著者
伊藤 敬 仲居 裕 稲野 俊直 田口 智也 前田 昌調
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.417-423, 2006-09-05
被引用文献数
1

本研究は,微生物間の拮抗作用を利用してアユ冷水病原因菌であるFlavobacterium psychrophilumの増殖を抑制することを目的としている。この研究の一環として,アユ飼育槽内や天然河川から細菌を分離し,F. psychrophilumの増殖阻害活性を測定した。分離した97細菌株において,水槽壁および水中に浸漬したスライドガラス表面から得た菌が,高い割合で活性を示し,中でも7株は強い病原菌の増殖阻害作用を示した。そして,これら7株の簡易性状試験を行なった結果,3株はPseudomonas I/II, 2株はMoraxella属の種と考えられ,残りの2株は同定することができなかった。なお、この同定に関しては16SrRNAの解析について考察した。この7株の各々を配合飼料に20%(v/w)の割合で混合した後,体重あたり3%量の本飼料を稚アユに8日間毎日投与した結果,4株についてはアユの初期減耗がみられたが,飼育4日目以降では,死亡個体はなかった。一方,他の3株については,この初期減耗は見られなかった。