の課題である。
著者
長松 奈美江 阪口 祐介 太郎丸 博
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.77-93, 2009-05-25 (Released:2010-01-08)
参考文献数
23
被引用文献数
2

職業は、私たちの社会生活に大きな影響を及ぼす要因の一つである。これまで日本では、職業指標として職業威信スコアやSSM職業8分類が用いられてきた。しかし、職務内容を反映した職業指標はあまり利用されてこなかった。本稿では、仕事の複雑性に注目し、そのスコアを構成した。 Dictionary of Occupational Titles(DOT)第4版と、「情報化社会に関する全国調査(JIS調査)」のデータを用いて、合併コード、混合コード、DOTコードという三つの方法によりスコアを構成した。さらに、構成されたスコアを用いて、仕事の複雑性が、職業と関連が深い意識やライフチャンス変数に効果をもっているかを検討した。重回帰分析の結果、複雑性スコアは、個人収入や階層帰属意識、職業による不公平感に対して、職業威信スコアに還元できない効果をもっていることがわかった。この分析結果は、仕事の複雑性スコアの妥当性と有効性を示していると考えられる。
著者
長松 奈美江 神崎 淳子 櫻井 純理 阿部 真大 仲 修平 筒井 美紀 嶋内 健 貴戸 理恵
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、生活困窮者自立支援事業に照準を合わせ、本事業が、その創設に込められた理念である「貧困と社会的排除の問題解決」や「制度の狭間の解消」に資する生活・就労支援制度となるために必要な条件を探究する。大阪府内の各自治体や委託事業者という「サービス提供側」だけでなく、相談窓口への来談者という「サービス受給者」に焦点を当てた調査研究を行い、地域レベルでのアクティベーション・サービス配給体制の実態を自治体内のガバナンス構造に注目して分析し、生活困難層の支援ニーズに合致したより実効性のある支援制度について考察する。
著者
長松 奈美江
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.476-492, 2006-12-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
21
被引用文献数
1

近年, 雇用調整や労働強化などにみられるように, 被雇用者の管理のあり方が変化している.被雇用者がもつ仕事の自律性の「水準」と, 被雇用者間での仕事の自律性の「規定構造」の変化に注目することで, 近年の雇用関係の変化を検証した.被雇用者がもつ仕事の自律性の「水準」は, 業務遂行において, 被雇用者と雇用主のどちらの意思がより貫徹されやすいかを表す.仕事の自律性の「規定構造」は, どのような特性をもつ被雇用者が, 雇用主との関係においてより有利な立場にあるかを表す.1979年の「職業と人間」調査, 2001~02年の「情報化社会に関する全国調査」を用いて, 仕事の自律性の「水準」と「規定構造」が変化したのかどうかを, 仕事の自律性の多母集団同時解析による検証的因子分析と, パス解析によって確認した.その結果, 男性被雇用者の仕事の自律性の「水準」は低下し, 「規定構造」に関しては, 学歴の効果の低下, 職業威信と年齢の効果の増大がみいだされた.職業威信の仕事の自律性への効果は, 職業威信による技能 (仕事の非単調性) の違いと, 解雇されやすい立場を表すパート・アルバイト率の違いによって媒介されていた.被雇用者の管理のあり方が変化し, 被雇用者の仕事の自律性の水準が低下するなかで, より解雇されにくく, 専門性の高い仕事をする被雇用者が, 仕事の自律性を奪われない有利性をもつようになったといえる.
著者
長松 奈美江
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.73-89, 2008-06-30 (Released:2008-08-11)
参考文献数
31

所得格差を説明する理論の多くは、個人が仕事において発揮する技能が高い所得と結びつくことを指摘する。しかし、技能は直接測定することが困難であるため、技能と所得格差との関係を実証的に明らかにする試みは多くはない。本稿は、技能を、「仕事における裁量」と「仕事の複雑性」という二つの側面から測定し、所得格差をもたらす技能の役割を実証的に明らかにした。 2004年に全国の成人男女を対象に実施された社会調査データをもちいて所得決定構造の分析を行った結果、以下の三つの知見が得られた。第一に、高い所得に結びつく技能は、発言権や決定権をもったり、資料の分析や企画を行うといった組織における意思決定に関する技能や、機械装置の操作に関する技能であった。第二に、性別、学歴、雇用形態、企業規模、勤続年数の所得への効果の一部は、技能の所得への効果により媒介されていた。しかし第三に、技能をコントロールしても、性別、雇用形態、企業規模の所得への効果は大きく、同じ技能を発揮していても、女性ほど、パートほど、そして企業規模が小さいほど所得が低いことがわかった。