著者
礒田 正美
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.37-40, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
6

乗数・被乗数の順序問題は,各国教育課程設計上の問題である.本稿の目的は,今日の学校数学が基盤とする西洋数学において,かけ算の式の見方,乗数・被乗数の順序にかかる変更,逆転が,歴史上,いかなる形で現れたのか,そのルーツを特定し,その設計に際しての論拠を示すことにある.そのために本稿では,筆算と文字式導入の歴史に注目し,その導入にかかる主要原典であるFibonacci (1202), Reisch (1504), Descartes (1637), Oughtred(1656, 1694)を参照し,そのルーツを特定した.原因は,筆算に対する文字式表現の導入後に筆算に式の演算記号が導入されたことであり,その際,九九の倍数詞読みを止め,式にあわせて筆算を書くように規約を変えたこと,算術としての筆算が,式を演算とみなし式の値を得る算法として筆算を用いる算術に変わったことに起因する.
著者
平田 昭雄 杉山 健太郎 高根沢 伸友
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 21 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.243-244, 1997 (Released:2018-05-16)
参考文献数
5

東京都内に存住の小学校第5学年児童に質問紙法による調査を実施し, 当該学年段階の児童においては, 1)教科書等に「昆虫」と明記されているもののみが「昆虫」で, それ以外は「(ただの)むし」という誤概念;2)「昆虫の条件」を完全に満たすもののみが「昆虫」で, 満たさない小動物は「むし」(「昆虫」ではない)という素朴概念;3)いわゆる害虫は「昆虫」ではなく「むし」であるという誤概念;4)昆虫の幼虫は「幼虫」であって「昆虫」でも「むし」でもないというオルタナティブな昆虫概念;等が形成されている可能性を明らかにした.
著者
平田 豊誠 片井 ふく実 小川 博士
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.461-462, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
7

河床堆積物の上流から下流にかけての細粒化の成因について,流水による砂礫の選択運搬作用が支配的要因だという説(選択運搬説)と流送砂礫の破砕・摩耗作用が支配的要因だという説(破砕・磨耗説)の2つの対立する要因があげられている.本研究では教員がそのどちらに依った認識を保持しているかの実態調査を行った.その結果,礫の粒径分布成因の認識は破砕・摩耗作用が優位を占め,要因として大きいと考えられている選択運搬作用があまり重要視されていないことが推察された.
著者
熊倉 啓之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.307-310, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
26

本研究は,海外における割合指導に関する先行研究を分析し,日本の割合指導との違いを明らかにして,今後の割合指導の改善への示唆を得ることを目的とする.まず,海外の割合指導に関する先行研究を,(1)パーセントの概念に関する研究,(2)パーセントの理解を支援する図等に関する研究,(3)パーセント問題の解決と指導に関する研究,の3点に焦点を当てて分析した.分析の結果,日本の割合指導との違いに基づく指導改善への示唆として,(1)パーセントを分数と関連付ける,(2)100マス図を活用する,(3)帰一法等による方法を扱う,の3つの示唆を得た.
著者
冨田 真永
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.231-234, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
1
被引用文献数
1

本稿の目的は,批判的思考に基づく仮説検定の考え方の指導のあり方を明らかにすることである.初めに,柗元(2018)の「統計的問題解決における批判的思考の働き」の表をもとに,不確実な事象の起こりやすさに着目して問題解決を行う際に働きうる批判的思考とPPDACサイクルとの関係を考察し,3つの活動を提案した.授業実践を通して検証した結果,仮説検定において重要な「確率事象と見なすこと」や「まれと判断する基準」に着目する上で批判的思考が有効に働き,仮説検定の考え方の理解を深める要因になることが明らかになった.
著者
山本 輝太郎 石川 幹人 菊池 聡
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 42 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.341-342, 2018 (Released:2019-06-14)
参考文献数
4

本研究では,疑似科学に関するオンライン上での議論を手がかりとして,それらの中で「誤った論法=誤謬」がどのように見られるかについて分析した。分析の結果,オンライン上のコメントでは 意味の曖昧さや多義性につけ込み,受け手(閲覧者)に対して先入観を与えるタイプの誤謬が 多く見られた。本報告では,分析結果とともに誤謬を見抜く取り組みの必要性について論じる。
著者
礒田 正美
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.27-30, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
1

授業研究の世界展開過程で、日本型の考えることの教育を実現する系統的な教科書が各国政府より求められるようになった。各国への教科書翻案では、目標・系統を説明するターミノロジーの国際共有化研究が求められる。本稿では、Isoda, M., Olfos,R. (to appear)を前提に、かけ算の指導内容を特定するターミノロジーとその国際的共有の必要を示す目的から、各国が乗数、被乗数の扱いに関わって直面する矛盾、その解消法、その教育対象化への国際的な営みを例示し、各国と協同展開する数学教育学術用語の国際的研究開発動向を示した。
著者
加納 寛子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 37 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.450-451, 2013-09-06 (Released:2018-05-16)

