- 著者
-
仲野 純章
- 出版者
- 一般社団法人 日本理科教育学会
- 雑誌
- 理科教育学研究 (ISSN:13452614)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.1, pp.139-146, 2018
<p>本研究では, 高等学校における万有引力分野の指導の中で, 生徒が感じている当該分野に対する否定的な印象(ネガティブ感情)を収集・分析し, その結果を踏まえた授業を設計・実践して効果を調べた。授業実践前の意識調査では, 対象集団の約1/4が当該分野に興味を持てていない実態が明らかとなった。また, 当該分野への興味有無に関わらず, 「状態や運動をイメージしにくい」というネガティブ感情が多く持たれていることも分かった。更に, 当該分野に興味を持てていない集団内では, 「身近さを感じにくい」というネガティブ感情も目立った。そこで, 様々なネガティブ感情, 特に, 当該分野に興味を持てていない集団で目立つネガティブ感情を意識し, なおかつ生徒に大きな裁量を与える形で, 皆既月食をテーマとした授業を設計・実践した。授業では, 身近な道具を用いた簡単な実験で重力加速度を求めさせ, その値と皆既月食動画から得られる情報のみを頼りに理論計算を進め, 壮大なスケールの地球-月間の概算距離を導出するというグループワークを実施した。その結果, 深い学びに繋がる主体的・対話的なグループワークが展開され, 9割以上の生徒が今回のような活動があればネガティブ感情が改善されていくと感じると答えた。以上のように, ネガティブ感情が改善に向かう見通しが示され, 学習者の意識分析を反映した授業設計プロセスの有効性が示唆された。 </p>