本研究は,世代及び性別の違いに着目し,インターネット上における誹謗中傷について分析した。その結果,人が不快に思うような情報は,インターネット上に流さないようにしているか否かについて,女性は20代30代40代と世代が上がるにつれ大変あてはまると回答している割合が高くなったが,男性は,世代による違いは見られなかった。特に,40代女性の割合が最も高く64%が大変あてはまると回答していたのに対し,男子大学生が最も低く42%に留まり,指導の必要性が示唆された。
著者
高橋 哲也 波佐間 仁美 小椋 郁夫 村田 公ー
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 42 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.305-306, 2018 (Released:2019-06-14)
参考文献数
5

本研究は「雲」の単元の導入で使用できるための、子どもに「雲」に興味や関心を持たせるための演示教材を製作するために行なった。そのため子どもに非常に人気が高い漫画 ONE PIECE に登場する天候棒(クリマタクト)の形状を模して、これにより「雲」と呼べるものを発生させることができる方法を検討した。粉砕したドライアイスと塊状のドライアイスとを約 60℃の湯と混合できるようにし、漫画 ONE PIECE のシーンを模して白煙を発生させるクリマタクト型の道具を作成することができた。
著者
渡会 陽平
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.21-24, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
11

本稿の目的は,小学校算数科において比例の式の乗法の意味づけを視野に入れた体系的な乗法の意味指導を行う必要性について言及することである.そのために,小学校第6学年の児童を対象として行った授業実践の結果をもとに,乗法の意味の拡張の指導を受けた子どもに生じうる比例の式の学習場面における問題点について考察をした.その結果,従来のように「対応」の関係の乗法を数値の関係として済ませてしまう指導では,乗法の意味にこだわりを持つ児童は納得することができないことと,児童が「対応」の関係の乗法を量を考慮して意味づけようとしても,その乗法の操作を適切に言葉で表現して意味づけることは困難であるし,場合によっては数学的に適切ではない意味づけをしてしまうことの2点を問題点として指摘し,それを解消するためには「対応」の関係の乗法に関わる要素を明らかにして,それらを体系的に配置して段階的に指導する必要があることを述べた.
著者
内田 隆 青木 孝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.483-486, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
6

本研究では,通電によるジュール熱でパンを作る電気パン実験の起源をあきらかにするため,電極式調理の歴史について文献調査と聞き取りを行った.その結果,電気パンの起源は陸軍の阿久津正蔵らが開発した炊事自動車で,電極式調理による製パンよりも前に炊飯が先に実用化されていたことがあきらかになった.終戦後にこの技術が活用されて家庭用電極式炊飯器である厚生式電気炊飯器やたからおはちが製造されたこと,さらに,現在はパン粉用パンの製造量の半分程度が電気パンと同じ電極式調理でつくられていることがわかった.
著者
森田 直之 簗瀬 立史 星 輝彦 林 克征 浅見 大治 川端 康正 中込 秀樹 早川 信一 金田 裕治
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 39 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.300-301, 2015 (Released:2018-08-03)
参考文献数
1

東京都立多摩科学技術高等学校(以下、本校)は、平成22 年に開校した東京都でも比較的新しい高校で、平成24 年に文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、3 年が経過した。この間、本校で課題となったのは倫理教育の在り方についてであった。本校では、SSH 指定科目である「科学技術と人間」という科目で「技術者倫理」という単元を用意し授業を展開してきたが、生徒へのメッセージ性は不十分というのが我々教員の印象であった。そこで、生徒たちに考えさせることを主軸においた教育活動の実践として、未来の科学技術を多く取り上げたウルトラセブンを題材に倫理教育を行なうプロジェクトチームを立ち上げた。本研究では、我々の教育実践と教育効果の考察について報告する。
著者
柚木 朋也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 36 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.361-362, 2012-08-27 (Released:2018-05-16)

この研究の目的は,身近な素材である凍結防止剤から再結晶により結晶を生成し,その結晶の利用について検討することである.凍結防止剤からは,容易に,安価に,美しい結晶を生成することができた.その結晶は,塩化カルシウム6水和物(CaCl_2・6H_2O)であり,自然に産するものは南極石と名付けられている.そして,それを利用した結晶生成実験では,結晶の成長の様子を容易に観察することができるなど,教材として効果的に活用できる可能性があることが明らかになった.
著者
清水 美憲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 33 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.75-76, 2009-08-25 (Released:2018-05-16)
参考文献数
8

シンガポールにおける数学カリキュラムの枠組みを概観し,我が国の教育課程と対比してその特徴を考察した。シンガポールの数学カリキュラムの枠組みは,数学的問題解決を中核として情意面まで含む広い立場から数学カリキュラムを把握する点に特色があり,我が国の教育課程編成における数学方法的の観点からみた学年・学校種間の接続のあり方を再考する必要性を示唆する。
著者
長島 康雄
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.281-284, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
4

新型コロナウイルスの感染拡大は,日本・世界に大きな影響を及ぼした.突然変異によって野生生物に由来するウイルスが今後も新たに出現することを前提にした理科教育を検討しなければならない.本稿では感染拡大の間接的な要因としてウイルスや免疫に対する科学的な知識の欠落の問題点を指摘する.そこで,ウイルスならびに免疫について義務教育段階で日本人全員が習得すべき内容としての位置づけた理科カリキュラムを検討した.過剰に恐れるのではなく,科学的な知見をふまえて正しく対処するための見識を持つための理科カリキュラムである.小学校理科カリキュラムとして「生物のスケール」という単元を導入し,最も微小な生物としてウイルスを扱うこと,中学校理科では「ヒトの体を守る仕組みとしての免疫」という単元,ならびに「生物に由来する災害としてEco-DRRの視点による災害対処」を導入することの有用性を指摘した.
著者
平等 正基 熊倉 啓之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.393-396, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
7

[要約]本研究は,小6の「比」の単元に焦点を当て,割合の理解を深めることをねらいとする教材を開発して授業実践を行い,そこでの児童の反応等から,体系的な割合指導における示唆を得ることを目的とする.まず,比の活用場面において百分率で割合が示された第3用法の問題を開発し,次に小6を対象に授業実践を行った.児童の反応として,数直線図以外の図表現を用いることや割合の第3用法の公式を活用できないこと,比による解決が有効だと感じた児童が多いこと,多様な解決方法を用いることが観察された.以上の結果を踏まえて,割合の理解を深めるための体系的な指導への示唆として,(a)数直線図以外の図も扱う,(b)第3用法の公式の指導に注力しない,(c) 割合を小6でも体系的に指導する,の3つを得た.
著者
菊池 康浩
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 39 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.91-92, 2015 (Released:2018-08-03)
参考文献数
4

本研究は,体験的に確率の意味を理解する数学的活動を充実させ,統計的確率と数学的確率の接続を円滑に進めようと試みたものである。一連の学習が終了した後の生徒のワークシートへの記述や調査問題による達成度から,体験的に確率の意味を理解する数学的活動を充実させれば,生徒は統計的確率と数学的確率の意味を理解するとともに,起こり得るどの場合も同様に確からしいときに数学的確率を求められると分かり,統計的確率と数学的確率の接続を図れることが明らかになった。
著者
岸本 忠之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.33-36, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
37

本稿の目的は,海外における乗法・除法を中心とした研究動向について,研究のレビュー,専門誌,書籍の観点から示すこととする.その結果,1980年~2000年では,数学的問題解決と認知心理学への着目によって,文章題解決が研究対象とされた.乗法・除法を対象とした研究レビューもなされた.国際会議が開催され,報告書も出された.2000年~2020年では,認知・理解,比較,教師教育など研究対象の事例として取り上げられるようになる.2010年までは認知・理解研究がみられるが,2010年以降は教師教育の研究が多くなる.書籍も,シリーズ中で事例として取り上げるようになる.
著者
久保田 善彦 舟生 日出男 鈴木 栄幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.449-452, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
8
被引用文献数
3

現代社会は,気候変動やパンデミック,原子力発電に関連する問題など,科学に関連する複雑な問題が多い.それらに対し市民が意思決定をするには,日常的に得られる科学的主張の信頼性について評価する「科学メディアリテラシー」が必要になる.科学者が科学的主張を生み出し,市民が認知するまでの過程を,生産・伝達・消費 (認知) に分け,信頼性を評価する観点から検討した.検討結果から,科学的主張の生産・伝達・消費を俯瞰し,その信頼性を評価するためのチェックリストを開発した.チェックリストは,生産4項目,伝達2項目,消費1項目で構成される.今後は,この案をベースに実践を行い,チェックリストの一般化を目指す.そのために,実践の方法やなじみのない用語を解説する教材の開発等を検討する必要がある.
著者
橋本 美彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.99-102, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
4

本研究は,理数教師の教科間連携の必要性を明らかにするために行った.理科「密度」の授業実践と意識調査の結果から,算数・数学科と理科の学習では単位の指導に違いがあることが明らかになった。例えば,算数科「単位量あたりの大きさ」の学習では,車の燃費を比較するとき,「1Lあたり○km走る」と解答し,「○km」が単位になる.しかし,理科「密度」の学習では,「1cm3当たり○g」を「○g/cm3」という単位で表す.小学校算数科の学習で,単位(燃費○km/L,人口密度人/km2,収穫高○t/haなど)や比較の指導を行った.この教科・教師間の連携により,子どもに両教科内容の関連意識やリンゴが水に浮く理由と密度との関係の理解が深まり,子どもの問題解決能力を高める効果があることが認められた.